ゴルフ場の閉鎖と会員権の資産価値消失リスク

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ゴルフ会員権の価格上昇が注目される一方で、ゴルフ場の閉鎖という深刻な問題が広がっています。

関東の主要150コースの平均会員権価格は305万円台となり、2019年末と比較して約8割上昇しました。

しかし、全国のゴルフ場が同じように好調なわけではありません。

日本ゴルフ場経営者協会によると、2026年7月時点の国内ゴルフ場数は2,153施設となり、2002年度のピークから1割以上減少しています。

さらに、ゴルフ場の約4分の1が赤字とされています。

栃木県の矢板カントリークラブでは、2027年末での閉鎖が会員に通知されました。

ゴルフ場が閉鎖されると、会員はプレーする場所を失うだけでなく、会員権の資産価値や預託金の返還についても問題に直面します。

今回は、ゴルフ場の閉鎖と経営破綻が会員権に与える影響を整理し、民事再生と破産の違い、預託金の回収可能性、購入前に確認したいリスクについて解説します。

ゴルフ場の閉鎖が増える背景

ゴルフ場の閉鎖には、さまざまな要因があります。

代表的なのが、利用者数の減少と運営コストの上昇です。

ゴルフ場は、広大な土地を維持管理する必要があります。

芝生の整備、樹木の管理、散水設備の維持、クラブハウスの修繕など、多額の費用が継続的に発生します。

さらに、人件費や光熱費、設備更新費用なども上昇しています。

一方、地方では人口減少や高齢化によって、ゴルフ人口の確保が難しくなっています。

利用者数が減少しても、コースの維持管理費を同じ割合で削減することはできません。

そのため、売上高が減少すると、利益が急速に悪化する可能性があります。

特に、近隣のゴルフ場との競争が激しい地域では、プレー料金の引上げも容易ではありません。

こうした状況が長期間続くと、設備投資や修繕に必要な資金を確保できなくなり、最終的に閉鎖を選択する場合があります。

矢板カントリークラブの閉鎖が示す問題

栃木県矢板市の矢板カントリークラブは、2027年末での閉鎖を会員に通知しました。

報道によると、地方のゴルフ場では競争が激しく、プレー料金を高く設定することが難しい状況にあります。

また、閉鎖後の用地は太陽光発電事業者への譲渡が予定されているとされています。

この事例は、ゴルフ場の土地利用そのものが変化していることを示しています。

ゴルフ場は広大な敷地を必要としますが、その土地が必ずしもゴルフ場として利用され続けるとは限りません。

経営者にとっては、ゴルフ場として営業を続けるよりも、土地を売却した方が経済的に合理的になる場合があります。

特に、将来の利用者数の減少が予想される地域では、土地の別用途への転換が選択肢になります。

ただし、ゴルフ場跡地を太陽光発電施設などへ転用する場合には、土地利用規制や環境面の条件などを確認する必要があります。

ゴルフ場の閉鎖は、単なるスポーツ施設の減少ではありません。

地域経済、雇用、土地利用、会員の財産権など、さまざまな問題につながります。

ゴルフ会員権には複数の権利が含まれる

ゴルフ場の閉鎖による影響を理解するためには、会員権の仕組みを確認する必要があります。

ゴルフ会員権には、主に預託金制、株主会員制、プレー権を中心とするものなどがあります。

預託金制の会員権では、一般的にゴルフ場を優先的に利用する権利と、一定の条件のもとで預託金の返還を請求する権利が組み合わされています。

ただし、預託金の返還時期や条件は契約によって異なります。

株主会員制では、ゴルフ場の運営会社などの株式を保有することによって、会員資格を得る仕組みがあります。

この場合、会員権の価値には株式としての財産的価値が関係します。

また、預託金返還請求権を伴わないプレー権型の会員権もあります。

重要なのは、ゴルフ会員権という名称が同じでも、法的な権利内容は必ずしも同じではないという点です。

ゴルフ場が閉鎖された場合に、どのような請求ができるかは、会員権の種類や契約内容によって異なります。

ゴルフ場が閉鎖されると会員権はどうなるのか

ゴルフ場が閉鎖された場合、まず問題になるのがプレー権です。

ゴルフ場が営業を終了すれば、原則としてその施設でプレーすることはできなくなります。

会員としての利用価値は大きく低下します。

ただし、ゴルフ場の閉鎖によって、すべての権利が自動的に消滅するとは限りません。

例えば、預託金返還請求権がある場合には、契約内容に応じて返還請求が問題になります。

また、ゴルフ場の閉鎖が契約上の債務不履行に該当するかどうかによって、別の請求が検討される場合もあります。

一方、株主会員制では、保有する株式の価値や会社の清算手続きが問題になることがあります。

このように、ゴルフ場の閉鎖と会員権の財産的価値の消滅は、必ずしも同じ意味ではありません。

