人生100年時代という言葉が定着しつつあります。
かつては60歳で引退し、その後は余生を過ごすという人生設計が一般的でした。しかし今では60代はもちろん、70代でも元気に活動する人が増えています。
その中で多くの人が夢として挙げるのが海外旅行です。
若い頃に忙しくて行けなかった国を訪ねたい。夫婦で世界遺産を巡りたい。長期滞在で異文化を体験したい。
その一方で気になるのがお金の問題です。
円安や物価高の時代に、80歳まで海外旅行を楽しみ続けることは可能なのでしょうか。
人生100年時代の資金計画という視点から考えてみたいと思います。
旅行は老後の贅沢ではなく人生設計の一部
多くの人は旅行を余裕資金で楽しむものと考えています。
しかし人生100年時代では考え方を変える必要があります。
旅行は単なる娯楽ではありません。
新しい文化との出会い、人との交流、知的刺激、健康維持など、多くの価値をもたらします。
実際に旅行を続けている人ほど活動量が多く、社会との接点も維持しやすい傾向があります。
旅行は消費ではなく、人生を豊かにする投資として考えるべき時代になっているのです。
80歳まで旅行するなら20年計画で考える
例えば60歳から80歳まで毎年海外旅行をするとします。
20年間続く長期プロジェクトです。
仮に1回20万円の旅行であれば、年間20万円です。
20年間では400万円になります。
夫婦であれば800万円です。
さらに今後の円安やインフレを考慮すれば、実際にはさらに多くの資金が必要になる可能性があります。
重要なのは、旅行資金を老後資金とは別枠で考えることです。
老後生活費の残りで旅行するという発想では、いずれ旅行が削られることになります。
最初から旅行予算を人生設計に組み込むことが大切です。
旅行費用より重要な医療リスク
海外旅行で見落とされがちなのが医療費です。
航空券やホテル代は事前に分かります。
しかし病気やケガによる医療費は予測できません。
特に高齢になるほどリスクは高まります。
近年は円安や世界的な医療費高騰により、海外での医療費負担は以前より大きくなっています。
旅行予算を考える際には、
・旅行費用
・保険料
・緊急予備資金
の三つをセットで考える必要があります。
安心して旅行を続けるためには、リスク管理費用も予算の一部なのです。
資産を残すだけが正解ではない
人生100年時代では資産寿命も重要です。
しかし資産を残すことだけを目的にすると、人生を楽しむ機会を失う可能性があります。
80歳を過ぎてから、
「もっと旅行しておけばよかった」
と後悔する人は少なくありません。
一方で、
「旅行をしすぎて生活できなくなった」
という状況も避けなければなりません。
大切なのはバランスです。
使うお金と残すお金の両方を計画することが求められます。
健康資産が最大の旅行資産
実は旅行資金以上に重要なものがあります。
それは健康です。
どれだけお金があっても歩けなければ旅行は楽しめません。
長時間の移動に耐えられる体力、異文化を楽しむ好奇心、トラブルに対応できる気力が必要です。
人生100年時代の旅行計画は資金計画だけでは完成しません。
健康寿命を延ばす努力も同時に必要です。
旅行資金と健康資産は車の両輪なのです。
円安時代は旅行の質が重要になる
今後も円安や物価高が続く可能性があります。
その場合、回数を重視する旅行から価値を重視する旅行へ変わっていくでしょう。
高級ホテルに泊まることだけが旅行ではありません。
現地の文化を学ぶ。
歴史に触れる。
新しい人と出会う。
こうした体験こそが人生の財産になります。
旅行回数ではなく、旅行の質が重要になる時代です。
経験資産は人生を豊かにする
旅行で得られるものは思い出だけではありません。
知識、経験、人との出会い、価値観の変化など、多くの無形資産が残ります。
金融資産は使えば減ります。
しかし経験資産は人生の最後まで残ります。
人生100年時代では金融資産だけでなく、経験資産を積み上げることも大切です。
旅行はその代表的な方法の一つと言えるでしょう。
結論
80歳まで海外旅行を楽しむためには、旅行を老後の余暇ではなく人生計画の一部として考える必要があります。
旅行費用だけでなく、保険や医療リスクへの備えも含めた長期的な資金計画が求められます。
そして何より重要なのは健康です。
お金だけでは旅は続きません。
健康と好奇心があって初めて旅行は人生を豊かにします。
人生100年時代において、海外旅行は贅沢品ではありません。
経験資産を積み上げるための長期投資なのではないでしょうか。
参考
日本経済新聞 2026年6月14日朝刊
「東京海上、海外旅行保険2割上げ 円安・医療費高騰で」