米国株の主役交代が始まった 巨大テック7社を上回る「S&P493」の利益成長と投資戦略

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米国株式市場で、これまでの常識を変えるような動きが起きています。

人工知能(AI)関連の成長期待を背景に、米国株の上昇をけん引してきた巨大テクノロジー企業7社「マグニフィセント・セブン(マグ7)」に対し、それ以外の493社の利益成長率が上回る見通しとなりました。

2026年7〜9月期の増益率は、マグ7が前年同期比23%であるのに対し、残る493社は33%となる見込みです。

このまま確定すれば、約4年ぶりの逆転となります。

注目すべきなのは、巨大テック企業の成長が鈍化したことだけではありません。これまで株価上昇から取り残されてきた幅広い企業にも、利益成長と株価上昇の機会が広がり始めていることです。

米国株の主役交代は、S&P500に投資する個人投資家にとっても重要な意味を持ちます。

巨大テック7社が支配してきた米国株市場

近年の米国株式市場は、少数の巨大テック企業が株価指数全体を押し上げる構造となっていました。

マグニフィセント・セブンとは、アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、エヌビディア、メタ、テスラの7社を指します。

これらの企業は、クラウドサービス、半導体、電子商取引、デジタル広告、AIなどの成長分野で高い競争力を持っています。

特に生成AIの普及によって、半導体やデータセンターへの需要が拡大し、関連企業の株価は大幅に上昇しました。

一方、S&P500は時価総額加重型の株価指数です。

時価総額の大きい企業ほど指数への影響が大きくなるため、巨大テック企業の株価が上昇すると、その他の企業の株価が低迷していても指数全体は上昇します。

つまり、S&P500が上昇しているからといって、米国企業全体の株価が均等に上昇しているわけではありません。

この構造が、2026年秋に変化し始めています。

S&P493の増益率が4年ぶりに逆転

米調査会社ファクトセットによると、2026年7〜9月期の企業業績には大きな変化が表れています。

マグ7の増益率は前年同期比23%、残る493社は33%となる見通しです。

決算シーズンが始まる9月末時点では、マグ7が34%増益、493社が28%増益と予想されていました。

ところが、その後の決算発表や業績予想の修正によって、両者の関係が逆転しました。

マグ7の増益率は当初予想を11ポイント下回り、493社は5ポイント上回る計算です。

この逆転には2つの要因があります。

1つは、巨大テック企業の利益が市場予想を下回ったことです。

株式評価損や訴訟関連費用など、一時的な損失も影響しています。

もう1つは、493社の業績見通しが上方修正されたことです。

こちらの変化は、米国企業の利益成長が一部の巨大企業から幅広い業種へ広がり始めた可能性を示しています。

ただし、今回の数値は実績と予想を組み合わせたものであり、最終的な決算結果によって変わる可能性があります。

また、増益率は前年同期の利益水準にも左右されるため、単純に493社の収益力がマグ7を上回ったと判断することはできません。

株価指数に表れた主役交代

企業業績の変化は、株価にも表れています。

2026年11月3日時点で、通常のS&P500は9月末比1%下落しています。

一方、構成する500社を均等に組み入れる「均等加重型S&P500」は、同じ期間に6%上昇しました。

両者の騰落率には7ポイントもの差があります。

通常のS&P500では、時価総額の大きい企業の株価変動が指数全体を左右します。

これに対し、均等加重型では500社それぞれの構成比率を原則0.2%として計算します。

そのため、巨大テック株が下落しても、その他の企業が幅広く上昇すれば、均等加重型指数は上昇します。

10月の月間騰落率では、均等加重型が通常型を上回る幅が約17年半ぶりの大きさとなりました。

これは単なる一時的な値動きではなく、投資資金の流れが変わり始めている可能性を示しています。

AI投資への期待から収益性の検証へ

巨大テック株が売られている背景には、AI関連投資に対する市場の評価の変化があります。

これまでは、AI市場の将来性や成長規模が重視されてきました。

しかし、データセンターや半導体への投資額が膨らむにつれて、投資家は実際の収益性を厳しく確認するようになっています。

企業が巨額の設備投資を実施しても、それに見合う利益やキャッシュフローが生まれなければ、企業価値の上昇は持続しません。

例えば、AI関連設備に1兆円を投資した企業が、将来どれだけの追加利益を獲得できるのかという問題です。

市場の関心は、AI投資の規模から投資回収の確実性へ移りつつあります。

これはAIの成長そのものが終わったことを意味しません。

むしろ、期待先行で上昇してきた株価が、実際の利益成長に見合った水準へ調整される過程と考えることができます。

今後はAI関連企業の間でも、投資効率や収益力による評価の差が広がる可能性があります。

割安だった一般企業への資金移動

巨大テック以外の企業が買われ始めた背景には、株価の割安感もあります。

モルガン・スタンレーの分析によると、米国上場企業の時価総額上位3,000銘柄のうち、約6割が過去5カ月間に20%以上の株価下落を経験しています。

米国株市場全体が上昇しているように見えても、実際には多くの企業が厳しい株価調整を経験していたことになります。

その結果、企業業績に対して株価が相対的に低く評価されている銘柄も生まれています。

投資家が巨大テック株への集中を見直すなかで、こうした企業への資金移動が進んでいると考えられます。

