ゴルフ会員権の価格上昇が続いています。
関東の主要150コースの平均会員権価格は305万円台となり、2019年末と比較して約8割上昇しました。
今回の価格上昇は、バブル期のような投機的な需要だけではなく、実際にゴルフを楽しみたいという愛好家の需要に支えられているとされています。
特に注目したいのが、60代や70代のゴルフ愛好家です。
定年退職後は、仕事に費やしていた時間を趣味や健康づくりに活用できるようになります。
一方、職場を離れることで、人間関係が縮小したり、外出する機会が減少したりする人もいます。
こうした中、ゴルフは運動、社会的交流、生活習慣の維持を同時に実現できる趣味として注目されています。
ただし、ゴルフをすれば必ず健康寿命が延びるというわけではありません。
年齢や体力、持病の有無に応じて、安全に楽しむことが重要です。
今回は、60代70代からのゴルフが健康寿命や人間関係に与える効果について、運動習慣、認知機能、社会参加、老後の資産活用という観点から考えてみます。
平均寿命と健康寿命の違いを理解する
人生100年時代を考えるうえで重要なのが、平均寿命と健康寿命の違いです。
平均寿命は、ある年に生まれた人が平均して何年間生きるかを示す指標です。
一方、健康寿命は、健康上の問題によって日常生活が制限されることなく生活できる期間を示します。
長生きすることは重要ですが、日常生活を自立して送れる期間を延ばすことも大切です。
健康寿命を延ばすためには、運動、食事、睡眠、社会参加など、複数の生活習慣が関係します。
特に高齢期には、筋力や身体機能の低下を防ぐことが重要になります。
また、外出機会が減少すると、身体活動量が低下するだけでなく、人との交流も少なくなる可能性があります。
ゴルフは、こうした課題に対応する選択肢の一つです。
コースを歩き、体を動かし、仲間と会話するという複数の活動が組み合わされているためです。
ただし、ゴルフだけですべての健康課題を解決できるわけではありません。
日常的な運動や適切な食生活などと組み合わせることが重要です。
ゴルフは長時間の身体活動につながる
ゴルフの特徴は、比較的長い時間にわたって身体を動かすことです。
一般的な18ホールのラウンドでは、移動方法やコースの地形などによって異なりますが、数時間にわたって歩行やスイングを繰り返します。
カートを利用する場合でも、ボールの位置まで歩いたり、クラブを選んだりするなど、一定の身体活動が伴います。
歩行を中心とする運動は、心肺機能や筋力の維持に役立つ可能性があります。
特に、普段は座って過ごす時間が長い人にとって、ゴルフ場での活動は運動量を増やす機会になります。
例えば、1回のラウンドで8,000歩歩いたと仮定します。
月4回ラウンドすれば、ゴルフによる歩数は月3万2,000歩です。
年間48回なら、38万4,000歩になります。
もちろん、実際の歩数はコースの長さやカートの利用状況によって異なります。
また、歩数が多ければ多いほど健康に良いという単純な関係ではありません。
それでも、定期的に外出して体を動かす習慣をつくるという点で、ゴルフには一定の意義があります。
60代からの筋力維持に役立つ可能性
年齢を重ねると、筋肉量や筋力が低下しやすくなります。
こうした変化は、歩行能力や日常生活の動作に影響する場合があります。
ゴルフでは、歩行に加え、スイングの際に体幹や下半身などを使います。
また、傾斜のある場所を歩くことや、姿勢を保ちながら動作することもあります。
そのため、ゴルフを継続することは、身体活動量の確保や運動機能の維持に役立つ可能性があります。
ただし、ゴルフだけで十分な筋力トレーニングができるとは限りません。
特に高齢期には、下半身の筋力維持やバランス能力の向上を目的とした運動も重要です。
例えば、ゴルフを週1回楽しみながら、普段はウォーキングや軽い筋力トレーニングを行う方法が考えられます。
ゴルフを特別な運動日として位置付けるだけでなく、日常的な運動習慣の一部として活用することが望ましいでしょう。
ゴルフと認知機能の関係
ゴルフは、単に体を動かすだけのスポーツではありません。
コースの状況を確認し、距離を判断し、クラブを選択するなど、さまざまな判断が必要になります。
また、風向きや地形、ボールの位置などを考慮しながらプレーします。
こうした活動では、注意力、判断力、記憶などの認知機能が使われます。
さらに、スコアを記録したり、プレーの順番を考えたりすることもあります。
