人生100年時代のゴルフ会員権は投資か消費か生きがいか

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ゴルフ会員権の価格が上昇しています。

関東の主要150コースの平均会員権価格は305万円台となり、2019年末と比較して約8割上昇しました。

東京都や山梨県、沖縄県などでは価格上昇が目立つ一方、地方の一部地域では大幅に下落しています。

今回の価格上昇は、バブル期のような投機的な需要だけではなく、実際にゴルフを楽しみたいという愛好家の需要に支えられている点が特徴です。

しかし、ゴルフ会員権には、価格変動、維持費、税金、相続、ゴルフ場の閉鎖など、さまざまな問題があります。

一方で、ゴルフには健康維持や人間関係の充実、退職後の生きがいづくりといった価値もあります。

人生100年時代において、ゴルフ会員権をどのように位置付けるべきなのでしょうか。

金融資産としての投資なのか、趣味のための消費なのか、それとも人生を豊かにするための生きがいへの支出なのでしょうか。

今回は、これまでの9回の連載を総括し、60代から90代までの資産活用と人生設計の観点から、ゴルフ会員権の本当の価値について考えてみます。

ゴルフ会員権を投資商品として考える場合

ゴルフ会員権は、市場で売買されることがあります。

そのため、購入価格より高く売却できれば、売却益を得ることができます。

例えば、300万円で購入した会員権が600万円に上昇した場合、価格差は300万円です。

単純に考えれば、購入価格が2倍になったことになります。

しかし、実際の投資収益を考える場合には、購入時の名義書換料や仲介手数料、保有期間中の年会費、売却時の費用などを考慮する必要があります。

さらに、売却益が発生した場合には、所得税や住民税が課される可能性があります。

また、ゴルフ会員権は株式や投資信託のように、いつでも希望する価格で売却できるとは限りません。

購入希望者が少ない場合には、売却まで時間がかかることがあります。

さらに、ゴルフ場の経営悪化や閉鎖によって、資産価値が大きく低下する可能性もあります。

こうした特徴を考えると、ゴルフ会員権を純粋な投資商品として評価することには慎重であるべきでしょう。

ゴルフ会員権の価格上昇は将来も続くのか

ゴルフ会員権の価格上昇を考えるうえで重要なのは、需要と供給の関係です。

人気の高いゴルフ場では、会員権を購入したい人が多い一方、売却する人が少なければ価格が上昇します。

特に、都心からアクセスが良く、コースの品質が高いゴルフ場では、一定の需要が期待されます。

しかし、人口減少と高齢化が進む日本では、ゴルフ人口の長期的な動向を慎重に見極める必要があります。

既存会員の高齢化によって、将来的に売却希望者が増える可能性があります。

一方、若年層や女性などの新規利用者が十分に増えなければ、会員権の需要が弱まることも考えられます。

また、景気後退や金融市場の変化によって、高額な会員権の購入を控える人が増える可能性もあります。

したがって、現在の価格上昇が将来も続くと考えることは適切ではありません。

会員権価格の上昇は、購入を判断する材料の一つにすぎないのです。

ゴルフ会員権は保有するだけでも費用がかかる

ゴルフ会員権の特徴は、購入後も継続的な支出が必要になることです。

例えば、会員権を500万円で購入し、名義書換料150万円、仲介手数料15万円、その他の取得費用10万円を支払ったとします。

初期費用の合計は675万円です。

さらに、年会費、プレー料金、交通費、飲食費などが発生します。

年間の支出を70万円と仮定すると、10年間では700万円です。

初期費用と合わせると、10年間の総支出は1,375万円になります。

20年間では、総支出は2,075万円です。

もちろん、実際には利用回数やゴルフ場の料金体系によって支出額は異なります。

また、会員権を売却できれば、その売却収入によって実質的な負担が軽減される場合があります。

それでも、ゴルフ会員権は購入時の価格だけで判断できるものではありません。

長期間の保有を考える場合には、維持費を含めた総支出を把握する必要があります。

ゴルフ会員権を消費として考える視点

ゴルフ会員権を購入する目的が、ゴルフを楽しむことであれば、その支出は趣味のための消費という側面を持ちます。

例えば、旅行や音楽鑑賞、スポーツ観戦などにお金を使う場合と同じです。

