ふるさと納税のクラウドファンディング型とは何か 返礼品なしでも寄付が集まる仕組み編

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ふるさと納税というと、肉や魚、米、果物などの返礼品を選んで寄付する仕組みというイメージが強くなっています。

しかし、本来は自分が応援したい自治体に寄付し、その地域の取り組みを支援する制度です。

この本来の寄付に近い仕組みとして注目されているのが、クラウドファンディング型のふるさと納税です。

自治体が具体的なプロジェクトを示し、その目的に共感した人から寄付を集めます。

広島県神石高原町では、こうしたクラウドファンディング型の寄付が全体の6割強を占め、2025年度の経費率を13.7%という低い水準に抑えました。

返礼品の魅力ではなく、寄付金の使い道そのものを理由に寄付してもらう仕組みが、経費率40%時代のふるさと納税を考える重要なヒントになっています。

クラウドファンディング型ふるさと納税とは何か

クラウドファンディング型ふるさと納税とは、自治体が寄付金の具体的な使い道を示し、そのプロジェクトを応援したい人からふるさと納税を通じて寄付を集める仕組みです。

一般的なクラウドファンディングと似ていますが、自治体への寄付として行われる点が特徴です。

たとえば、

動物を保護する

災害復旧を支援する

文化財を保存する

子育てを支援する

地域の医療を守る

といった具体的な目的を掲げます。

寄付者は返礼品だけを見るのではなく、自分のお金が何に使われるのかを確認して寄付先を選べます。

通常のふるさと納税とは何が違うのか

一般的なふるさと納税では、寄付者が返礼品を入口として寄付先を探すことが少なくありません。

肉が欲しい。

米が欲しい。

果物が欲しい。

旅行券を利用したい。

こうした条件で全国の自治体を比較します。

その場合、寄付先の自治体そのものより返礼品が寄付を決める大きな要素になります。

クラウドファンディング型では順番が変わります。

まず自治体や地域が解決したい課題があります。

そのためのプロジェクトを示します。

そして、その取り組みに共感した人から寄付を募ります。

商品を選んでから自治体を決めるのではなく、応援したい活動を選んで寄付するわけです。

寄付金の使い道を限定することに意味がある

通常のふるさと納税でも、教育、福祉、子育てなど大まかな使い道を選択できる自治体があります。

クラウドファンディング型では、さらに具体的なプロジェクトを示すことができます。

寄付者からすると、自分のお金がどこへ行くのかが分かりやすくなります。

自治体へ1万円を寄付するというだけでは、実際に何へ使われるのか実感しにくい場合があります。

一方、

この施設を修復するために使います

この動物保護活動に使います

この災害支援活動に使います

と示されれば、寄付による効果を想像しやすくなります。

税金に近い感覚ではなく、自分が選んだプロジェクトを直接応援している感覚を持ちやすくなるわけです。

神石高原町では6割強がクラウドファンディング型

広島県神石高原町は、クラウドファンディング型ふるさと納税を積極的に活用している自治体です。

2025年度には5億8000万円の寄付を集めました。

そのうち6割強が、使い道を限定したクラウドファンディング型の寄付でした。

町が掲げるプロジェクトには、犬の殺処分ゼロを目指す取り組みや、災害時に民間の医師やレスキュー隊員が現地で支援活動を行う取り組みなどがあります。

寄付金はプロジェクトの実施主体となる町内のNPO法人などに交付されます。

単に自治体の一般財源として使われるのではなく、寄付者が応援したい活動へ資金が流れる仕組みです。

なぜ返礼品なしでも寄付が集まるのか

ふるさと納税では、返礼品がなければ寄付者が集まらないようにも思えます。

しかし寄付には、商品を受け取ることとは別の動機があります。

社会課題を解決したい。

災害を受けた地域を助けたい。

動物を守りたい。

子どもを支援したい。

故郷や思い入れのある地域を応援したい。

こうした気持ちです。

寄付者がプロジェクトそのものに価値を感じれば、高価な返礼品を用意しなくても寄付してもらえる可能性があります。

神石高原町でも、返礼品は不要という寄付が多いとされています。

寄付の対価として物を受け取ることより、自分のお金が社会的な活動に使われることを重視する人がいるわけです。

返礼品が不要なら経費を大きく減らせる

クラウドファンディング型が自治体にとって重要なのは、経費を抑えやすいことです。

通常のふるさと納税では、寄付を集めるために返礼品を用意します。

返礼品調達費がかかります。

物品なら梱包費や送料も発生します。

返礼品の発注や配送を管理する事務費も必要になります。

一方、返礼品を希望しない寄付であれば、こうした費用の多くを削減できます。

1万円の寄付に対して3000円近い返礼品を提供し、さらに送料を支払う場合と比べれば、自治体や地域の活動に回せる金額は大きくなります。

神石高原町の経費率は13.7%