このように、ゴルフには身体活動と認知的な活動が組み合わされているという特徴があります。
ただし、ゴルフを継続することによって認知症を予防できると断定することはできません。
認知機能への影響は、年齢、健康状態、運動習慣、社会参加など、さまざまな要因によって異なります。
重要なのは、楽しみながら身体と頭を使う活動を継続することです。
ゴルフは、そのための選択肢の一つになると考えられます。
退職後の人間関係を維持する効果
定年退職後の生活では、人間関係の変化が大きな課題になる場合があります。
現役時代には、職場で多くの人と接する機会があります。
しかし、退職すると、仕事を通じた交流が減少することがあります。
特に、職場以外の人間関係が少ない場合には、社会的なつながりを維持することが難しくなる可能性があります。
ゴルフには、こうした状況を補う役割が期待できます。
ゴルフ場では、年齢や職業が異なる人と交流する機会があります。
会員同士の競技会や交流イベントなどを通じて、新しい人間関係が生まれる場合もあります。
また、定期的に顔を合わせることで、長期的な友人関係につながる可能性があります。
退職後の人間関係は、必ずしも多ければ良いというものではありません。
大切なのは、無理なく交流できる相手や、共通の趣味を楽しめる仲間がいることです。
ゴルフは、こうした関係を築くきっかけになり得ます。
社会的孤立を防ぐための趣味としての価値
高齢期には、社会的孤立が健康や生活の質に影響することがあります。
家族構成の変化や退職、友人との別れなどによって、人との接点が減少する場合があるためです。
社会参加を継続することは、生活に刺激を与え、日常生活の充実につながる可能性があります。
ゴルフでは、プレーの予定を立て、仲間と連絡を取り、ゴルフ場へ出かけるという一連の活動が生まれます。
このような予定があること自体が、生活のリズムを整えるきっかけになる場合があります。
また、同じ趣味を持つ仲間との会話は、気分転換にもつながります。
ただし、ゴルフ場の会員になれば自動的に人間関係が広がるわけではありません。
競技会や交流イベントへの参加、既存会員とのコミュニケーションなど、本人の関わり方も重要です。
また、人付き合いが負担になる場合には、無理に交流を増やす必要はありません。
自分に合った距離感で楽しめることが、長く続けるための条件になります。
週1回のゴルフが生活習慣を変える
退職後の生活では、毎日の時間の使い方が大きく変わります。
仕事がなくなることで自由時間が増える一方、生活にメリハリがなくなる人もいます。
そこで、週1回のゴルフを生活の予定に組み込む方法が考えられます。
例えば、毎週水曜日をゴルフの日と決めるとします。
月4回、年間48回程度のラウンドを想定した場合、定期的な外出機会が生まれます。
また、ゴルフを楽しむために、普段から体力づくりを意識するようになるかもしれません。
例えば、毎朝15分のウォーキングやストレッチを行うなどです。
ゴルフそのものの運動量に加え、ゴルフを続けるための準備が日常的な健康習慣につながる可能性があります。
さらに、仲間と予定を調整することによって、生活に一定のリズムが生まれます。
このように、ゴルフは単なる娯楽ではなく、退職後の生活習慣を整えるきっかけになることがあります。
ゴルフを続けるためには安全管理が欠かせない
高齢期にゴルフを楽しむ場合には、安全管理が重要です。
特に注意したいのが、夏場の熱中症です。
ゴルフ場では長時間屋外で活動するため、気温や湿度が高い日は体への負担が大きくなります。
また、脱水や疲労によって、体調を崩す可能性もあります。
そのため、暑さが厳しい日にはプレーを控えることも重要です。
プレーする場合には、水分補給や休憩、日差しを避ける工夫などが必要になります。
さらに、心臓や血管の病気、関節の痛みなどがある場合には、運動の強度や時間について医療専門職に相談することが望ましいでしょう。
ゴルフでは、スイングによって腰や肩、肘などに負担がかかることもあります。
準備運動を行い、無理のないフォームでプレーすることが大切です。
健康のために始めたゴルフが、けがや体調悪化につながっては本末転倒です。
年齢や体力に応じて、無理なく継続できる方法を選ぶ必要があります。
会員権を購入する必要があるのか
ゴルフを健康づくりや交流のために楽しむ場合、会員権を購入するかどうかも検討課題になります。