こうした支出は、必ずしも将来の金銭的な利益を生むものではありません。

しかし、生活の満足度を高めるという価値があります。

ゴルフ会員権も同様です。

予約の取りやすさ、会員料金でのプレー、会員同士の交流、競技会への参加など、利用することで得られる価値があります。

例えば、年間40回ゴルフを楽しむ人と、年間5回しか利用しない人では、同じ会員権でも利用価値が大きく異なります。

年間40回利用する人にとっては、会員権の取得費用を長期間にわたって活用できる可能性があります。

一方、年間5回しか利用しない人にとっては、会員権を購入せずにビジターとしてプレーする方が合理的な場合があります。

重要なのは、会員権を所有すること自体ではなく、実際にどれだけ利用するかという点です。

退職金で会員権を購入する場合の注意点

60歳や65歳で退職金を受け取った場合、ゴルフ会員権の購入を検討する人もいるでしょう。

退職金は、長年の勤務によって得られる重要な老後資金です。

そのため、趣味に使う金額は慎重に決める必要があります。

例えば、退職金が2,000万円だった場合を考えます。

このうち500万円をゴルフ会員権の購入に充てると、退職金の25%を使用することになります。

さらに、名義書換料や仲介手数料などを含めて650万円を支払えば、退職金の32.5%です。

老後の生活費や医療費、介護費用などを考えると、決して小さな割合ではありません。

特に、退職後の収入が公的年金中心になる場合には、金融資産の取り崩しが必要になることもあります。

ゴルフ会員権の購入によって、将来の生活資金が不足するような状況は避ける必要があります。

趣味への支出は、老後の生活基盤を確保したうえで計画することが重要です。

60代はゴルフを楽しむ時間を確保しやすい

60代は、ゴルフを楽しむうえで重要な時期になる場合があります。

退職や働き方の変化によって、自由に使える時間が増える人もいるためです。

また、比較的体力があり、18ホールのラウンドを楽しめる人も多いでしょう。

例えば、60歳から70歳までの10年間、年間40回ゴルフを楽しむとします。

10年間のラウンド回数は400回です。

仮に会員権の取得費用が500万円だった場合、取得費用を400回で割ると1回当たり1万2,500円になります。

もちろん、これに年会費やプレー料金などが加わります。

また、会員権を売却できる場合には、実質的な取得負担は変わります。

それでも、利用回数が多ければ、取得費用を多くのプレー機会に分散できることが分かります。

60代で会員権を購入する場合には、今後何年間、どの程度の頻度で利用できるかを考えることが重要です。

70代は健康状態と利用頻度を重視する

70代になると、健康状態や体力に個人差が大きくなります。

60代と同じ頻度でゴルフを楽しめる人もいれば、利用回数を減らす人もいるでしょう。

そのため、70代では会員権の資産価値だけでなく、実際の利用可能性を重視する必要があります。

例えば、年間40回利用していた人が、年間15回に減少した場合を考えます。

年会費が10万円であれば、年間40回利用する場合の1回当たり年会費負担は2,500円です。

一方、年間15回の場合には、約6,667円になります。

利用回数が減少すると、1回当たりの固定費負担が大きくなります。

さらに、ゴルフ場までの移動時間や体力的な負担も重要です。

自宅から近く、無理なく利用できるゴルフ場であれば、長期間楽しめる可能性があります。

70代以降は、会員権価格の上昇を期待するよりも、健康状態に合わせて利用できるかどうかを重視することが望ましいでしょう。

80代90代では会員権の整理も選択肢になる

80代や90代になると、ゴルフを続けることが難しくなる場合があります。

もちろん、高齢になっても元気にゴルフを楽しむ人はいます。

しかし、体力や健康状態の変化によって、利用機会が減少する可能性があります。

そのため、会員権を保有し続けるかどうかを定期的に見直すことが重要です。

例えば、年間の利用回数が数回になった場合には、年会費などの負担が相対的に大きくなります。

また、将来の相続を考える必要もあります。

相続人がゴルフをしない場合には、会員権を引き継いでも利用価値がない可能性があります。

さらに、相続税評価や名義変更、売却手続きなどの問題も生じます。

こうした状況では、本人が元気なうちに売却し、現金化しておくことも選択肢になります。

