飲食店でクレジットカードを使って5000円を支払ったとします。
利用者から見れば、その場で5000円の支払いが終わったように見えます。しかし、店舗の銀行口座にその瞬間5000円が入金されるわけではありません。
クレジットカード決済では、顧客がカードを利用した日と、店舗が売上代金を受け取る日の間に時間差があります。
今回の参考記事では、この時間差を埋めるため、全東信が飲食店などのクレジットカード加盟店に対して、カード会社に先行して売上代金を入金するサービスを提供していたことが紹介されています。 f60a10e1-9921-4a3c-bf34-1d5fb82…
なぜカード決済では、売上が発生してから店舗にお金が入るまで時間がかかるのでしょうか。
カード決済のお金の流れ
現金で商品を販売する場合、お金の流れは非常に単純です。
顧客が店舗に現金を渡し、店舗が商品やサービスを提供します。
その場で店舗は代金を受け取ることができます。
一方、クレジットカード決済では、顧客と店舗の間だけでお金のやり取りが完結するわけではありません。
顧客がカードを利用すると、決済情報が処理されます。そしてカード決済に関係する事業者を通じて、最終的に加盟店へ売上代金が入金されます。
つまり、カードを読み取った瞬間に店舗へ現金が移動しているわけではありません。
店舗から見れば、商品やサービスはすでに提供しているものの、その代金については後から受け取ることになります。
ここに現金決済との大きな違いがあります。
締め日と入金日がある
カード売上には、売上が発生した日とは別に、売上代金をまとめる締め日と、実際に店舗へお金が振り込まれる入金日があります。
具体的な締め日や入金日は契約する事業者やサービスによって異なるため、今回の参考記事だけから一律に何日後と決めることはできません。
重要なのは、カードを利用された日と加盟店への入金日が必ずしも同じではないという点です。
たとえば、ある期間に発生したカード売上を一定の締め日でまとめ、その後に加盟店へ入金するという形になります。
店舗側から見ると、売上はすでに発生しています。
しかし、売上代金はまだ銀行口座にありません。
そのため、会計上の売上と実際に使える現金の動きには時間差が生じます。
参考記事で全東信がカード会社に先行して売上代金を入金するサービスを提供していたのも、この時間差に資金需要が存在するからだと考えることができます。 f60a10e1-9921-4a3c-bf34-1d5fb82…
現金決済なら売上と入金がほぼ同時になる
現金決済と比較すると、この違いは分かりやすくなります。
飲食店が1日に現金で10万円を売り上げたとします。
基本的には営業終了時点で、その10万円は店舗の手元にあります。
そのお金を翌日の食材の仕入れなどに使うこともできます。
ところが10万円すべてがカード決済だった場合、売上が10万円あるという点は同じでも、その日の手元資金が10万円増えるわけではありません。
店舗は料理を提供していますから、食材費はすでに発生しています。
従業員も働いているため、人件費も発生します。
家賃や光熱費なども支払わなければなりません。
売上はあるのに、その売上代金がまだ手元にない。
キャッシュレス決済では、この状態が日常的に発生します。
入金までの期間が資金繰りに影響する
売上が発生してから実際に代金を回収するまでの期間は、企業の資金繰りに大きく影響します。
仮に月商1000万円の飲食店について考えてみます。
その大部分が現金決済なら、日々の売上とともに現金も入ってきます。
一方、キャッシュレス決済の割合が高くなると、帳簿上は売上が増えていても、その一部はまだ入金待ちという状態になります。
その間にも、仕入代金や給与、家賃などの支払日はやってきます。
そのため、入金までの期間が長いほど、それをつなぐための手元資金が必要になります。
反対に、売上代金を早く受け取ることができれば、店舗の資金繰りは楽になります。
早期入金サービスに一定の需要が生まれるのは、このためです。
売上代金を早く受け取ることには価値がある
店舗にとって、100万円を受け取れるのであれば、いつ受け取っても同じように思えるかもしれません。
しかし経営では、金額だけでなく受け取る時期も重要です。
1カ月後に100万円が入ってくるとしても、その前に80万円の仕入代金や給与を支払わなければならなければ、別に80万円を準備する必要があります。
そこで、将来入ってくる売上代金を早く受け取れるサービスに価値が生まれます。
参考記事で取り上げられた全東信は、このような早期入金サービスを提供し、手数料収入を得ていました。 f60a10e1-9921-4a3c-bf34-1d5fb82…
店舗からすれば、一定の手数料を負担してでも売上代金を早く受け取ることで、資金繰りを安定させるという考え方です。
入金が止まると問題は一気に大きくなる
通常通り入金されている間は、売上日と入金日の時間差は資金繰りの管理によって対応できます。
しかし、予定していた入金そのものが止まると状況は変わります。
今回の参考記事では、全東信の破産によって、サービスを利用していた加盟店の中に最大で1カ月分の売上代金が入金されない店舗が出ているとされています。 f60a10e1-9921-4a3c-bf34-1d5fb82…
顧客はすでにカードで支払っています。
店舗も料理や商品を提供しています。
それにもかかわらず、店舗が予定していた売上代金を受け取れないという事態が発生したわけです。
特に小規模な飲食店では、1カ月分の売上代金が入らない影響は非常に大きくなります。
参考記事でも、カード決済が利用できないことで客離れを招き、資金繰りに支障を来す事業者が多数出る可能性が指摘されています。 f60a10e1-9921-4a3c-bf34-1d5fb82…
売上を見るだけでは資金繰りは分からない
会社経営では、売上がいくらあるかだけを見ていてはいけません。
その売上代金がいつ入ってくるのかまで確認する必要があります。
特にキャッシュレス比率の高い店舗では、毎日の売上高と銀行口座の残高は大きく異なることがあります。
今月1000万円売り上げたから、1000万円を自由に使えるということではありません。
まだ入金されていないカード売上がいくらあるのか。
いつ入金される予定なのか。
その前にどのような支払いがあるのか。
こうしたお金の時間差を管理することが資金繰りです。
キャッシュレス化が進むほど、店舗経営では売上管理と同時に入金管理の重要性が高まります。
結論
クレジットカード決済では、顧客がカードを使った瞬間に店舗の銀行口座へ売上代金が入るわけではありません。
売上が発生してから、決済に関係する事業者を経由し、一定の締めや入金の仕組みに従って加盟店へ代金が支払われます。
現金決済であれば、基本的には商品を販売した時点で現金を受け取れます。
クレジットカード決済では、売上と現金回収の間に時間差が生じます。
この時間差が長くなるほど、店舗は仕入代金や給与、家賃などを支払うための資金を別に用意しなければなりません。
そして予定していた入金が止まれば、売上が十分にある店舗でも資金繰りが急速に悪化する可能性があります。
キャッシュレス時代の経営では、いくら売ったかだけではなく、売ったお金がいつ現金になるのかを見ることが重要なのです。
参考
企業実務 2026年9月 キャッシュレス時代の盲点 懸念される小規模飲食店の連鎖倒産