インデックス型投資信託への資金流入が続いています。
国内外の株式に投資する日本の投信では、インデックス型の純資産総額がアクティブ型を初めて上回りました。
低コストで幅広く分散投資できるインデックス型は、個人の長期的な資産形成に利用しやすい金融商品です。
しかし、インデックス投資がさらに拡大し、市場の大部分を占めるようになったら株式市場はどうなるのでしょうか。
そこで問題になるのが価格発見機能です。
インデックス投資が増えれば増えるほどアクティブ運用が不要になるようにも見えますが、実際には両者は互いに関係しています。
パッシブ運用とは何か
インデックス運用はパッシブ運用とも呼ばれます。
パッシブとは受動的という意味です。
ファンドマネジャーが独自に銘柄を選んで市場平均を上回ることを目指すのではなく、あらかじめ決められた指数への連動を目指します。
例えばS&P500に連動するインデックス投信なら、S&P500を構成する企業へ指数の仕組みに沿って投資します。
全世界株式型であれば、世界の株式市場を表す指数に沿って多数の企業を保有します。
どの会社の株価が割安なのかを1社ずつ判断して投資することが基本ではありません。
この単純な仕組みが低コスト運用を可能にしています。
インデックス型の比率はなぜ上昇しているのか
インデックス型が急速に拡大した最大の理由の一つがコストです。
今回の記事によると、集計対象となったインデックス型投信の実質信託報酬は平均0.3914パーセントでした。
アクティブ型は平均1.5299パーセントです。
インデックス型はおよそ4分の1です。
さらに、長期間にわたって市場平均を上回るアクティブ型を事前に見つけることは簡単ではありません。
低コストで市場平均程度の収益を目指すという考え方が広がるのは自然な流れともいえます。
日本では2024年に始まった新NISAも、この流れを後押ししました。
株価は誰が決めているのか
ここで考えたいのが、株価そのものはどのように決まるのかという問題です。
例えばある会社が新商品を発売し、将来の利益が大きく増えると予想されたとします。
企業を分析している投資家は、その情報をもとに株式を買います。
反対に業績悪化が予想されれば売る投資家が増えます。
こうした無数の売買によって株価が形成されます。
企業の利益、財務内容、成長性、金利、景気など様々な情報を株価へ反映させる働きが価格発見機能です。
市場では誰かが企業の価値を分析しているからこそ、株価が形成されているわけです。
インデックス投資は価格そのものを判断しない
インデックス型では基本的に個々の企業の株価が割高なのか割安なのかを判断して投資するわけではありません。
指数に採用されている企業を指数のルールに従って保有します。
例えば時価総額加重型の指数なら、時価総額の大きな企業ほど投資比率も高くなる傾向があります。
その企業の株価が割安だから多く買うわけではありません。
指数の構成比率が大きいから多く保有します。
この違いが重要です。
インデックス型が増えても市場価格を利用することはできますが、市場価格が適正かどうかを判断する投資家が相対的に少なくなる可能性があります。
全員がインデックス投資家になったらどうなるのか
極端な例を考えてみます。
市場参加者のほぼ全員がインデックス投資だけを行い、誰も企業分析をしなくなったとします。
ある企業の利益が急増しても、別の企業が大幅な赤字になっても、それを理由に積極的に売買する投資家がほとんどいなくなります。
そうなると企業価値の変化が株価へ反映されにくくなる可能性があります。
市場価格と企業価値の間にずれが生まれれば、それを利用しようとする投資家が現れます。
割安な企業を買い、割高な企業を売ることで利益を狙えるからです。
つまり、インデックス投資が増えすぎると、逆に企業分析を行うことの経済的価値が高まる可能性があります。
市場の効率性にはアクティブ投資家が関係している
インデックス投資の理論的な背景として効率的市場仮説があります。
市場に存在する情報が株価へ反映されているため、継続的に市場平均を上回ることは難しいという考え方です。
ここには興味深い関係があります。
市場が効率的なのは、多くの投資家が情報を集め、企業を分析し、利益を得ようとして売買している結果でもあります。
市場が効率的だから企業分析は必要ないと全員が考え、誰も分析しなくなれば、市場の効率性そのものが低下する可能性があります。
インデックス投資は効率的な市場を利用します。
一方、その効率的な市場を形成する役割の一部を担っているのがアクティブ投資家です。
機械的な資金流入が株価へ影響する可能性
インデックス型が巨大になると、投信への資金流入そのものが市場へ与える影響も大きくなります。