ただし、売却益が発生した場合には、所得税や住民税が課される可能性があります。

会員権の整理では、利用価値、税負担、相続人の希望などを総合的に考える必要があります。

ゴルフ会員権の相続は家族の問題でもある

ゴルフ会員権は、保有者本人にとって大切な趣味の資産です。

しかし、相続人にとって同じ価値があるとは限りません。

例えば、父親が長年利用していたゴルフ会員権を、ゴルフをしない子どもが相続する場合です。

子どもにとっては、会員権を利用する機会がない一方、名義変更や売却などの手続きが必要になることがあります。

また、会員権に市場価値がある場合には、相続税の課税対象になる可能性があります。

取引相場のある一般的なゴルフ会員権は、原則として相続開始時点の通常の取引価格の70%で評価されます。

ただし、預託金返還請求権がある場合には、別途評価額を加算する必要が生じることがあります。

さらに、相続した会員権を売却する場合には、原則として被相続人の取得費と取得時期を引き継ぎます。

相続税と所得税の両方を考慮する必要があるのです。

こうした問題を避けるためには、生前から家族と会員権の取扱いについて話し合っておくことが重要です。

ゴルフ場の閉鎖リスクを忘れてはいけない

ゴルフ会員権を長期間保有する場合、ゴルフ場の経営状態も重要です。

国内のゴルフ場数は2026年7月時点で2,153施設となり、2002年度のピークから1割以上減少しています。

また、ゴルフ場の約4分の1が赤字とされています。

特に地方では、人口減少や会員の高齢化、運営コストの上昇などによって、経営環境が厳しくなっています。

ゴルフ場が閉鎖された場合、会員としてプレーする権利が失われる可能性があります。

また、預託金返還請求権があっても、運営会社の財務状況によっては全額を回収できないことがあります。

会員権価格が高いことと、ゴルフ場の経営が安定していることは同じではありません。

会員権を購入する際には、価格だけでなく、利用者数、会員数、設備投資、運営会社の財務状況などを確認する必要があります。

長期間安心して利用できるゴルフ場かどうかを見極めることが重要です。

ゴルフ会員権の価値を3つの視点で考える

ゴルフ会員権の価値は、大きく3つに分けて考えることができます。

第1は、資産価値です。

会員権を売却した場合に、どの程度の金額を回収できるかという視点です。

ただし、市場価格は変動し、売却できない場合もあります。

第2は、利用価値です。

予約の取りやすさ、会員料金でのプレー、コースの品質、施設の快適性などです。

利用回数が多いほど、こうした価値を享受する機会が増えます。

第3は、生きがいとしての価値です。

健康維持、仲間との交流、生活リズムの形成、目標を持つことなどが含まれます。

この3つの価値は、必ずしも一致しません。

例えば、会員権価格が上昇しても、健康上の理由で利用できなくなれば、本人にとっての利用価値は低下します。

一方、市場価格が下落しても、頻繁に利用し、仲間との交流を楽しんでいる人にとっては、高い満足度が得られる場合があります。

したがって、ゴルフ会員権の価値を市場価格だけで判断することは適切ではありません。

老後の資産活用では使う時期が重要になる

人生100年時代の資産設計では、資産をどれだけ増やすかだけでなく、いつ使うかという視点が重要です。

例えば、60歳から70歳までの10年間と、80歳から90歳までの10年間では、体力や健康状態が異なる可能性があります。

ゴルフのように身体活動を伴う趣味では、比較的元気な時期に楽しむことにも意味があります。

一方、老後の生活は長期化する可能性があるため、60代で資産を使いすぎることにも注意が必要です。

医療費や介護費用、住居費など、将来必要になる支出を考慮する必要があります。

そのため、趣味への支出は、生活費や予備資金を確保したうえで計画することが望ましいでしょう。

また、年齢や健康状態に応じて、支出額を見直すことも重要です。

60代では会員権を活用して頻繁にプレーし、70代では利用回数を調整し、80代以降は売却を検討するという方法も考えられます。

ただし、これは一つの例であり、すべての人に当てはまるわけではありません。

大切なのは、自分の健康状態や生活スタイルに合わせて、資産の使い方を柔軟に変えることです。

会員権を購入しないという選択も合理的

ゴルフを楽しむために、必ずしも会員権を購入する必要はありません。

