クレジットカードで買い物をすると、利用者から見ればカード会社とお店だけで決済が行われているように見えます。
しかし実際のキャッシュレス決済では、その間に決済代行会社が入っていることがあります。
決済代行会社は、店舗と複数の決済事業者との間に入り、契約や決済処理、売上代金の管理などをまとめて行う事業者です。
参考記事で紹介された全東信も、飲食店を中心とするクレジットカード加盟店に対してカード会社に先行して売上代金を入金するサービスを提供するとともに、カード会社から加盟店の募集業務を受託していました。ピーク時の加盟店数は20万店に達していました。 f60a10e1-9921-4a3c-bf34-1d5fb82…
キャッシュレス決済を理解するうえでは、カード会社だけでなく、その間をつなぐ決済代行会社の存在を知っておくことが重要です。
決済代行会社の役割
決済代行会社は、店舗と決済事業者をつなぐ役割を担っています。
店舗がクレジットカード決済を導入する場合、単にカードを読み取る端末を置けばよいわけではありません。
どの決済手段を利用するのかを決め、必要な契約やシステムを用意し、決済された売上を管理する必要があります。
しかも現在はクレジットカードだけでも複数のブランドがあり、さらに電子マネーやQRコード決済などさまざまなキャッシュレス決済があります。
店舗がそれぞれの決済サービスに個別に対応すると、契約やシステム管理が複雑になります。
そこで間に入るのが決済代行会社です。
決済代行会社を利用することで、店舗は複数の決済手段をまとめて導入しやすくなります。
つまり決済代行会社は、複雑になったキャッシュレス決済の窓口をまとめる役割を果たしているのです。
カード会社と決済代行会社は役割が違う
カード会社と決済代行会社は同じように見えますが、役割は異なります。
カード会社は、クレジットカードを利用した決済の仕組みそのものを担う事業者です。
一方、決済代行会社は、店舗とカード会社などの間に入り、決済を利用しやすくする役割を担います。
たとえば飲食店が複数のカード決済に対応したいとします。
店舗がそれぞれの決済事業者と個別にやり取りする方法もあります。
しかし、決済代行会社を利用すれば、複数の決済手段について契約や決済処理などをまとめられる場合があります。
参考記事の全東信の場合には、カード会社から加盟店の募集業務を受託していました。さらに加盟店に対してカード会社より先に売上代金を入金するサービスも提供し、その手数料を収益としていました。 f60a10e1-9921-4a3c-bf34-1d5fb82…
カード会社と加盟店をつなぐだけではなく、加盟店の資金繰りに関係するサービスまで提供していたわけです。
加盟店契約をまとめると店舗の負担を減らせる
キャッシュレス決済を導入する店舗にとって大きな問題になるのが、契約や管理の手間です。
複数の決済手段を利用するために、それぞれについて個別に手続きを行えば、店舗側の事務負担は大きくなります。
決済方法ごとに契約内容を確認し、売上を管理し、入金状況を確認する必要もあります。
決済代行会社が間に入れば、こうした手続きをまとめやすくなります。
特に小規模な飲食店では、決済業務だけを担当する従業員を置くことは難しいでしょう。
店主自身が接客や仕入れ、従業員管理、経理などを担当しているケースもあります。
決済に関する契約や管理を一本化できることは、大きなメリットになります。
参考記事で全東信が飲食店を中心に加盟店を増やし、ピーク時には20万店に達していたことからも、小規模店舗と決済サービスをつなぐ事業が大きな規模になっていたことが分かります。 f60a10e1-9921-4a3c-bf34-1d5fb82…
なぜ店舗が直接カード会社と契約しないのか
もちろん、すべての店舗が必ず決済代行会社を利用しなければならないわけではありません。
重要なのは、直接契約する場合には店舗自身がさまざまな手続きや管理を行う必要があるということです。
キャッシュレス決済がクレジットカードだけだった時代に比べ、現在は決済手段が大幅に増えています。
利用者からすれば選択肢が増えることは便利ですが、店舗側から見ると対応すべき決済サービスが増えることになります。
そこで複数のサービスとの間を取りまとめてくれる決済代行会社を利用するメリットが生まれます。
店舗はキャッシュレス決済そのものを本業としているわけではありません。
飲食店なら料理や接客、小売店なら商品の販売が本業です。
決済に関する専門的な業務を外部事業者にまとめてもらうことで、本業に集中しやすくなるわけです。
便利になる一方で新しい取引先が増える
決済代行会社を利用すると店舗の負担は軽くなりますが、別の側面もあります。
店舗とカード会社の間に別の会社が入るということは、自社の売上代金に関係する事業者が一つ増えるということでもあります。
ここが今回の参考記事を考えるうえで重要なポイントです。
全東信は、スマートフォン決済の普及によって新規参入が相次ぎ、競争が激しくなるなかで加盟店をつなぎとめるために手数料率を引き下げました。その結果、収益率が低下したとされています。さらに新型コロナウイルス感染症の影響で主要顧客である飲食店が打撃を受け、大幅な赤字が続きました。 f60a10e1-9921-4a3c-bf34-1d5fb82…
その後、信用問題などから資金調達にも支障を来し、2026年7月に自己破産に追い込まれました。 f60a10e1-9921-4a3c-bf34-1d5fb82…
問題は決済代行会社だけでは終わりませんでした。
サービスを利用していた加盟店の中には、最大で1カ月分の売上代金が入金されない店舗も出たとされています。 f60a10e1-9921-4a3c-bf34-1d5fb82…
決済代行会社は資金繰りにも関係する
店舗にとって決済代行会社は、単なるシステム会社とは限りません。
売上代金の入金に関与する場合には、店舗の資金繰りにも深く関係します。
現金決済なら、顧客から受け取った現金はその場で店舗の手元に入ります。
ところがキャッシュレス決済では、顧客が支払ってから店舗の銀行口座へ売上代金が入るまでに複数の事業者が関係する場合があります。
そのため店舗は、決済手数料だけを見るのではなく、自社の売上代金がどのような経路を通って入金されるのかを理解しておくことが重要です。
誰と契約しているのか。
誰が決済を処理しているのか。
誰から売上代金が振り込まれるのか。
そして、その事業者に問題が起きた場合に自社へどのような影響があるのか。
キャッシュレス化が進むほど、こうした確認の重要性も高まっていきます。
結論
決済代行会社とは、店舗とカード会社などの決済事業者との間に入り、キャッシュレス決済に関する契約や決済処理などをまとめる事業者です。
店舗にとっては、複数の決済手段を個別に管理する負担を減らせるというメリットがあります。
特に人員の限られた小規模な飲食店や小売店では、複雑な決済業務をまとめられることには大きな意味があります。
一方、決済代行会社が売上代金の入金にも関与する場合、その会社は店舗の資金繰りを左右する重要な取引先になります。
キャッシュレス決済では、利用者が支払った瞬間と、店舗が現金を受け取る瞬間が同じとは限りません。
便利なキャッシュレス決済の裏側には、複数の会社を経由してお金が動く仕組みがあります。
決済代行会社を理解することは、キャッシュレス決済の仕組みだけでなく、店舗が抱える新しい信用リスクを理解する第一歩でもあります。
参考
企業実務 2026年9月 キャッシュレス時代の盲点 懸念される小規模飲食店の連鎖倒産