ただし、実際に資金を回収できるかどうかは、運営会社の財務状況や契約条件に大きく左右されます。

会員権の購入前には、ゴルフ場が閉鎖された場合の取扱いについても確認しておくことが望ましいでしょう。

預託金は必ず返還されるわけではない

預託金制のゴルフ会員権では、預託金の返還可能性が重要です。

例えば、入会時に500万円の預託金を支払ったとします。

契約上、一定期間が経過した後に返還請求できる仕組みであっても、ゴルフ場の運営会社に十分な資金がなければ、返還が滞る可能性があります。

預託金は、銀行預金のように預金保険制度によって保護されるものではありません。

運営会社に対する返還請求権としての性質を持つため、運営会社の信用力が重要になります。

例えば、運営会社が経営破綻した場合には、預託金返還請求権が破産債権や再生債権として扱われることがあります。

その場合、預託金の全額が返還されるとは限りません。

返還額は、運営会社の財産状況や法的整理の内容などによって異なります。

したがって、預託金の額面が500万円であることと、500万円を確実に回収できることは別問題です。

ゴルフ会員権を資産として評価する際には、この違いを理解しておく必要があります。

民事再生と破産では会員の立場が異なる

ゴルフ場の運営会社が経営破綻した場合、民事再生手続きや破産手続きなどが問題になることがあります。

民事再生は、原則として事業の再建を目指す法的手続きです。

ゴルフ場の営業を継続しながら、債務の整理を進める場合があります。

この場合、会員資格を一定の条件で維持する一方、預託金返還請求権の一部が減額されることも考えられます。

例えば、預託金500万円について、再生計画に基づいて10%相当額が弁済されると仮定します。

この場合、弁済額は50万円です。

残りの450万円については、再生計画の内容に従って権利が変更されることになります。

ただし、これは制度を説明するための仮定であり、実際の弁済率が10%になるという意味ではありません。

一方、破産は、原則として債務者の財産を換価し、法律上の優先順位に従って債権者へ配当する手続きです。

ゴルフ場の営業が終了する場合もあります。

預託金返還請求権を持つ会員は、原則として一般の破産債権者として扱われることが考えられます。

その場合、十分な財産がなければ配当を受けられない可能性もあります。

民事再生と破産では、事業継続の可能性や会員の権利の取扱いが異なるため、手続きの内容を正確に確認する必要があります。

会員権500万円が無価値になった場合

具体的な損失額を考えてみましょう。

500万円でゴルフ会員権を購入した人がいるとします。

購入時に名義書換料100万円、仲介手数料10万円を支払った場合、初期費用は610万円です。

その後、10年間にわたって年会費10万円を支払ったと仮定します。

年会費の合計は100万円です。

初期費用と年会費の合計は710万円になります。

ここでゴルフ場が閉鎖され、会員権の売却価値がなくなり、預託金などの回収もできなかった場合を考えます。

この場合、取得時に支払った610万円を回収できないことになります。

さらに、10年間に支払った年会費100万円も戻りません。

ただし、年会費は10年間の会員サービスに対する支出であり、会員権の資産価値の損失と同じ性質ではありません。

また、その間にゴルフを楽しんだ利用価値も存在します。

したがって、710万円のすべてを資産価値の損失と考えることは適切ではありません。

それでも、会員権の取得時に多額の資金を支出した場合、閉鎖による経済的影響が大きいことは明らかです。

会員権の損失は給与所得と損益通算できない

ゴルフ会員権の価値が失われた場合、税務上の取扱いにも注意が必要です。

個人が保有する一般的なゴルフ会員権については、2014年度税制改正によって、売却損失の取扱いが変更されました。

2014年4月1日以後の譲渡については、ゴルフ会員権などの生活に通常必要でない資産の譲渡損失は、原則として給与所得や事業所得などと損益通算できません。

例えば、500万円で購入した会員権を100万円で売却し、400万円の損失が発生したとします。

この400万円を給与所得から差し引いて所得税を軽減することは、原則としてできません。

また、ゴルフ場の閉鎖や運営会社の破産によって会員権の価値が失われた場合には、単純な売却損失とは異なる問題が生じます。

預託金返還請求権の貸倒れや権利の消滅などについては、会員権の種類や法的整理の内容に応じた検討が必要です。

会員権が無価値になったからといって、その損失を自動的に所得税の計算上控除できるわけではありません。

この点は、ゴルフ会員権を金融資産として考える際に、特に注意したい事項です。

ゴルフ場の経営悪化を見極めるポイント

ゴルフ会員権を購入する前には、ゴルフ場の経営状況を確認することが重要です。

