登記上は2棟でも外観上は1棟の建物をどう評価するか

税理士
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相続税や贈与税の土地評価では、建物の登記と現地の状況が一致しないケースがあります。

特に判断が難しいのが、登記上は別々の建物であるにもかかわらず、現地では壁や屋根がつながり、外観上は1棟の建物に見える場合です。

このような場合、土地の評価単位は登記上の2棟を基準に判定するのでしょうか。

それとも、建物が物理的に一体となっていることを重視し、1つの評価単位とするのでしょうか。

評価単位の判定によって、土地の形状や奥行距離、各種補正率の適用関係が変わる可能性があります。

今回は、2026年度の税理士研修資料で紹介された事例をもとに、建物の登記と現況が異なる場合の土地評価について、実務上の判断方法を解説します。

登記上は2棟でも外観上は1棟という事例

今回の事例では、被相続人が所有する土地の上に、被相続人名義の建物が建っています。

建物の登記を確認すると、家屋番号10番1と家屋番号10番2という別々の2棟の建物として登記されています。

区分所有建物ではなく、それぞれ独立した建物として登記されていることが特徴です。

ところが、現地を確認すると、両建物の壁と屋根が物理的につながっています。

外観上は、2棟というよりも1棟の建物に見える状態です。

さらに、研修資料の図では、両建物とも1階部分が自用、2階部分が賃貸として利用されています。

このような場合、土地の評価単位を1つとするのか、2つとするのかが問題になります。

建物の登記を重視すれば2単位という考え方になります。

一方、建物の物理的な一体性を重視すれば、1単位という考え方も成り立ちます。

評価単位は土地の利用状況から判断する

相続税の土地評価では、宅地は原則として1画地ごとに評価します。

ここでいう1画地は、登記上の1筆と必ずしも一致しません。

土地がどのように利用されているか、どのような権利関係にあるかなどを踏まえて判定します。

例えば、複数の筆に分かれた土地であっても、一体として1棟の建物の敷地に利用されていれば、1つの評価単位となることがあります。

反対に、1筆の土地に複数の独立した貸家が建っている場合には、それぞれの敷地を別の評価単位として取り扱うことがあります。

したがって、今回のように建物の登記と現況が異なる場合には、登記だけでなく、実際の建物構造や利用状況を確認する必要があります。

ただし、建物が物理的に一体であることと、土地の利用単位が一体であることは、必ずしも同じ意味ではありません。

建物の構造と土地の利用状況を区別して検討することが重要です。

税務署は建物の登記を重視する傾向がある

今回の研修資料では、税務署は建物が別々に登記されている場合、その登記状況を重視する傾向があると説明されています。

つまり、外観上は1棟の建物に見えても、登記上2棟であれば、税務上も2棟として取り扱われる可能性があるということです。

もっとも、これは研修講師の実務経験に基づく見解です。

登記上の棟数だけで土地の評価単位が必ず決まるという意味ではありません。

建物の登記は、土地評価における重要な判断資料の1つです。

しかし、登記と現況が一致しない場合には、建物の構造や建築確認の内容も確認する必要があります。

特に、建物が増築によって一体化している場合には、その経緯が重要になります。

建築確認が増築であれば1棟と判断できる可能性がある

研修資料では、登記上は2棟であっても、1棟として判断できる重要な条件が示されています。

第一に、建物が物理的につながっており、外観上は1棟に見えることです。

第二に、建築確認が増築として申請されていることです。

この2つの条件がそろっていれば、1棟として取り扱うことに合理性があるという見解が示されています。

例えば、当初は家屋番号10番1の建物だけが存在していたとします。

その後、隣接する部分に建物を増築し、既存建物と壁や屋根を一体化させた場合です。

建築確認上は増築として扱われているにもかかわらず、登記上は別々の建物となっていることがあります。

このような場合、建築確認関係資料は、建物の一体性を判断するうえで重要な根拠になります。

ただし、建築確認が増築であるという事実だけで、土地の評価単位が自動的に1つになるわけではありません。

実際の土地の利用状況や権利関係も含めて検討する必要があります。

建物内部で行き来できるかも重要になる

研修資料では、建物内部で相互に行き来できるかどうかも判断材料として挙げられています。

例えば、家屋番号10番1と家屋番号10番2の建物が壁や屋根でつながっているだけでなく、内部の廊下や扉を通じて自由に行き来できる場合です。

このような場合には、建物全体が一体的に利用されていると判断しやすくなります。

反対に、外観上は1棟に見えても、建物内部が完全に分離され、それぞれ独立した玄関や設備を持ち、相互に行き来できない場合には、独立性が高いと考えられます。

もっとも、内部で行き来できないからといって、必ず2棟になるわけではありません。

長屋のように、各住戸が内部で行き来できなくても、建築物としては1棟となる場合があるためです。

