空き家の固定資産税はなぜ高くなることがあるのか 住宅用地特例と空き家対策編

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親から実家を相続したものの、誰も住む予定がない。

建物はかなり古く、取り壊して更地にした方が売りやすそうだ。

ところが、

家を壊すと固定資産税が6倍になるから、そのままにしておいた方がいい

という話を聞いたことがある人もいるでしょう。

確かに、住宅が建っている土地には固定資産税の負担を大きく軽減する住宅用地特例があります。

建物を取り壊して住宅用地ではなくなると、この特例が適用されなくなることがあります。

しかし現在は、

古い空き家さえ残しておけば固定資産税を安くできる

という単純な仕組みではありません。

適切に管理されていない空き家については、管理不全空家や特定空家として市区町村から勧告を受けると、建物が残っていても住宅用地特例の対象から外れる可能性があります。

相続した実家を残すか解体するか考えるうえで、固定資産税の仕組みを理解しておくことが重要です。

固定資産税とは何か

固定資産税は、土地や家屋などの固定資産を所有している人に課税される地方税です。

原則として毎年1月1日時点の所有者に対して課税されます。

相続した実家について誰も住んでいなくても、土地や建物を所有している限り固定資産税は発生します。

市街化区域内など一定の地域では、固定資産税に加えて都市計画税が課税されることもあります。

空き家だから税金がかからないということではありません。

土地と建物にはそれぞれ固定資産税がかかる

実家を所有している場合、土地だけに固定資産税がかかるわけではありません。

土地には土地の固定資産税があり、建物には建物の固定資産税があります。

建物は築年数の経過などによって評価額が低下していくのが一般的ですが、土地については必ずしも同じように下がるとは限りません。

駅に近い土地や都市部の土地では、地価上昇によって評価額が上がることもあります。

したがって空き家の税負担を考えるときには、

建物の固定資産税

土地の固定資産税

を分けて考える必要があります。

住宅用地特例とは何か

住宅用地特例とは、住宅の敷地となっている土地について固定資産税などの負担を軽減する制度です。

住宅は国民生活の基盤となるため、住宅が建っている土地について税負担を軽くしています。

特に重要なのが小規模住宅用地です。

住宅1戸につき200平方メートル以下の部分については、固定資産税の課税標準が原則として価格の6分の1になります。

200平方メートルを超える一定の住宅用地については、一般住宅用地として課税標準が原則として価格の3分の1になります。

この特例によって、住宅が建っている土地の固定資産税負担は大きく軽減されています。

都市計画税にも住宅用地特例がある

住宅用地については、都市計画税にも特例があります。

小規模住宅用地については、都市計画税の課税標準が原則として価格の3分の1になります。

一定の一般住宅用地については、原則として3分の2です。

そのため、住宅を取り壊して住宅用地特例がなくなると、固定資産税だけでなく都市計画税にも影響する可能性があります。

空き家を解体するかどうかを考える場合には、両方を確認する必要があります。

なぜ家を壊すと固定資産税が高くなるのか

例えば、親から相続した古い実家を取り壊したとします。

建物がなくなり、その土地が住宅の敷地ではなくなれば、原則として住宅用地特例を受けられなくなります。

小規模住宅用地であれば、それまで固定資産税の課税標準が6分の1に軽減されていたものが、その軽減を受けられなくなる可能性があります。

これが、

家を壊すと固定資産税が高くなる

といわれる理由です。

そのため、誰も住んでいない古い家でも、税負担を抑えるために建物を残しておこうと考える所有者が出てきました。

固定資産税が必ず6倍になるわけではない

ここで注意したいのが、

家を壊すと固定資産税が6倍になる

という表現です。

小規模住宅用地について課税標準が6分の1になるため、このように説明されることがあります。

しかし、実際の税額が必ずちょうど6倍になるわけではありません。

土地の固定資産税には、評価額だけでなく負担調整措置なども関係します。

