国民年金第3号被保険者とは何か 専業主婦やパートの年金制度編

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「配偶者の扶養に入っているので、国民年金保険料を自分では払っていない」

専業主婦やパートタイムで働く人の中には、このような人がいます。

その背景にあるのが、国民年金の第3号被保険者制度です。

第3号被保険者は、自分で国民年金保険料を直接納付していなくても、その期間が老齢基礎年金の計算上、保険料納付済期間として扱われます。

一方、パートタイム労働者への社会保険適用が広がれば、第3号被保険者から自分自身で厚生年金に加入する人も増えていきます。

年収の壁を理解するうえで、第3号被保険者制度は避けて通れない仕組みです。

国民年金には三つの被保険者区分がある

国民年金の加入者は、大きく第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者に分けられます。

第1号被保険者は、自営業者、フリーランス、学生などが代表的です。

原則として自分自身で国民年金保険料を納付します。

第2号被保険者は、厚生年金に加入している会社員などです。

厚生年金保険料を負担することで、国民年金の基礎年金部分にも加入している扱いになります。

そして第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている一定の配偶者です。

この三つの区分の違いを理解すると、パートと年金の関係が分かりやすくなります。

第3号被保険者とは何か

第3号被保険者になれるのは、厚生年金の被保険者に扶養されている一定の配偶者です。

原則として20歳以上60歳未満であることなど、一定の要件があります。

代表的なのが、会社員の配偶者として扶養の範囲内で生活している専業主婦やパートタイム労働者です。

もちろん制度上は性別によって決まるものではありません。

妻が会社員で夫が扶養されている場合には、夫が第3号被保険者になることもあります。

重要なのは「配偶者が厚生年金に加入していること」と「一定の扶養要件を満たしていること」です。

第3号被保険者は保険料を直接負担しない

第3号被保険者制度の最大の特徴は、自分自身で国民年金保険料を直接納付する必要がないことです。

それでも第3号被保険者だった期間は、老齢基礎年金を計算するときに保険料納付済期間として扱われます。

ここで誤解されやすいのが、

「配偶者が本人の分まで国民年金保険料を追加で払っている」

という理解です。

基本的にそのような仕組みではありません。

第3号被保険者本人から個別に国民年金保険料を徴収するのではなく、厚生年金制度全体で基礎年金の費用を支える仕組みになっています。

第1号被保険者との違い

第1号被保険者との違いを見ると、第3号制度の特徴がよく分かります。

自営業者やフリーランスなどの第1号被保険者は、原則として国民年金保険料を自分自身で納付します。

一方、第3号被保険者は自分で国民年金保険料を直接負担しません。

それでも一定の要件を満たせば、どちらも老齢基礎年金につながります。

この違いが、第3号被保険者制度について公平性の議論が生じる理由の一つにもなっています。

第2号被保険者との違い

会社員などの第2号被保険者は、給与などに応じて厚生年金保険料を負担します。

保険料は原則として会社と本人が折半します。

そして老後には、一定の要件を満たせば老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受け取ります。

一方、第3号被保険者の期間だけでは、自分自身の勤務による厚生年金の報酬比例部分は積み上がりません。

ここがパートタイム労働者にとって重要です。

扶養内にとどまれば本人の社会保険料負担を抑えられる一方、自分自身の厚生年金は積み上がりません。

勤務先の厚生年金に加入すれば現在の手取りは減る可能性がありますが、将来の老齢厚生年金が増えていきます。

130万円の壁との関係

第3号被保険者制度と深い関係にあるのが、いわゆる130万円の壁です。

一定の収入基準などを超えて社会保険上の扶養から外れれば、第3号被保険者ではいられなくなる場合があります。

その後どの制度に加入するかは働き方によって変わります。

勤務先の厚生年金の加入要件を満たしていれば、第2号被保険者になります。

勤務先の厚生年金に加入しない場合には、第1号被保険者として国民年金保険料を自分で負担するケースがあります。

つまり130万円の壁は、単に健康保険の問題だけではありません。

年金の被保険者区分が変わる可能性がある境界でもあります。

106万円の壁との違い

一方、これまで「106万円の壁」と呼ばれてきた基準は、一定の短時間労働者が勤務先の社会保険に加入するための要件に関係するものでした。

こちらでは、自分の勤務先で厚生年金に加入するかどうかが問題になります。

勤務先の社会保険への加入要件を満たせば、年収が130万円未満であっても第3号被保険者ではなくなり、自分自身が厚生年金に加入します。

このため、

106万円未満なら第3号

130万円未満なら第3号

と単純に年収だけで考えることはできません。

自分自身が勤務先の社会保険の加入対象になるかを先に確認する必要があります。

社会保険適用拡大で第3号から第2号へ

2026年10月には、短時間労働者に対する社会保険の月額賃金8万8000円以上という賃金要件が撤廃されます。

さらに企業規模要件も段階的に縮小され、2035年10月には撤廃される予定です。

これらの改革が進めば、これまで第3号被保険者として働いていたパートタイム労働者の中から、自分自身の勤務先で厚生年金に加入する人が増えていきます。

つまり、

配偶者に扶養される第3号被保険者

から、

自分自身で厚生年金に加入する第2号被保険者

への移行が進むことになります。

社会保険の適用拡大には、このような意味があります。

なぜ第3号制度が注目されるのか

第3号被保険者制度は、1985年の年金制度改正で創設され、1986年から始まりました。

当時は、夫が会社員として働き、妻が専業主婦という世帯も多く存在しました。

そうした社会構造を背景に、被用者の配偶者の年金権を確立することなどを目的として制度が整備されました。

しかし、その後は共働き世帯が増え、女性の就業も大きく拡大しました。

働き方が多様化するなかで、特定の働き方によって保険料負担に違いが生じることへの議論も続いています。

第3号制度は、年収の壁だけではなく、現在の社会や働き方に公的年金制度をどう合わせていくのかという問題でもあるのです。

扶養内に残るか厚生年金に入るか

パートタイムで働く人にとって、今後ますます重要になるのがこの選択です。

第3号被保険者の要件を満たして扶養内で働けば、本人が国民年金保険料を直接負担する必要はありません。

一方、自分自身で厚生年金に加入すれば、給与から厚生年金保険料などが差し引かれます。

しかし会社も保険料を負担し、将来の老齢厚生年金が積み上がります。

そのため、

保険料を払わなくて済むから第3号のほうが得

と一律に判断することはできません。

現在の手取り、働く時間、将来の年金、社会保障などを総合的に考える必要があります。

結論

国民年金の第3号被保険者とは、厚生年金に加入する人に扶養されている一定の配偶者を対象とする制度です。

本人が国民年金保険料を直接納めなくても、第3号被保険者だった期間は老齢基礎年金の計算上、保険料納付済期間として扱われます。

一方、社会保険の適用拡大が進むことで、これまで第3号被保険者だったパートタイム労働者が、自分自身の勤務先で厚生年金に加入するケースが増えていきます。

これは単なる保険料負担の拡大ではありません。

配偶者に扶養されて基礎年金を確保する働き方から、自分自身の勤務によって厚生年金を積み上げる働き方への変化でもあります。

106万円の賃金要件が撤廃され、週20時間という労働時間の重要性が高まるなか、第3号被保険者制度とパート労働の関係も大きな転換点を迎えています。

参考

日本経済新聞 2026年8月9日朝刊 Views 先読み「パートの社保適用、賃金要件撤廃 就労の壁、焦点は時間に」

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