この違いは実際の経費率にも表れています。

2025年度のふるさと納税の経費率は全国平均で47.9%でした。

これに対して神石高原町は13.7%でした。

単純化して1万円の寄付で比較してみます。

経費率47.9%なら、経費は4790円で、残るのは5210円です。

経費率13.7%なら、経費は1370円で、残るのは8630円です。

差は3420円になります。

同じ1万円の寄付でも、経費構造によって地域やプロジェクトに回せる金額が大きく変わります。

クラウドファンディング型は寄付額だけではなく、寄付金をどれだけ有効に使えるかという面でも意味があります。

社会課題そのものが寄付を集める力になる

通常の返礼品競争では、自治体が全国の寄付者に選ばれるために魅力的な商品を用意する必要があります。

ブランド牛がある。

人気の果物がある。

有名な海産物がある。

こうした自治体は強いでしょう。

一方、地域によっては全国的に有名な特産品を持っていない場合もあります。

クラウドファンディング型では、必ずしも有名な特産品を持つ必要はありません。

地域が取り組んでいる課題や活動そのものを寄付の理由にできます。

社会的な意義のあるプロジェクトを作り、それを分かりやすく発信する能力が重要になります。

地域の課題が、寄付を集める力に変わる可能性があるわけです。

自治体とNPOの連携にもつながる

神石高原町では、寄付金を町内のNPO法人などへ交付する仕組みがあります。

自治体だけですべてのプロジェクトを実施する必要はありません。

地域で実際に活動しているNPOや団体と連携し、自治体がふるさと納税を通じて資金を集めることができます。

自治体は寄付制度を提供します。

NPOは専門的な活動を行います。

寄付者は支援したい活動を選びます。

この三者をつなぐ仕組みになります。

ふるさと納税を地域団体の資金調達手段として利用できる点もクラウドファンディング型の特徴です。

経費率40%規制との相性がよい

総務省はふるさと納税の経費率上限を段階的に引き下げ、2029年には40%とする方針です。

自治体が従来と同じように返礼品競争を続けながら、経費だけを削減するのには限界があります。

返礼品を削りすぎれば寄付が減る可能性があります。

送料にも限界があります。

仲介サイト手数料も完全になくすことは簡単ではありません。

そこで、そもそも高額な返礼品を必要としない寄付を増やすという考え方が重要になります。

返礼品不要のクラウドファンディング型寄付が増えれば、自治体全体の経費率を引き下げやすくなります。

寄付者への説明責任も重くなる

一方、クラウドファンディング型には自治体側の責任もあります。

返礼品を目的にした寄付であれば、寄付者は商品を受け取ることで一定の満足を得られます。

プロジェクトへの寄付では、自分のお金が本当に目的どおり使われたのかが重要になります。

いくら集まったのか。

何に使ったのか。

プロジェクトはどこまで進んだのか。

どのような成果があったのか。

自治体や実施団体には、こうした情報を継続的に寄付者へ伝えることが求められます。

寄付金の使い道を具体化するほど、その結果を説明する責任も大きくなるわけです。

返礼品競争から共感競争へ変わる可能性がある

クラウドファンディング型が広がれば、ふるさと納税の自治体間競争も変わる可能性があります。

これまでは、

どの自治体の肉がお得か

どの自治体の米が多いか

どの返礼品の還元率が高いか

という競争になりがちでした。

これからは、

どの地域の取り組みを応援したいか

どの社会課題を解決したいか

自分の寄付で何を実現したいか

という選択肢が増えていきます。

豪華な返礼品ではなく、地域が掲げる目的や物語そのものが競争力になります。

結論

ふるさと納税のクラウドファンディング型とは、自治体が具体的なプロジェクトや寄付金の使い道を示し、その目的に共感する人から寄付を集める仕組みです。

通常のふるさと納税が返礼品を入口に寄付先を選ぶことが多いのに対し、クラウドファンディング型では寄付金の使い道そのものが寄付の動機になります。

広島県神石高原町ではクラウドファンディング型の寄付が全体の6割強を占め、返礼品不要の寄付も多く、2025年度の経費率は13.7%に抑えられました。

返礼品調達費や送料を削減できれば、同じ寄付額でも地域やプロジェクトに回せる金額を増やせます。

2029年に経費率上限が40%へ引き下げられるなか、自治体には返礼品を安くするだけではなく、返礼品がなくても応援してもらえる地域づくりが求められます。

クラウドファンディング型ふるさと納税は、返礼品のお得さを競う制度から、地域の課題や活動への共感を集める制度へ転換する一つの可能性を示しています。

参考

日本経済新聞 2026年8月22日朝刊 ふるさと納税、経費を圧縮 40%以下は177自治体

日本経済新聞 2026年8月22日朝刊 ふるさと納税の経費圧縮 世田谷区、独自サイト開設

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