まず、利用者数の推移です。

利用者数が継続的に減少している場合には、売上高の減少につながる可能性があります。

次に、会員数の動向です。

新規入会者が少なく、退会者が増えている場合には、会員基盤が弱くなっている可能性があります。

さらに、年会費やプレー料金の改定状況も確認したいところです。

料金の引上げ自体が経営悪化を意味するわけではありませんが、急激な値上げが続いている場合には、その背景を確認する必要があります。

設備の維持管理状況も重要です。

クラブハウスやコースの修繕が長期間行われていない場合には、設備投資資金が不足している可能性があります。

また、預託金返還請求への対応状況も判断材料になります。

返還請求に対する支払いが長期間滞っている場合には、資金繰りに問題がある可能性があります。

ただし、これらの情報だけで経営破綻の可能性を断定することはできません。

可能であれば、運営会社の財務情報や事業計画なども確認することが望ましいでしょう。

閉鎖リスクを抑えるための購入判断

ゴルフ会員権の閉鎖リスクを完全になくすことはできません。

しかし、購入前の確認によって、リスクをある程度抑えることは可能です。

まず、会員権の価格だけでなく、ゴルフ場の利用者数や経営状況を確認することです。

次に、会員権の契約内容を理解する必要があります。

預託金返還請求権の有無、返還条件、名義書換制限、退会時の取扱いなどを確認します。

さらに、将来の売却可能性も重要です。

市場で活発に取引されている会員権であれば、売却しやすい可能性があります。

一方、取引件数が少ない会員権では、希望する時期に売却できない場合があります。

また、購入資金には余裕資金を充てることが基本です。

老後の生活費や医療費、介護費用などに必要な資金を会員権の購入に使うことは慎重に考える必要があります。

ゴルフ会員権は、預貯金のように元本が保証される資産ではありません。

購入時には、最悪の場合に取得資金の大部分を回収できなくなる可能性も想定しておくことが重要です。

会員権を持たずにゴルフを楽しむ選択肢

ゴルフを楽しむために、必ずしも会員権を購入する必要はありません。

ビジターとして利用できるゴルフ場も多くあります。

例えば、年間20回ゴルフを楽しむ場合を考えます。

1回のプレー料金を1万5,000円とすると、年間プレー料金は30万円です。

10年間では300万円になります。

一方、会員権を購入する場合には、取得費用に加え、年会費や会員料金によるプレー費用などが発生します。

年間利用回数が少ない場合には、会員権を購入しない方が経済的に合理的なこともあります。

また、複数のゴルフ場を利用できるというメリットもあります。

特定のゴルフ場が閉鎖された場合でも、別のゴルフ場を利用することができます。

もちろん、会員権には予約の取りやすさや会員同士の交流などの魅力があります。

そのため、購入するかどうかは、利用頻度や生活スタイル、資産状況などを踏まえて判断する必要があります。

結論

ゴルフ会員権の価格上昇が続く一方で、ゴルフ場の閉鎖や経営破綻というリスクは無視できません。

国内のゴルフ場数は2002年度のピークから1割以上減少し、約4分の1が赤字とされています。

特に地方では、人口減少や会員の高齢化、運営コストの上昇などによって、経営環境が厳しくなっています。

ゴルフ場が閉鎖された場合、会員としてプレーする権利が失われる可能性があります。

また、預託金返還請求権があっても、運営会社の財務状況によっては全額を回収できないことがあります。

民事再生や破産などの法的整理が行われた場合には、会員権の権利内容や再生計画、破産手続きの内容によって取扱いが異なります。

さらに、個人が保有するゴルフ会員権の売却損失は、原則として給与所得などとの損益通算ができません。

このため、会員権の購入では、価格上昇への期待だけでなく、資産価値が大きく低下する可能性も考慮する必要があります。

人生100年時代において、ゴルフは健康維持や交流、生きがいを得るための有力な選択肢です。

しかし、その価値を長く享受するためには、ゴルフ場そのものが持続的に運営される必要があります。

ゴルフ会員権を購入する際には、会員権価格、利用価値、経営の持続可能性、預託金の回収可能性を総合的に判断することが重要です。

ゴルフ会員権は、資産価値の上昇を期待する投資対象としてではなく、失っても老後の生活に重大な影響を与えない範囲で保有する生活充実資産として考えることが望ましいのではないでしょうか。

参考

日本経済新聞 2026年10月18日 ゴルフ会員権8割高、愛好家が猛アプローチ バブル期とは異なる熱狂

国税庁 タックスアンサー ゴルフ会員権の譲渡による所得

法務省 民事再生法

法務省 破産法

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