ハラスメント調査によって事実関係が明らかになった後、企業は加害者への対応を検討することになります。
しかし、感情的な判断で重い処分を科したり、逆に問題を軽く扱ったりすると、新たな労務トラブルを招く可能性があります。
懲戒処分は、就業規則に基づき、公平性と客観性を確保しながら決定することが重要です。
今回は、ハラスメント加害者への懲戒処分について、「懲戒処分の種類」「処分決定の手順」「再発防止措置」の3つの視点から解説します。
懲戒処分は就業規則が根拠となる
企業が従業員を懲戒処分できるのは、就業規則にその根拠が定められている場合です。
ハラスメントが認定されたからといって、会社が自由に処分内容を決められるわけではありません。
就業規則に定められた懲戒事由や懲戒の種類に基づき、行為の内容や悪質性、影響の大きさなどを総合的に考慮して判断する必要があります。
記事でも、自社従業員への対応は就業規則の懲戒規定に基づいて処分を行うことが示されています。
懲戒処分にはさまざまな種類がある
ハラスメントへの対応は、一律ではありません。
一般的には、次のような処分が段階的に検討されます。
・注意・指導
・けん責
・減給
・出勤停止
・降格
・懲戒解雇
どの処分が適切かは、
・行為が故意だったか
・継続的だったか
・被害者への影響
・会社への損害
・反省の有無
などを総合的に考慮して判断します。
軽微なケースと重大なケースを同じ基準で扱うことは適切ではありません。
社外の行為者には別の対応が必要
ハラスメントの相手が従業員とは限りません。
カスタマーハラスメントでは顧客、就活セクハラでは求職者、BtoB企業では取引先担当者が関係する場合もあります。
記事では、
顧客等に対しては
・警告文の発出
・店舗や施設への出入り禁止
・サービス提供の拒否
・警察への通報
取引先に対しては
・相手企業へ再発防止を要請
・必要に応じて取引終了も検討
といった対応が紹介されています。
つまり、相手の立場によって対応方法は大きく異なることを理解しておく必要があります。
処分決定は公平な手続が重要
懲戒処分を決める際には、調査結果だけでなく、適正な手続も重要です。
企業は、
・相談者の証言
・行為者の説明
・第三者の証言
・客観的証拠
を総合的に確認した上で判断します。
一方的な思い込みだけで処分を決定すると、不当な懲戒処分として争われる可能性があります。
また、相談担当者が処分を決めるのではなく、経営者や権限を持つ組織が最終判断を行う体制を整えることも重要です。
処分だけでは問題は解決しない
ハラスメント対策の目的は、処分することではありません。
同じ問題を繰り返さない職場をつくることが最終目標です。
そのため記事では、
・ハラスメントを許さない方針の再周知
・研修の再実施
・業務プロセスの見直し
・職場環境の改善
などを再発防止策として挙げています。
また、事実認定ができなかった場合でも、そのまま放置せず、職場環境の改善やルールの見直しを行うことが重要であるとしています。
現場責任者だけに責任を負わせない
中小企業では、現場責任者がハラスメント対応の最前線に立つことが少なくありません。
しかし、記事では「現場責任者を責めず全社で対応する」という考え方が示されています。
ハラスメントは通常業務ではなく、対応が難しい場面も多くあります。
対応が十分でなかった結果だけを責めるのではなく、会社全体で支え、再発防止につなげることが、組織として健全な対応といえるでしょう。
結論
ハラスメントへの懲戒処分は、感情や印象ではなく、就業規則に基づいて公平かつ適正に決定しなければなりません。
また、相手が従業員なのか、顧客なのか、取引先なのかによって対応方法も異なります。
さらに重要なのは、処分を行って終わりにしないことです。研修やルールの見直し、職場環境の改善など再発防止まで取り組んで初めて、ハラスメント対策は実効性を持ちます。企業が目指すべきなのは「処分する組織」ではなく、「ハラスメントを生まない組織」をつくることなのです。
参考
企業実務 2026年8月号
「対策義務化直前!中小企業によく効く ハラスメントへの処方箋」 飯村なつき 著