相続した実家を解体するべきか 更地にするメリットとデメリット編

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親から相続した実家が築40年、50年と古く、誰も住む予定がない。

こうした場合に悩むのが、建物を残したまま売るのか、それとも解体して更地にしてから売るのかという問題です。

古い建物を解体すれば土地がすっきりし、買主が新しい住宅を建てやすくなります。

一方、解体には数百万円規模の費用がかかる場合があり、建物を取り壊すことで土地の固定資産税負担が増える可能性もあります。

さらに、先に解体したからといって土地がすぐ売れるとは限りません。

相続した実家を解体するかどうかは、

古いから壊す

という単純な問題ではありません。

売却価格、解体費用、固定資産税、建物の状態、買主の需要などを総合的に考える必要があります。

実家を解体するとはどういうことか

実家を解体する場合、建物本体だけを取り壊せば終わりとは限りません。

住宅の解体では、

建物本体

基礎

物置

カーポート

庭木

残置物

などの撤去が必要になることがあります。

古い住宅では、建物内部に大量の家財が残されているケースもあります。

家具や家電、衣類、食器などを処分してからでなければ、本格的な解体工事に入れない場合もあります。

したがって実家じまいでは、建物の解体費だけでなく、家財整理や付帯設備の撤去費まで考えておく必要があります。

解体費用はいくらかかるのか

解体費用は、建物の構造や大きさ、立地条件などによって大きく異なります。

一般に木造住宅は鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べて解体しやすい傾向があります。

しかし、同じ木造住宅でも、

前面道路が狭い

重機が入れない

住宅が密集している

敷地に高低差がある

廃棄物が多い

といった条件があれば費用は高くなる可能性があります。

地方の実家だから必ず安く解体できるとも限りません。

古い住宅では追加費用にも注意する

築年数の古い住宅では、工事を始めてから追加費用が発生することがあります。

特に注意したいのがアスベストです。

建築時期や使用されている建材によっては、解体前の調査や適切な除去作業が必要になります。

また、

地中から古い基礎が出てきた

井戸が見つかった

浄化槽が残っていた

大量の残置物があった

といった事情によって費用が増えることもあります。

解体を検討するときには、単に坪単価だけで判断せず、追加費用の可能性まで確認することが重要です。

更地にする最大のメリットは売りやすさ

古い実家を解体する大きなメリットの一つが、土地として売却しやすくなる可能性があることです。

買主が新築住宅を建てたい場合、古い建物が残っていれば購入後に自分で解体しなければなりません。

買主からすると、

解体費はいくらかかるのか

アスベストはないか

地中に何か残っていないか

という不確定要素があります。

更地になっていれば、こうした不確定要素の一部がなくなります。

土地の広さや形状も確認しやすくなり、新築後のイメージを持ちやすくなることがあります。

買主の対象が広がる可能性がある

築年数の古い住宅をそのまま売る場合、買主は大きく二つに分かれます。

古家をリフォームして使いたい人と、購入後に解体して新築したい人です。

建物の状態が悪ければ、前者の需要は限られます。

さらに後者にとっても解体の手間が残ります。

売主側で更地にすれば、新築住宅を建てたい個人や不動産会社などが検討しやすくなる可能性があります。

特に建物としての価値がほとんど期待できない住宅では、更地売却が有力な選択肢になります。

建物を管理する負担がなくなる

空き家を解体すれば、建物そのものを管理する必要がなくなります。

雨漏り。

屋根材の飛散。

外壁の剥落。

窓ガラスの破損。

害虫や害獣。

建物の倒壊。

こうした建物特有のリスクを減らすことができます。

遠方にある実家の場合には、定期的に建物を確認する負担も大きいため、解体による管理負担の軽減は大きなメリットです。

管理不全空家や特定空家の問題も避けやすくなる

古い建物を放置すると、状態によっては管理不全空家や特定空家として行政から指導などを受ける可能性があります。

さらに勧告を受ければ、土地について固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなることがあります。