インデックス投信に新しい資金が入れば、運用会社は指数に沿って株式を保有します。
時価総額加重型では、指数内で大きな比率を占める大型企業への投資額も大きくなります。
株価が上昇して時価総額が大きくなれば、指数に占める割合も高くなることがあります。
その状態でインデックス投信への資金流入が続けば、大型株へさらに多くの資金が向かう可能性があります。
企業の業績だけでなく、指数を通じた資金の流れが株価形成に与える影響も無視できなくなります。
下落局面では逆方向の力も働く
資金流入だけを考えてはいけません。
投資家がインデックス投信を大量に解約すれば、運用側ではそれに対応するため株式を売却する必要が生じる場合があります。
その売却は、企業の業績が悪いから行われるとは限りません。
投資家が投信から資金を引き出した結果として行われる売却です。
そのため市場が大きく下落する局面では、企業価値から見て割安な銘柄まで売られる可能性があります。
今回の記事でも、インデックス運用の拡大が相場の流れを増幅する可能性が指摘されています。
ただし、実際の市場価格はインデックス投資だけで決まるものではありません。
様々な投資家の売買や市場環境が複雑に影響しています。
売られすぎればアクティブ運用の出番になる
インデックス型による機械的な売買で株価が企業価値から大きく離れれば、それはアクティブ投資家にとって投資機会になります。
例えば業績に大きな問題がない企業まで市場全体の下落に巻き込まれ、株価が大幅に下がったとします。
企業を個別に分析する投資家は、その株価が本来の価値より安いと判断すれば購入できます。
その買いが増えれば、企業価値と市場価格のずれは縮小していきます。
この働きも価格発見機能の一つです。
インデックス投資の拡大によって価格のゆがみが生じれば、そのゆがみ自体がアクティブ運用の収益機会になる可能性があります。
アクティブ運用がなくならない理由
インデックス型の資産規模が拡大すると、アクティブ型はいずれ必要なくなるようにも見えます。
しかし株式市場の仕組みを考えると、そう単純ではありません。
インデックス運用は市場で形成された価格を利用します。
アクティブ運用は、その価格が企業価値を正しく反映しているのかを分析します。
市場価格と企業価値に大きなずれがなければ、アクティブ運用で超過収益を得ることは難しくなります。
すると低コストのインデックス型が有利になりやすくなります。
反対にインデックス型が増え、企業分析を行う投資家が減って価格のゆがみが大きくなれば、アクティブ運用の収益機会が増える可能性があります。
両者にはこのような相互関係があります。
インデックスとアクティブは市場の中で共存する
インデックス投資とアクティブ投資は、どちらか一方が完全に勝ってもう一方が消えるという関係ではないと考えられます。
インデックス型は低コストで市場全体へ投資する仕組みを提供します。
アクティブ型は企業を分析し、株価と企業価値のずれを探します。
インデックス投資家にとっても、企業分析を行う市場参加者の存在は無関係ではありません。
多くの投資家が企業の情報を調べ、それを売買に反映することで市場価格が形成され、その価格を利用してインデックス運用が成り立っているからです。
インデックス型が巨大になった時代だからこそ、アクティブ運用が市場で果たしている役割も見えやすくなります。
結論
インデックス型投信は低コストと分散投資のしやすさによって急速に拡大し、日本でもアクティブ型の純資産総額を初めて上回りました。
今後さらにインデックス型の比率が高まれば、株式市場における存在感も大きくなります。
そのとき重要になるのが価格発見機能です。
インデックス運用は市場で形成された価格を利用しますが、その価格が適正かどうかを積極的に判断することを主な目的とはしていません。
企業を分析して株価の割高や割安を判断する役割は、アクティブ投資家などが担っています。
インデックス型が増えて価格のゆがみが大きくなれば、そのゆがみを利用するアクティブ運用の価値が高まる可能性があります。
インデックス投資が広がればアクティブ投資がなくなるという単純な話ではありません。
低コストで市場全体へ投資するインデックス運用と、企業価値を分析して価格を形成するアクティブ運用が共存することで、株式市場は成り立っています。
パッシブ運用の時代だからこそ、誰が株価を決めているのかという市場の基本的な仕組みを理解することが、これまで以上に重要になっています。
参考
日本経済新聞 2026年9月16日 朝刊 投信、指数連動型が過半に 低コストが投資家の支持集める
日本経済新聞 2026年9月16日 朝刊 分散投資の効果見込む