日本は世界でも例を見ない超高齢社会へと進んでいます。長寿は喜ばしいことですが、その一方で認知症や独居高齢者の増加という新たな課題にも直面しています。
これまで家族が担ってきた役割を家族だけで支えることが難しくなり、社会全体で高齢者を支える仕組みづくりが求められる時代になりました。
今回成立した成年後見制度の見直しと新たな福祉サービスは、その第一歩といえます。今回は、高齢者支援がどのように変わろうとしているのか、そして税理士を含む専門家が果たすべき役割について考えてみたいと思います。
成年後見制度は大きな転換点を迎えた
成年後見制度は、認知症などによって判断能力が低下した方の財産管理や契約を支援する制度として2000年に始まりました。
しかし、実際には利用しづらいという声も少なくありませんでした。
一度利用すると原則として亡くなるまで制度が続くことや、後見人に広範な権限が与えられることが理由でした。
今回の改正では、不動産売却や遺産分割など必要な場面だけ利用できる仕組みとなり、家庭裁判所の判断によって制度を終了することも可能になります。
必要なときだけ必要な支援を受けられる制度へと進化したことは、大きな前進といえるでしょう。
独居高齢者への支援は新たな時代へ
近年は認知症ではないものの、一人暮らしで頼れる家族がいない高齢者も急増しています。
病院への入退院手続きができない。
公共料金や施設利用料の支払いに困る。
亡くなった後の葬儀や家財整理を頼める人がいない。
こうした問題は今後さらに増えていくことが予想されています。
今回の法改正では、社会福祉協議会を中心に、こうした高齢者への生活支援サービスを提供できるようになります。
これまで制度の狭間に置かれていた人々への支援が大きく前進することになります。
家族だけに頼る時代は終わりつつある
日本では「家族が面倒を見る」という考え方が長く続いてきました。
しかし、
少子化
未婚率の上昇
子どもの遠方居住
共働き家庭の増加
などにより、家族だけで支えることは現実的ではなくなっています。
今後は
司法
福祉
医療
地域
民間事業者
NPO
行政
これらが連携して高齢者を支える地域包括型の仕組みが重要になります。
高齢化は個人の問題ではなく、社会全体の課題なのです。
終活は元気なうちから始める時代になる
制度が整備されても、自分自身の意思が示されていなければ希望どおりの支援は受けられません。
だからこそ重要になるのが終活です。
例えば、
財産管理を誰に任せるか
医療や介護をどう希望するか
延命治療を望むか
葬儀やお墓をどうするか
デジタル資産をどう整理するか
これらを元気なうちに整理しておけば、家族も支援者も安心して対応できます。
終活は「死の準備」ではなく、「安心して生きるための準備」といえるでしょう。
税理士にも求められる新しい役割
税理士は相続税申告だけを行う専門家ではありません。
長年にわたり顧問先の経営者や家族と信頼関係を築いているからこそ、高齢期の相談相手として期待される場面が増えています。
成年後見制度や家族信託、任意後見、公正証書遺言、相続対策などについて適切な専門家と連携しながら支援することも重要になります。
税理士が司法書士や行政書士、弁護士、社会福祉士などと連携することで、高齢者が安心して暮らせる環境づくりに大きく貢献できる時代になってきました。
結論
日本はこれから認知症や独居高齢者がさらに増加する時代を迎えます。その中で、一人ひとりが安心して暮らし続けられる社会を実現するためには、成年後見制度だけではなく、福祉、医療、地域、民間事業者、専門家が一体となった重層的な支援体制が欠かせません。
そして、高齢者自身も元気なうちから人生の終盤について考え、準備を進めることが重要になります。
人生100年時代に求められるのは、「困ってから支援を受ける社会」ではなく、「安心して歳を重ねられる社会」です。その実現に向けて、一人ひとりの備えと社会全体の支え合いがますます重要になっていくでしょう。
参考
日本経済新聞 朝刊 2026年6月29日
認知症や独居高齢者の支援を切れ目なく