ビジターとして複数のゴルフ場を利用する方法もあります。

例えば、年間20回プレーし、1回の料金が1万5,000円だった場合、年間プレー料金は30万円です。

10年間では300万円になります。

一方、会員権を購入する場合には、取得費用、名義書換料、年会費、会員料金によるプレー費用などが発生します。

年間利用回数が少ない場合には、ビジターとして利用する方が経済的に合理的なことがあります。

また、複数のゴルフ場を楽しめるというメリットもあります。

一方、会員権には、予約の利便性や会員同士の交流など、金銭的な比較だけでは測れない価値があります。

したがって、会員権を購入するかどうかは、利用頻度、費用、交流の希望、将来の健康状態などを踏まえて判断する必要があります。

高額な会員権を所有することが、豊かな老後の条件ではありません。

自分に合った方法でゴルフを楽しめることが重要です。

人生100年時代の資産設計に必要な考え方

人生100年時代の資産設計では、資産形成と資産活用の両方が重要になります。

現役時代には、老後に備えて金融資産を形成することが中心になる場合があります。

一方、退職後には、形成した資産を生活費や趣味、健康維持などに活用する段階へ移ります。

ただし、資産を使うことと、無計画に消費することは異なります。

老後の生活費や医療費、介護費用などを確保したうえで、生活の充実につながる支出を計画することが重要です。

ゴルフ会員権は、こうした資産活用の一例です。

購入によって健康や交流、生きがいが充実するのであれば、一定の価値があると考えられます。

一方、利用頻度が少なく、維持費が負担になる場合には、購入しない方が合理的なこともあります。

また、会員権の価格上昇を期待して購入する場合には、価格変動や換金性のリスクを理解する必要があります。

資産を増やすことと、人生を豊かにすることは、必ずしも同じではありません。

人生100年時代には、資産の金額だけでなく、その資産を使ってどのような時間を過ごすかという視点が重要になるのではないでしょうか。

結論

ゴルフ会員権には、投資、消費、生きがいという3つの側面があります。

市場で売買される以上、資産価値が上昇する可能性はあります。

しかし、価格が下落する可能性もあり、売却時の税負担やゴルフ場の閉鎖リスクも存在します。

そのため、ゴルフ会員権を純粋な投資商品として考えることには慎重であるべきでしょう。

一方、ゴルフを楽しむための支出として考えれば、予約の利便性や会員料金でのプレー、会員同士の交流などの価値があります。

さらに、健康維持や人間関係の充実、生活リズムの形成など、生きがいとしての価値も期待できます。

人生100年時代において、老後の資産は単に保有するだけでなく、生活の質を高めるために活用することも重要です。

ただし、老後の生活費や医療費、介護費用などに必要な資金を確保することが前提になります。

ゴルフ会員権を購入する場合には、取得費用や維持費だけでなく、利用頻度、健康状態、相続、売却可能性、ゴルフ場の経営状況などを総合的に判断する必要があります。

また、年齢を重ねるにつれて利用頻度が変化することを想定し、保有を続けるかどうかを定期的に見直すことも重要です。

ゴルフ会員権の本当の価値は、購入価格や売却価格だけでは測れません。

健康で充実した時間を過ごし、仲間との交流を楽しみ、人生に生きがいを持つことができるかどうかが重要です。

投資としての収益性を追求するのであれば、他の金融商品と比較する必要があります。

一方、趣味や健康、生きがいのために購入するのであれば、金銭的な損得だけでなく、生活の満足度を重視することが合理的です。

人生100年時代のゴルフ会員権は、資産を増やすための商品というよりも、資産を活用して人生を豊かにするための選択肢として考えることが望ましいのではないでしょうか。

参考

日本経済新聞 2026年10月18日 ゴルフ会員権8割高、愛好家が猛アプローチ バブル期とは異なる熱狂

国税庁 タックスアンサー ゴルフ会員権の譲渡による所得

国税庁 財産評価基本通達 211 ゴルフ会員権の評価

厚生労働省 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 2024年1月

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