80代の要介護率が10年で3ポイント低下 元気な高齢者が増える日本で人生100年時代の生き方が変わる

FP
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2026年10月21日

日本の高齢化が進むなか、明るい変化が起きています。

80代の高齢者で介護を必要とする人の割合が、この10年間で約3ポイント低下しました。

高齢者が増えれば、介護を必要とする人の割合も増えると思われがちですが、実際には同じ年齢で比較すると、以前より元気な高齢者が増えているのです。

背景には、高齢者の就労機会の拡大、地域社会への参加、介護予防活動の普及、医療技術の進歩などがあると考えられています。

この変化は、単なる介護問題にとどまりません。

年金制度、医療保険、介護保険、企業の雇用制度、さらには個人の老後資金計画にも大きな影響を与える可能性があります。

人生100年時代において重要なのは、何歳まで生きるかだけではなく、何歳まで自立した生活を続けられるかという視点です。

今回は、要介護認定率の低下から見えてくる日本の高齢社会の変化と、これからの人生設計について考えます。

80代の要介護認定率が大きく低下している

厚生労働省の介護保険事業状況報告と総務省の人口推計を基に、2014年と2024年の要介護認定率を比較すると、すべての高齢者層で低下傾向が確認されています。

特に注目されるのが80代です。

80歳から84歳の要介護認定率は、2014年の19.5%から2024年には16.6%へ低下しました。

85歳から89歳では36.3%から33.2%へ低下しています。

90歳以上でも61.9%から59.1%へ下がりました。

70代についても改善がみられます。

70歳から74歳では4.1%から3.8%、75歳から79歳では9.1%から7.4%となっています。

例えば、80歳から84歳の高齢者が1,000人いる場合、2014年の認定率では195人が要介護認定を受ける計算になります。

一方、2024年の認定率では166人です。

同じ人数で比較すると、認定を受ける人が29人少なくなったことになります。

もちろん、要介護認定率の低下だけで高齢者全体の健康状態が改善したと断定することはできません。

認定申請の状況や人口構成などの影響も考慮する必要があります。

それでも、幅広い年齢層で認定率が低下していることは、日本の高齢社会を考えるうえで重要な変化です。

高齢者の就労拡大が健康維持につながる可能性

要介護認定率の低下を考えるうえで、注目したいのが高齢者の就労です。

70歳から74歳の就業率は、2014年の24.0%から2024年には35.1%へ上昇しました。

10年間で11.1ポイントの増加です。

75歳以上でも8.1%から12.0%へ上昇しています。

高齢者が働き続けることには、収入を得る以外にも多くの意味があります。

仕事を通じて外出する機会が増え、人との交流が生まれ、日常生活に一定の緊張感と規則性が保たれます。

仕事上の判断やコミュニケーションは、認知機能を使う機会にもなります。

また、通勤や職場内での移動は、身体活動を維持するきっかけになります。

例えば、65歳で完全に仕事を辞める場合と、70歳まで無理のない範囲で働く場合では、日常生活の活動量や社会との接点が異なる可能性があります。

ただし、働けば必ず健康になるというわけではありません。

健康だから働き続けられるという逆方向の関係もあります。

過重労働や強いストレスは、かえって健康を損なう可能性があります。

重要なのは、年齢や体力に応じて働き方を調整し、社会とのつながりを維持することです。

地域社会への参加が介護予防の重要な役割を担う

高齢者の健康維持には、仕事以外の社会参加も重要です。

厚生労働省は、高齢者が地域で体操や食事、趣味などを楽しむ通いの場の普及を進めています。

2024年度には全国で16万2,946カ所が設けられ、高齢者の6.9%が参加しました。

通いの場には、運動機能の維持だけでなく、孤立を防ぐ役割も期待されています。

例えば、週に数回、地域の体操教室に参加する高齢者を考えてみます。

自宅から会場まで歩くことで身体活動が増えます。

参加者との会話によって社会的な刺激を受けます。

次回の活動を楽しみにすることで、生活に目的が生まれます。

こうした日常的な積み重ねが、心身の健康維持につながる可能性があります。

一方で、通いの場への参加率は6.9%にとどまっています。

参加者を増やす余地は大きいといえます。

今後は、地域の高齢者の生活環境や交通事情に応じて、参加しやすい仕組みを整えることが重要になります。

健康寿命を延ばすことが人生100年時代の中心課題になる

人生100年時代という言葉が広く使われるようになりました。

しかし、長生きすることと、健康で自立した生活を続けることは同じではありません。

健康寿命とは、一般に健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を意味します。

平均寿命と健康寿命の差が大きければ、それだけ日常生活に制限のある期間が長くなる可能性があります。

ただし、健康寿命と要介護認定を受けずに生活する期間は、定義が異なります。

要介護認定率が低下したからといって、そのまま健康寿命が同じ幅だけ延びたとはいえません。

それでも、高齢期の自立を維持する取り組みが重要であることに変わりはありません。

例えば、65歳から85歳までの20年間を考えてみます。

そのうち長い期間を自立して過ごせれば、旅行、趣味、仕事、家族との交流など、生活の選択肢が広がります。

反対に、介護が必要な期間が長くなれば、本人だけでなく家族の生活にも大きな影響が及びます。

これからの老後設計では、金融資産の形成と同時に、健康を維持するための生活習慣を重視する必要があります。

介護人材57万人不足という課題への影響

日本の介護業界では、人材不足が深刻な課題となっています。

厚生労働省の試算では、介護人材が2022年度から増えない場合、2040年度には約57万人が不足する可能性があります。

2040年は、団塊ジュニア世代が65歳以上になる時期です。

高齢者人口の増加に伴い、介護サービスへの需要が拡大すると予想されています。