建物を解体すれば、少なくとも老朽建物そのものが倒壊したり外壁が落下したりするリスクはなくなります。

ただし、更地になれば今度は雑草や不法投棄など土地そのものの管理が必要です。

解体すれば管理が完全に不要になるわけではありません。

デメリットは解体費を先に負担すること

最大のデメリットは、売れるかどうか分からない段階で解体費を負担する可能性があることです。

例えば実家の解体に200万円かかったとします。

その後すぐに土地が売れれば、売却代金から解体費を回収できる可能性があります。

しかし、買主が何年も見つからなければ、

200万円を支払って建物を解体した

土地はまだ売れていない

固定資産税は毎年かかる

という状態になります。

解体すれば必ず高く、早く売れるとは限りません。

更地にすると固定資産税が上がる可能性がある

住宅が建っている土地には住宅用地特例があります。

一定の小規模住宅用地では、固定資産税の課税標準が原則として価格の6分の1になります。

実家を解体して住宅の敷地ではなくなれば、この特例が適用されなくなる可能性があります。

その結果、土地の固定資産税負担が増えることがあります。

ただし、

解体すると固定資産税が必ず6倍になる

という意味ではありません。

実際の税額には負担調整措置なども関係し、建物を解体すれば建物自体に対する固定資産税はなくなります。

解体前後の実際の税額を確認して判断する必要があります。

売却まで長引くほど固定資産税の影響が大きくなる

解体後すぐに土地を売却できれば、固定資産税負担の増加は限定的になる可能性があります。

問題は、売却に時間がかかる場合です。

更地にしたものの5年間買主が見つからなければ、その間の土地の税負担が続きます。

地方や人口減少地域では、

更地にすれば売れる

とは限りません。

建物の問題を取り除いても、そもそも土地に十分な需要がないケースがあります。

そのため解体前に、その地域でどの程度の売却需要があるのか確認することが重要です。

古家付き土地として売る方法もある

実家を解体せず、

古家付き土地

として売却する方法があります。

これは土地を中心に売却しながら、古い建物を現状のまま買主へ引き渡す方法です。

建物の価値をほとんど評価せず、土地価格を中心に売買価格を決めることもあります。

この方法であれば、売主は売却前に解体費を負担する必要がありません。

買主が購入後、自分の希望に応じて建物を利用するか解体するか決めることができます。

古家付き土地のメリット

売主にとって最大のメリットは、先に解体費を支払わなくて済むことです。

土地が売れるか分からない状態で数百万円を負担するリスクを避けられます。

また、買主の中には、

古い家をリノベーションして住みたい

という人もいるかもしれません。

売主が先に解体してしまえば、こうした需要はなくなります。

古民家や特徴のある住宅などでは、建物を残した方が価値を見いだす買主が現れる可能性もあります。

古家付き土地にもデメリットがある

一方、古家付き土地では買主が解体費用を負担することになります。

そのため買主から、

解体に200万円かかるので、その分価格を下げてほしい

と交渉される可能性があります。

売主が直接解体費を払わなくても、結果的に売却価格へ反映されることがあります。

また、古い建物の状態によっては契約不適合責任などを巡る問題を避けるため、売買契約の内容を慎重に検討する必要があります。

建物を現状のまま引き渡す条件について、買主と明確に合意しておくことが重要です。

解体費込みで売却価格を比較する

解体するか迷った場合には、二つの査定を不動産会社に依頼すると分かりやすくなります。

一つは古家付き土地として売却した場合の査定額です。

もう一つは更地にした場合の査定額です。

例えば、

古家付きなら1800万円

更地なら2100万円

という査定だったとします。

一見すると更地の方が300万円高く売れます。

しかし解体費が250万円かかり、さらに解体後の固定資産税や売却までの期間を考えれば、実質的な差は小さくなります。

反対に、解体費が150万円で更地にすると500万円高く売れるのであれば、解体する経済的なメリットが大きくなる可能性があります。

売却価格ではなく、手取り額で比較することが重要です。

買主が決まってから解体する方法もある

古家付きの状態で売却活動を始め、買主が決まってから売主が解体する方法もあります。

例えば売買契約で、

売主が建物を解体し、更地で引き渡す

という条件を定めます。

この方法であれば、買主が見つからない段階で解体費を先払いするリスクを抑えることができます。

一方、引き渡しまでに確実に解体を完了させる必要があるため、解体業者の手配や工期について余裕を持つ必要があります。

先に壊すか、そのまま売るかの二択ではありません。

再建築できる土地か確認する