また、建物を解体すれば、それまで建物について課税されていた固定資産税はなくなります。

都市計画税の有無なども地域によって異なります。

したがって、

住宅用地特例がなくなること

納税額が必ず6倍になること

は同じではありません。

実際にどの程度増えるかは、個々の土地について確認する必要があります。

古い空き家を残す動機になっていた

住宅用地特例には住宅取得や居住を支援する意味があります。

一方で、空き家問題という観点から見ると別の側面もありました。

古い住宅を解体すると土地の税負担が増える可能性があるため、

使わない家でも壊さず残しておこう

という経済的な動機が生じていたのです。

その結果、誰も住んでいない老朽住宅が長期間放置される一因になっているとの指摘がありました。

そこで空き家対策の強化に合わせて、適切に管理されていない空き家については住宅用地特例を外す仕組みが整備されています。

特定空家への勧告で住宅用地特例から外れる

空家等対策特別措置法では、著しく危険な状態などにある空き家を特定空家等として、市区町村が所有者に改善を求めることができます。

まず助言や指導が行われ、それでも改善されない場合には勧告へ進むことがあります。

特定空家等について必要な措置をとるよう勧告を受けると、その敷地について固定資産税などの住宅用地特例の対象から外れることがあります。

つまり、

建物が物理的に残っている

というだけでは住宅用地特例を維持できない場合があるのです。

管理不全空家も対象になった

さらに重要なのが管理不全空家です。

2023年12月に施行された改正空家等対策特別措置法によって、特定空家になる一歩手前の段階から行政が対応できるようになりました。

適切な管理が行われておらず、このまま放置すれば特定空家になるおそれがある空き家が管理不全空家です。

管理不全空家についても、市区町村から必要な措置について勧告を受けると、その敷地が住宅用地特例の対象から外れる可能性があります。

特定空家になるほど状態が悪化していなくても、税制上の影響が生じる可能性があるわけです。

指導を受けただけで直ちに特例がなくなるわけではない

ここは区別しておく必要があります。

管理不全空家や特定空家に該当したというだけで、直ちに住宅用地特例がなくなるわけではありません。

また、市区町村から指導を受けた段階で自動的に特例が外れるというものでもありません。

重要なのは勧告です。

市区町村から法令に基づく勧告を受けると、住宅用地特例の適用除外につながります。

したがって行政から指導を受けた場合には、

まだ税金は変わらないから大丈夫

と放置するのではなく、勧告に進む前に必要な改善をすることが重要です。

税負担を抑えるには管理が必要になった

以前は、

建物を残す

ことが住宅用地特例を維持するための重要な条件でした。

現在は、それだけでは不十分です。

建物を残すのであれば、

屋根や外壁を適切に維持する

庭木や雑草を管理する

ごみを放置しない

周辺へ危険を及ぼさない

といった管理が求められます。

言い換えれば、住宅用地特例を受けながら空き家を保有し続けるためにも、一定の管理コストが必要になったということです。

固定資産税だけで解体を判断しない

相続した実家を解体するか迷ったとき、

固定資産税が高くなるから解体しない

と税金だけで判断するのは適切ではありません。

古い家を残せば、

屋根や外壁の修繕費

庭木の管理費

火災保険などの費用

遠方から管理する交通費

空き家管理サービスの費用

などが発生する可能性があります。

さらに建物が老朽化すれば、大規模修繕や緊急対応が必要になることもあります。

固定資産税が多少安くても、それ以上の維持費がかかれば、経済的には建物を残すメリットがなくなる可能性があります。

建物の固定資産税がなくなることも考える

解体によって土地の固定資産税が増える可能性ばかり注目されますが、建物を取り壊せば建物に対する固定資産税はなくなります。

例えば土地の固定資産税が増えても、

建物の固定資産税がなくなる

維持管理費がなくなる

修繕費が不要になる

火災などのリスクが小さくなる

といった効果があります。

