企業の決算書を見ると、「繰延税金資産」と並んで「繰延税金負債」という勘定科目が計上されていることがあります。どちらも税効果会計で用いられる重要な勘定科目ですが、その意味は正反対です。
繰延税金資産は将来の税負担が減る効果を表すのに対し、繰延税金負債は将来の税負担が増えることを示しています。どちらも現在の税金ではなく、会計と税務の認識時期の違いによって生じる「将来の税金」を表現するものです。
今回は、繰延税金負債の仕組みや繰延税金資産との違い、代表的な発生事例について解説します。
繰延税金負債とは
繰延税金負債とは、将来支払う法人税等が増加することを表す負債です。
企業会計では利益が計上されていても、税務上はまだ課税されていない場合があります。その結果、現在の税負担は軽くなりますが、将来その差額が解消されると税金を支払う必要があります。
この将来増える税負担を負債として計上するのが繰延税金負債です。
税効果会計では、現在だけでなく将来の税負担まで考慮して企業の財政状態を表示することが求められています。
繰延税金資産との違い
繰延税金資産と繰延税金負債は、一時差異の方向が異なります。
繰延税金資産は、将来税金が減る効果を持つため資産として計上されます。
一方、繰延税金負債は、将来税金が増える効果を持つため負債として計上されます。
簡単に整理すると次のようになります。
- 繰延税金資産 将来の税負担が減少する
- 繰延税金負債 将来の税負担が増加する
両者は表裏一体の関係にあり、一時差異の内容によってどちらが発生するかが決まります。
将来加算一時差異とは
繰延税金負債が発生する原因となるのが「将来加算一時差異」です。
将来加算一時差異とは、現在は課税所得を減らしているものの、将来には課税所得を増加させる差異をいいます。
つまり、今は税金が少なく済んでいますが、その分だけ将来に税金を支払うことになるため、税効果会計では負債として認識します。
この考え方は、将来減算一時差異から生じる繰延税金資産と対になる概念です。
繰延税金負債の代表例
繰延税金負債が発生する代表例として、次のようなケースがあります。
固定資産の減価償却
会計上と税務上で減価償却方法や償却額が異なる場合、税務上の減価償却費が会計上より多くなることがあります。
この場合、当期の課税所得は小さくなりますが、将来は逆に税務上の減価償却費が少なくなり、課税所得が増加します。
そのため、繰延税金負債が発生します。
その他有価証券評価差額金
その他有価証券を時価評価した結果、評価益が発生しても、税務上は売却するまで課税されません。
会計では純資産が増加していますが、税務上の課税は将来行われるため、その税負担相当額を繰延税金負債として計上します。
圧縮記帳
国庫補助金などを利用した圧縮記帳では、税務上は取得価額を減額して課税を繰り延べることがあります。
会計上との処理の違いから将来加算一時差異が生じ、繰延税金負債を計上することがあります。
決算書ではどこを見るか
繰延税金負債は貸借対照表の固定負債に表示されます。
ただし、同じ納税主体に繰延税金資産がある場合には、両者を相殺して表示することが一般的です。
そのため、貸借対照表では相殺後の金額だけが表示されるケースも少なくありません。
投資家が企業分析を行う際には、注記を確認し、繰延税金資産と繰延税金負債の内訳まで把握することが重要です。
繰延税金負債を見る際のポイント
繰延税金負債は「悪い負債」ではありません。
むしろ、税金の支払い時期が将来へ繰り延べられていることを意味するため、短期的には資金繰りを改善する効果があります。
一方で、将来的には税金を支払う必要があるため、企業の将来キャッシュフローを考える上では無視できない存在です。
決算書を読む際には、金額だけを見るのではなく、どのような一時差異から発生しているのかを確認することが重要です。
結論
繰延税金負債とは、会計と税務の認識時期の違いによって、将来支払う税金が増えることを表す負債です。
将来加算一時差異から発生し、減価償却やその他有価証券評価差額金などが代表例となります。
繰延税金資産と合わせて理解することで、税効果会計の全体像が見え、決算書の税金に関する情報をより正確に読み解くことができるようになります。
参考
企業実務 2026年8月号
「なるほど納得 勘定科目108 会計上と税務上の資産・負債の額に差異があるときは?②」