解体前に必ず確認したいことの一つが、建物を取り壊した後に新しい建物を建てられる土地なのかという点です。

古い住宅の中には、現在の建築基準法上の接道要件などを満たさず、建物を解体すると原則として再建築できない土地があります。

いわゆる再建築不可物件です。

こうした土地で建物を安易に解体すると、

古い家として利用する可能性

まで失ってしまうことがあります。

再建築の可否は土地の価値を大きく左右するため、解体前に確認することが重要です。

相続空き家の3000万円特別控除も確認する

相続した実家の売却では、相続空き家の3000万円特別控除が利用できる場合があります。

一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3000万円を控除できます。

この特例では、一定の条件のもとで家屋を取り壊して敷地を売却する方法も対象になります。

また、制度改正によって、一定の場合には売却後に買主が期限までに家屋を取り壊す方法でも特例を利用できるようになっています。

そのため、

特例を使うために必ず売主が先に解体しなければならない

とは限りません。

税制上の要件を確認したうえで売却方法を決める必要があります。

補助金が利用できる場合もある

自治体によっては、老朽化した空き家の解体費用に対する補助制度を設けている場合があります。

危険な空き家の除却を促進する目的で、一定の条件を満たす解体工事について費用の一部を補助する仕組みです。

ただし、対象となる建物や所有者、工事内容、補助額などは自治体によって異なります。

また、

工事を始める前に申請すること

が条件になっている制度もあります。

先に解体してから補助金を申請しても対象にならない可能性があるため、工事契約前に確認することが重要です。

思い出の整理にも時間がかかる

実家の解体は、経済的な問題だけではありません。

親が長年暮らした家には、

写真

アルバム

手紙

家具

仏壇

貴重品

重要書類

などが残っていることがあります。

建物を解体してしまえば、後から取り戻すことはできません。

相続直後に急いで解体するのではなく、必要な家財や思い出の品を整理する期間を設けることも重要です。

ただし、整理が終わるまで何年も判断を先送りすることとは分けて考える必要があります。

解体するかどうかは出口から逆算する

相続した実家については、

古いから解体する

のではなく、

最終的にどうしたいのか

から逆算して考えることが重要です。

自分や家族が住むのであれば、解体せずリフォームする選択肢があります。

賃貸するのであれば、改修費と賃料収入を比較します。

売却するのであれば、古家付きと更地の査定を比較します。

土地としても需要が乏しいのであれば、解体費を負担して更地にすることが本当に合理的なのか慎重に考える必要があります。

解体は一度行えば元に戻せません。

だからこそ、出口を決めてから実行することが重要です。

結論

相続した実家を解体するべきかどうかについて、すべての空き家に共通する答えはありません。

更地にする最大のメリットは、老朽建物の管理負担や倒壊などのリスクを減らし、新築住宅を建てたい買主にとって土地を検討しやすくできることです。

一方、解体にはまとまった費用が必要です。

さらに住宅を取り壊すことで住宅用地特例が適用されなくなり、土地の固定資産税負担が増える可能性があります。

更地にしたからといって、必ず高く早く売れるわけでもありません。

そこで検討したいのが古家付き土地として売却する方法です。

売主が先に解体費を負担せず、買主に建物の利用や解体を判断してもらうことができます。

また、古家付きの状態で買主を探し、売買契約成立後に売主が解体して更地で引き渡す方法もあります。

重要なのは、

古家付きならいくらで売れるのか

更地ならいくらで売れるのか

解体費はいくらなのか

固定資産税はどう変わるのか

再建築できる土地なのか

3000万円特別控除を利用できるのか

を確認したうえで比較することです。

解体するかどうかは、建物だけを見て決める問題ではありません。

土地の価値と売却方法、税金、解体費まで含めた最終的な手取り額で判断する必要があります。

そして何より重要なのは、誰も使わない実家を何となく残し続けないことです。

残すのであれば管理する。

売るのであれば売却方法を比較する。

解体するのであれば、その後の土地の出口まで決める。

相続した実家の解体は、空き家を壊すための手続きではなく、実家を次の世代へ負担として残さないための出口戦略の一つと考えることが重要です。

参考

日本経済新聞 2026年8月 マネー相談 黄金堂パーラー 相続空き家 上 登記の手続き

国税庁 被相続人の居住用財産を売ったときの特例

国土交通省 空き家対策について

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