したがって、解体するかどうかは土地の固定資産税だけではなく、空き家を保有する総コストで比較することが重要です。

売却予定があるなら税負担の増加期間も考える

例えば古い実家を解体し、更地としてすぐ売却する予定なら、住宅用地特例がなくなることによる固定資産税負担の増加期間は短くなる可能性があります。

一方、解体したものの買主が見つからず、更地を10年間保有することになれば税負担は積み上がります。

そのため、

解体してから売りに出すのか

古家付き土地として売却するのか

買主が決まってから解体するのか

という順番も重要です。

不動産会社などから売却可能性や査定額を確認したうえで判断する方が合理的です。

1月1日の状態も重要になる

固定資産税は原則として毎年1月1日時点の固定資産の状況などを基準に課税されます。

そのため、建物をいつ解体するかによって翌年度以降の課税関係に影響することがあります。

例えば年末までに住宅を取り壊して1月1日時点で住宅が存在しなければ、その年度の土地について住宅用地特例を受けられなくなる可能性があります。

解体時期と売却時期が大きく離れる場合には、固定資産税への影響も確認しておく必要があります。

相続空き家の3000万円特別控除との関係も考える

相続した実家を売却する場合には、固定資産税だけでなく相続空き家の3000万円特別控除も関係することがあります。

一定の要件を満たした相続空き家を売却した場合には、譲渡所得から最高3000万円を控除できる制度です。

建物を耐震改修して売却する方法だけでなく、一定の条件のもとで建物を取り壊して敷地を売却する方法もあります。

そのため、

固定資産税が上がるから解体しない

と判断した結果、売却の機会や譲渡所得の特例を利用できる期限を逃すことも考えられます。

空き家に関する税金は一つの制度だけを見て判断しないことが重要です。

空き家は年間総コストで考える

相続した実家を保有するか解体するかを判断するときには、年間の総コストを計算すると分かりやすくなります。

例えば、

土地の固定資産税

建物の固定資産税

都市計画税

火災保険

庭木や清掃の管理費

修繕費

交通費

空き家管理サービス費

などを合計します。

そのうえで、

建物を残した場合

解体した場合

すぐ売却した場合

数年間保有した場合

を比較します。

固定資産税だけを見ていると、全体としてどの方法が有利なのか判断を誤る可能性があります。

結論

空き家の固定資産税が高くなることがある最大の理由は、住宅用地特例が適用されなくなる場合があるためです。

住宅が建っている土地については、一定の小規模住宅用地なら固定資産税の課税標準が原則として価格の6分の1になります。

そのため住宅を解体して更地にすると、住宅用地特例がなくなり、土地の固定資産税負担が増える可能性があります。

しかし、

解体すると固定資産税が必ず6倍になる

という理解は正確ではありません。

実際の税額には負担調整措置などが関係し、建物を解体すれば建物自体の固定資産税もなくなります。

さらに現在は、古い空き家を残しておけば住宅用地特例を受け続けられるわけでもありません。

管理不全空家や特定空家について市区町村から勧告を受けると、建物が残っていても住宅用地特例から外れる可能性があります。

これからの空き家対策では、

建物があるかどうか

だけではなく、

適切に管理されているか

が重要になっています。

相続した実家については、固定資産税だけを理由に古い建物を残すのではなく、維持管理費、修繕費、解体費、売却可能性、3000万円特別控除なども含めて判断する必要があります。

空き家を残せば税金が安い。

更地にすれば税金が高い。

実際の判断は、それほど単純ではありません。

重要なのは、税金と維持管理費を合わせた総コストと、最終的にその実家をどうするのかという出口を一緒に考えることです。

参考

日本経済新聞 2026年8月 マネー相談 黄金堂パーラー 相続空き家 上 登記の手続き

総務省 固定資産税の住宅用地に対する課税標準の特例

国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法について

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