ただし、株価が大幅に下落した企業が必ず割安とは限りません。

業績悪化や競争力低下によって株価が下落している場合もあるためです。

重要なのは、株価の下落率だけではなく、利益成長、財務健全性、将来の収益力を総合的に判断することです。

S&P500投資家が理解しておきたい集中リスク

今回の変化は、日本の個人投資家にも関係があります。

新NISAを通じてS&P500連動型の投資信託を保有している人は少なくありません。

S&P500は米国を代表する500社に分散投資する指数ですが、時価総額加重型であるため、投資金額が500社に均等に配分されるわけではありません。

巨大テック企業の時価総額が大きくなれば、それらの企業への投資比率も高くなります。

したがって、S&P500への投資には、米国企業全体への分散投資という側面と、巨大テック企業への集中投資という側面があります。

今回のように巨大テック株が下落する一方で、それ以外の企業が上昇する局面では、指数全体の上昇率が抑えられることがあります。

ただし、S&P500の構成比率は市場環境に応じて変化します。

巨大テック企業の比率が低下し、その他の企業の比率が高まれば、指数の集中度も徐々に変わっていきます。

長期投資家にとっては、短期的な主役交代だけを理由に投資方針を大きく変更する必要はありません。

均等加重型S&P500という選択肢

今回注目されている均等加重型S&P500は、通常のS&P500とは異なる特徴を持っています。

通常型は時価総額の大きい企業ほど組入比率が高くなりますが、均等加重型は各企業の比率を原則同じ水準に調整します。

そのため、巨大テック企業への集中を抑えられる一方、中小型寄りの企業や景気敏感業種の影響を相対的に受けやすくなります。

また、均等加重型では定期的な組入比率の調整が必要になるため、通常型と比較して売買コストなどが高くなる場合があります。

どちらが優れているかは、市場環境によって異なります。

巨大テック企業が市場をけん引する局面では通常型が有利になりやすく、幅広い企業に株価上昇が広がる局面では均等加重型が相対的に有利になる可能性があります。

ただし、直近の運用成績だけを見て投資対象を変更すると、次の相場変化に対応できない恐れがあります。

投資信託を選ぶ際には、長期的な運用方針、信託報酬、リスク許容度などを確認することが重要です。

米中間選挙後の株式市場への期待

2026年11月3日の米中間選挙も、米国株市場に影響を与える重要な材料です。

米国では過去の経験則として、中間選挙後に株価が上昇しやすいと指摘されることがあります。

選挙結果が明らかになることで、政治的な不透明感が一定程度後退するためです。

もっとも、過去の経験則が今回も当てはまるとは限りません。

今後の米国株市場は、選挙結果に加えて、金融政策、物価動向、企業業績、AI関連投資の収益性などによって左右されます。

特に重要なのは、企業利益の成長がどこまで広がるかという点です。

巨大テック企業だけでなく、金融、資本財、一般消費財、ヘルスケアなど幅広い業種で増益が続けば、株式市場全体の上昇を支える要因になります。

反対に、景気減速によって一般企業の利益成長が失速すれば、今回の主役交代が長続きしない可能性もあります。

長期投資で大切な分散と継続

今回のニュースから、個人投資家が学ぶべきことは、株価上昇の主役は固定されていないという事実です。

ある時期には巨大テック企業が市場をけん引し、別の時期には金融、製造業、生活関連企業などが相対的に高い成長を示すことがあります。

将来の主役を正確に予測することは容易ではありません。

だからこそ、長期投資では分散投資が重要になります。

S&P500だけでなく、全世界株式などへの投資も含めて、自分の資産配分を確認することには意味があります。

ただし、全世界株式にも米国の巨大テック企業が相応の割合で含まれるため、投資信託を複数保有するだけで十分に分散できるとは限りません。

また、老後資金や教育資金など、使う時期が決まっているお金については、株式だけに依存しない資産配分が必要です。

株式投資は長期的な資産形成に役立つ一方、短期間では大きく値下がりする可能性があります。

預貯金や個人向け国債なども組み合わせ、資金の使用時期に応じて安全性と収益性のバランスを考えることが大切です。

結論

米国株式市場では、巨大テック7社が圧倒的な成長力で市場をけん引してきた構造に変化の兆しが表れています。

2026年7〜9月期の増益率は、マグ7の23%に対し、その他493社が33%となる見通しです。

株価についても、均等加重型S&P500が通常型を大きく上回り、幅広い企業に資金が向かい始めています。

この変化は、巨大テック企業の成長が終わったことを意味するものではありません。

むしろ、米国経済全体に利益成長の裾野が広がる可能性を示しています。

一方で、AI関連投資の収益性や米国景気の先行きには不透明な部分も残っています。

個人投資家にとって重要なのは、短期的な株価変動に振り回されることではなく、保有する投資信託の特徴を理解し、長期的な資産形成を続けることです。

人生100年時代の資産運用では、目先の勝ち組企業を追いかけるよりも、幅広い企業の成長を取り込みながら、必要な資金を守る仕組みを整えることが重要です。

米国株の主役交代は、分散投資の意味を改めて考える機会になるといえます。

参考

日本経済新聞 2026年11月4日 朝刊

「S&P493」が巨大テック7社を逆転 増益率4年ぶり、株高の裾野広がる

※企業業績、株価指数の数値は記事掲載時点の情報に基づいています。将来の株価や運用成果を保証するものではありません。

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