しかし、同じ年齢層の要介護認定率が低下すれば、介護需要の増加を一定程度抑えられる可能性があります。

例えば、80代の高齢者人口が増加しても、要介護認定を受ける割合が下がれば、認定者数の増加ペースは緩やかになります。

介護人材の不足を解消するには、職員の処遇改善や介護ロボットの導入なども必要です。

それに加えて、介護を必要とする時期を遅らせることができれば、介護制度全体の持続可能性を高めることにつながります。

予防に対する投資は、将来の介護負担を軽減するための重要な政策といえるでしょう。

介護給付費は過去最大となり財政負担は拡大している

要介護認定率が低下する一方で、介護給付費は増加しています。

2024年度の介護給付費は、利用者の自己負担分を除いて11兆1,826億円となりました。

2014年度の8兆9,005億円と比較すると、約1.26倍です。

要介護認定率が低下しても、高齢者人口そのものが増えれば、介護サービスの利用者数が増加する可能性があります。

さらに、介護職員の賃金引上げやサービス提供に必要な費用の増加も、介護財政に影響します。

このため、要介護認定率の低下だけで介護保険財政の問題が解決するわけではありません。

重要なのは、介護予防の効果を高めながら、必要な人には十分な介護サービスを提供することです。

介護給付費の抑制だけを目的にサービスを制限すれば、高齢者の生活の質が低下するおそれがあります。

介護予防と介護サービスの充実を両立させる政策が求められます。

老後資金計画にも新しい考え方が必要になる

元気な高齢者が増えることは、個人の老後資金計画にも影響します。

従来の老後設計では、60歳または65歳で退職し、その後は年金と貯蓄を取り崩して生活することが一般的なモデルでした。

しかし、70歳を超えても働ける人が増えれば、老後の収入構造が変わります。

例えば、65歳から70歳まで年間200万円の就労収入を得る場合、5年間の収入総額は1,000万円になります。

税金や社会保険料を考慮する必要はありますが、貯蓄の取り崩しを抑える効果が期待できます。

また、年金の繰下げ受給を検討する選択肢も広がります。

公的年金は、原則として65歳から受給できますが、受給開始を遅らせることで年金額を増やすことができます。

ただし、繰下げ受給が有利になるかどうかは、健康状態、家族構成、税負担、社会保険料、加給年金の有無などによって異なります。

長く働ける時代だからこそ、画一的な老後設計ではなく、個人の事情に応じた資金計画が必要になります。

企業にも高齢者の能力を活用する発想が求められる

高齢者の健康状態が改善すれば、企業の人事制度にも変化が求められます。

これまで日本企業では、60歳定年や65歳までの継続雇用を中心に制度が設計されてきました。

しかし、70歳を超えても十分な能力を発揮できる人材が増えれば、年齢だけを基準に就労機会を制限することは合理的とはいえなくなります。

特に、専門知識や経験が重要な仕事では、高齢者の能力を活用できる余地があります。

経理、税務、法務、金融、経営相談などの分野では、長年の経験によって蓄積された判断力が価値を持ちます。

一方、体力的な負担が大きい仕事では、勤務時間の短縮や業務内容の見直しが必要です。

企業には、年齢ではなく職務遂行能力や健康状態に応じた柔軟な働き方を整えることが求められます。

高齢者の就労を単なる人手不足対策として捉えるのではなく、経験と知識を社会に還元する仕組みとして考えることが重要です。

人生100年時代には健康と仕事と資産の一体管理が重要になる

これからの高齢社会では、健康、仕事、資産を別々に考えるのではなく、一体的に管理する発想が必要になります。

健康を維持できれば、働く選択肢が広がります。

働くことで収入を得られれば、金融資産の取り崩しを抑えられます。

仕事や地域活動を通じて社会とのつながりを維持できれば、生活の充実にもつながります。

つまり、健康、仕事、資産、社会参加は相互に関係しています。

例えば、60代から70代にかけて、無理のない運動習慣を維持しながら専門性を生かした仕事を続けることができれば、経済面と生活面の両方で選択肢が広がります。

ただし、病気や障害などによって働けない人もいます。

すべての高齢者に就労を求める社会が望ましいわけではありません。

大切なのは、働きたい人が働けること、地域活動に参加したい人が参加できること、介護が必要になった人が安心して支援を受けられることです。

人生100年時代の豊かさは、長く働くことだけではなく、自分に合った生活を選択できることにあります。

結論

80代の要介護認定率が10年間で約3ポイント低下したことは、日本の高齢社会における重要な変化です。

高齢者人口の増加によって介護給付費は拡大していますが、同じ年齢で比較すると、介護を必要とする人の割合は低下しています。

その背景には、高齢者の就労拡大、地域社会への参加、介護予防活動、医療技術の進歩などがあると考えられています。

今後の日本では、高齢者を一律に支えられる側として捉えるのではなく、健康状態や能力に応じて社会で活躍できる存在として考えることが重要になります。

同時に、介護が必要になった場合には、十分な支援を受けられる制度を維持しなければなりません。

個人にとっても、老後資金をいくら準備するかという問題だけでなく、何歳まで健康で自立した生活を続けられるかが重要になります。

健康への投資、働き方の選択、年金の受給計画、金融資産の管理、社会とのつながりを総合的に考える必要があります。

人生100年時代の本当の課題は、単に寿命を延ばすことではありません。

健康で自立した生活をできるだけ長く続け、人生の最後まで自分らしい選択ができる社会を実現することです。

元気な高齢者が増えているという事実は、日本の超高齢社会に新しい可能性が生まれていることを示しています。

参考

日本経済新聞 2026年10月21日朝刊「増える元気な高齢者 80代の要介護率、10年で3ポイント低下」

厚生労働省「介護保険事業状況報告」

総務省統計局「人口推計」

総務省統計局「労働力調査」

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