会員権には、予約の取りやすさや会員料金でのプレー、会員同士の交流などのメリットがあります。
一方、購入費用や名義書換料、年会費などが必要になります。
例えば、会員権の取得に500万円を支払い、年会費が10万円だったとします。
10年間保有した場合、取得費用と年会費の合計は600万円です。
これにプレー料金や交通費などが加わります。
一方、ビジターとして年間30回プレーし、1回の料金が1万5,000円だった場合、年間プレー料金は45万円です。
10年間では450万円になります。
ただし、この比較では会員料金でのプレー費用や交通費、会員権の売却価値などを考慮していません。
実際の経済的な有利不利は、利用回数や会員権価格、売却可能性などによって異なります。
重要なのは、健康や交流を目的とする場合、必ずしも高額な会員権が必要とは限らないという点です。
無理のない費用で長く続けられる方法を選ぶことが望ましいでしょう。
ゴルフに使うお金を健康投資として考える
老後の資産活用では、金融資産を増やすことだけでなく、生活の質を高めることも重要です。
例えば、退職後に年間50万円をゴルフに使うとします。
10年間では500万円、20年間では1,000万円です。
決して小さな金額ではありません。
しかし、その支出によって定期的な運動習慣が生まれ、仲間との交流が続き、生活に楽しみが増えるのであれば、一定の価値があると考えられます。
もちろん、ゴルフに使った金額が、そのまま医療費の削減につながるとは限りません。
健康への効果を金銭的に正確に評価することも難しいでしょう。
それでも、老後の支出をすべて節約の対象として考えるのではなく、生活の充実につながる支出を適切に確保するという視点は重要です。
ただし、老後の生活費や医療費、介護費用などに必要な資金を圧迫しないことが前提になります。
趣味への支出は、生活の安全性を確保したうえで計画する必要があります。
70代以降も楽しめるゴルフの形を考える
60代では18ホールのラウンドを無理なく楽しめても、70代や80代になると体力が変化する場合があります。
そのため、年齢を重ねても続けられるゴルフの形を考えることが重要です。
例えば、18ホールではなく9ホールのプレーを選ぶ方法があります。
また、カートを積極的に利用することで、歩行による負担を軽減できます。
さらに、気温が高い時間帯を避けたり、プレー回数を調整したりすることも考えられます。
ゴルフを続ける目的が健康維持や交流であれば、必ずしもスコアの向上を追求する必要はありません。
仲間と会話を楽しみながら、自分の体力に合ったペースでプレーすることも十分に価値があります。
また、ゴルフ場へ行くことが難しくなった場合には、練習場や室内施設などを利用する方法もあります。
大切なのは、年齢に応じて楽しみ方を変えながら、無理なく継続することです。
結論
60代70代からのゴルフには、運動習慣の維持、社会的交流、生活リズムの形成など、さまざまな価値が期待できます。
ゴルフは、歩行やスイングによって身体を動かすだけでなく、コースの状況を判断するなど、認知的な活動も伴います。
さらに、仲間との交流を通じて、退職後の人間関係を維持するきっかけにもなります。
ただし、ゴルフをすれば必ず健康寿命が延びるというわけではありません。
健康への影響は、年齢、体力、持病、運動習慣などによって異なります。
また、熱中症やけがを防ぐためには、安全管理が欠かせません。
ゴルフ会員権の購入についても、資産価値の上昇だけで判断するのではなく、実際の利用頻度や生活費とのバランスを考える必要があります。
人生100年時代において、老後の資産は単に保有するだけでなく、健康や人間関係、生きがいのために活用することも重要です。
ゴルフは、そのための選択肢の一つになり得ます。
大切なのは、高額な会員権を所有することではありません。
自分の健康状態や経済状況に合った方法で、長く楽しみ続けることです。
ゴルフの本当の価値は、会員権の市場価格ではなく、健康で充実した時間をどれだけ積み重ねられるかという点にあるのではないでしょうか。
参考
日本経済新聞 2026年10月18日 ゴルフ会員権8割高、愛好家が猛アプローチ バブル期とは異なる熱狂
厚生労働省 健康寿命の令和4年値について 2024年12月
厚生労働省 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 2024年1月
スポーツ庁 スポーツの実施状況等に関する世論調査