オルタナティブ投資のメリットとしてよく挙げられるのが、株式や債券などの伝統的資産との相関が低いことです。
異なる値動きをする資産を組み合わせれば、ポートフォリオ全体のリスクを抑える効果が期待できます。
ところが、オルタナ資産を見るときには注意しなければならないことがあります。
本当に値動きが違うのではなく、価格が頻繁につかないために「違って見える」場合があるからです。
これが、オルタナ投資を考えるうえで重要な「見かけ上の低相関」という問題です。
低相関とは何か
低相関とは、2つの資産があまり同じ値動きをしないことです。
例えば、株式が値下がりしているときに別の資産がほとんど値下がりしなければ、両者の相関は低くなります。
分散投資では、このような資産を組み合わせることに意味があります。
すべての資産が同時に値下がりする可能性を小さくできるからです。
そのため、株式や債券との相関が低いとされるオルタナ資産は、分散投資の対象として注目されています。
上場株式は毎日価格が動く
上場株式の大きな特徴は、証券取引所で日々売買されていることです。
企業業績や金利、景気、政治情勢などに新しい情報があれば、多くの場合、その情報が株価へ素早く反映されます。
例えば、株式市場に大きな悪材料が発生すれば、その日のうちに株価が10%下落することもあります。
市場で常に売買されているため、資産価値の変化が価格として表面に現れやすいのです。
つまり、上場株式ではリスクが数字として見えやすいと考えることができます。
オルタナ資産は毎日価格がつくとは限らない
一方、PEや非上場不動産などは事情が違います。
証券取引所で毎日売買されているわけではありません。
例えば、非上場企業の株式には、上場株式のように毎日の終値がありません。
不動産も同様です。
あるビルが昨日1億円で、今日は9,500万円になったという価格が毎日表示されるわけではありません。
一定の時期ごとに評価額を計算することになります。
そのため、経済環境が変化しても、評価額に反映されるまで時間がかかる場合があります。
株式が暴落しても価格が変わらないように見える
例えば、金融市場が混乱し、上場株式が1カ月で20%下落したとします。
株式は毎日取引されているため、下落がすぐ価格へ反映されます。
一方、ある非上場資産の評価額が3カ月ごとに見直されていたとします。
株式市場が急落しても、その資産の評価額はすぐには変更されないかもしれません。
数字だけを見ると、
株式は20%下落
オルタナ資産はほぼ変化なし
という状態になります。
これを見ると、オルタナ資産は株式市場の暴落の影響をほとんど受けていないように感じます。
しかし、本当に資産価値が変化していないとは限りません。
単に評価額へ反映されていない可能性があります。
値動きが小さいこととリスクが小さいことは違う
ここが非常に重要です。
価格が頻繁に変化しないからといって、その資産の経済的な価値が変化していないとは限りません。
例えば、保有する不動産の周辺で不動産価格が下落していたとしても、その物件が実際に売買されなければ市場価格は確認できません。
評価額が据え置かれていれば、帳簿上は価格が安定しているように見えます。
しかし、実際に売却しようとすると以前より低い価格でしか買い手が見つからない可能性があります。
価格の変動が見えないことと、リスクが存在しないことは別なのです。
相関も低く見えやすくなる
この問題は相関係数にも影響します。
株式の価格は毎日動いているのに、オルタナ資産の評価額がほとんど動かなければ、統計上は両者の値動きが異なっているように見えます。
その結果、相関係数が低く計算されることがあります。
しかし、オルタナ資産の価値が実際には株式市場や景気の影響を受けているのであれば、本当の経済的な相関は数字で示されるものより高い可能性があります。
記事でも、オルタナ資産は流動性が低く価格がつきにくいため、相関が実際以上に低く見積もられやすい点が指摘されています。
評価のタイムラグを考える
オルタナ資産を見るときには、価格そのものだけではなく「いつ評価された価格なのか」を考える必要があります。
例えば、株式市場が今月急落したとしても、オルタナ資産の評価額が前四半期の情報を基にしていれば、同じ時点の価格を比較していることにはなりません。
時間がたって評価額が見直されると、オルタナ資産も下落する可能性があります。
つまり、
株式が先に下落する
オルタナ資産は後から評価額が下がる
という時間差が生じる場合があります。
この時間差によって、両者の値動きが異なっているように見えることがあります。
安定した運用成績に見える場合もある
価格評価の問題は、相関だけではなく運用成績の見え方にも影響します。
毎日価格が動く上場株式では、大きな上昇や下落がそのまま数字に表れます。
一方、評価頻度の低い資産では、価格変動がなだらかに見える場合があります。
そのため、
「この商品は値動きが小さい」
「株式より安定している」
と感じることがあります。
しかし、それが本当に資産そのものの安定性によるものなのか、評価方法によって値動きが小さく見えているだけなのかを区別する必要があります。
分散効果は数字だけで判断しない
オルタナ投資を分散目的で利用する場合には、過去の相関係数だけを見るのでは不十分です。
その資産の収益が何によって決まるのかを見ることが重要です。
例えば、不動産であれば賃料、空室率、不動産価格、金利などがあります。
PEであれば、投資先企業の業績や企業価値、資金調達環境などが影響します。
これらが株式市場と共通する経済要因の影響を受けるのであれば、価格データ上の相関が低くても、実際には共通するリスクを抱えている可能性があります。
数字だけではなく、リスクの中身を見る必要があるのです。
結論
オルタナ資産は、株式や債券との相関が低い資産として分散投資に利用されることがあります。
しかし、その低相関がすべて本当の値動きの違いによるものとは限りません。
PEや非上場不動産などは毎日市場価格がつかないため、経済環境の変化が評価額へ反映されるまで時間がかかる場合があります。
その結果、値動きが実際より小さく見えたり、株式との相関が実態以上に低く見えたりする可能性があります。
価格が動いていないように見えることと、リスクがないことは同じではありません。
オルタナ投資の分散効果を判断するときには、過去の相関係数だけではなく、評価頻度や評価方法、そして資産価値を動かす経済的な要因まで確認することが重要です。
「値動きが違う」のか、それとも「値動きがまだ数字に表れていない」のか。
この違いを意識することが、オルタナ投資のリスクを正しく理解するための重要なポイントになります。
参考
日本経済新聞 2026年9月26日朝刊 何のためのオルタナ投資か