したがって、内部での行き来の可否は、建物の一体性を判断するための補助的な要素として位置付けることが適切です。

建物の一体性と土地の利用区分は別に検討する

今回の事例では、もう1つ注意したい点があります。

それは、建物の1階部分が自用、2階部分が賃貸として利用されていることです。

相続税の土地評価では、建物が1棟であるかどうかだけでなく、土地がどのような権利関係のもとで利用されているかも重要になります。

例えば、1棟の建物について、所有者が1階を自宅として利用し、2階を第三者に賃貸している場合です。

この場合、建物全体が1棟であることを前提に、敷地の評価単位を検討します。

そのうえで、貸家建付地としての評価が必要になるか、賃貸部分の床面積割合などをどのように反映させるかを検討することになります。

今回の研修資料は、主として建物を1棟とみるか2棟とみるかという問題を取り上げています。

自用部分と賃貸部分が混在する場合の具体的な貸家建付地評価の計算方法までは示されていません。

そのため、実際の申告では、評価単位の判定と賃貸による権利関係の評価を区別して確認する必要があります。

1単位と2単位では評価額が変わる可能性がある

土地の評価単位が異なれば、評価額も変わる可能性があります。

例えば、全体で400㎡の土地があり、その上に登記上2棟の建物が建っているとします。

土地全体を1つの評価単位とする場合には、400㎡の土地について、全体の形状や奥行距離などを踏まえて評価します。

一方、200㎡ずつ2つの評価単位に分ける場合には、それぞれの土地について個別に評価することになります。

この場合、間口距離、奥行距離、不整形地補正率などの適用関係が変わることがあります。

ただし、2つに分ければ必ず評価額が低くなるわけではありません。

土地の形状や道路との位置関係によっては、一体評価の方が低くなる場合もあります。

重要なのは、評価額の有利不利を先に考えて評価単位を決めないことです。

まず適正な評価単位を判定し、その結果に基づいて評価額を計算する必要があります。

実務では建築確認関係資料の確認が欠かせない

今回のような事例では、登記事項証明書だけで評価単位を決めることは避けたいところです。

まず、建物の登記事項証明書を確認し、家屋番号や構造、床面積、建築時期などを把握します。

次に、建築計画概要書や建築確認関係資料を確認します。

特に、建物が新築として申請されているのか、既存建物の増築として申請されているのかが重要です。

さらに、現地調査では、建物の壁や屋根のつながり、内部の行き来の可否、玄関や階段の配置などを確認します。

建物の外観だけでなく、内部の構造を確認することができれば、より合理的な判断につながります。

また、土地と建物の所有関係、賃貸借契約、実際の利用状況についても確認が必要です。

これらの資料を総合して、評価単位を判断することになります。

1単位として評価する場合は根拠を文書化する

研修資料では、登記上2棟の建物を1棟として取り扱い、土地を1つの評価単位とする場合には、その判断根拠を丁寧に記載することが推奨されています。

具体的には、建物が物理的につながっていること、建築確認が増築となっていること、内部で行き来できるかどうかなどを整理します。

そして、これらの事実から、なぜ1棟の建物として判断することが合理的なのかを説明します。

実務では、評価明細書とは別に、評価単位の判定理由を記載した説明資料を作成することが考えられます。

建物の登記事項証明書、建築確認関係資料、現地写真、配置図なども保存しておくとよいでしょう。

特に、登記上の棟数と異なる評価方針を採用する場合には、客観的な資料による説明が重要です。

ただし、説明資料を添付すれば、その評価方法が必ず認められるというものではありません。

あくまでも、合理的な評価方針を裏付けるための資料として位置付ける必要があります。

結論

登記上は2棟でも、現地では壁や屋根が一体となり、外観上は1棟に見える建物があります。

このような場合、土地の評価単位を登記だけで判断することは適切ではありません。

今回の研修資料では、建物が物理的につながっていることに加え、建築確認が増築として申請されている場合には、1棟として取り扱うことに合理性があるとの見解が示されています。

さらに、建物内部で相互に行き来できる場合には、建物の一体性を裏付ける材料になります。

ただし、これらは評価単位を判断するための重要な要素であり、すべての事例に一律に適用できる基準ではありません。

実際の土地評価では、建物の構造、登記、建築確認、所有関係、利用状況などを総合的に確認する必要があります。

そして、登記上の棟数と異なる評価単位を採用する場合には、その判断根拠を客観的な資料によって説明できるようにしておくことが重要です。

相続税の土地評価では、登記という形式と、現地の利用実態の両方を確認することが欠かせません。

適正な評価単位を判断するためには、書類の確認と現地調査を組み合わせた丁寧な実務対応が求められるのです。

参考

東京税理士会 2026年8月13日 令和8年度第16回会員研修会資料 相続・贈与の土地評価実務Q&A

国税庁 財産評価基本通達 宅地の評価単位

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