高齢になると家を借りられない 保証人と緊急連絡先の壁

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就職氷河期世代が40代から50代となり、老後の住まいに対する不安が高まっています。

住宅問題というと、家賃の負担や住宅購入資金に注目が集まりがちです。

しかし、単身者にとって、もう一つ深刻な問題があります。

それは、お金があっても賃貸住宅を借りられない可能性があることです。

2026年9月15日の日本経済新聞では、年収700万円の40代女性や年収1,500万円を超える40代男性医師が、将来の賃貸住宅の確保に不安を抱えている実態が紹介されました。

収入が十分にあっても、保証人や緊急連絡先を確保できなければ、入居審査で苦労する場合があります。

親が高齢になり、兄弟姉妹との関係も希薄になれば、頼れる人がいなくなる可能性があります。

人生100年時代において、単身者が安心して住み続けるためには、家賃を支払う能力だけでなく、保証や見守りの仕組みまで考える必要があります。

年収700万円でも賃貸住宅に不安を抱える理由

日本経済新聞で紹介された40代の単身女性は、東京都内のメーカーに技術職として勤務し、年収は約700万円です。

家賃は管理費込みで月9万6,000円ですが、勤務先から家賃補助を受けているため、現在の住居費負担は小さく抑えられています。

経済的には比較的安定した生活を送っています。

ところが、将来の住み替えには不安があります。

現在の賃貸住宅を契約する際、緊急連絡先として70歳の父親を届け出たところ、不動産会社から70歳未満の人を求められたためです。

最終的には父親を緊急連絡先として認めてもらえましたが、次回も同じように認められるとは限りません。

弟も独身で、おいやめいもいないため、将来誰に頼めばよいのか分からないといいます。

この事例が示しているのは、住宅の入居審査が必ずしも本人の収入だけで判断されていないということです。

単身者にとって、親族の存在が住宅確保の条件となる場合があるのです。

保証人と緊急連絡先は役割が違う

賃貸住宅を借りる際には、保証人と緊急連絡先を求められることがあります。

この2つは似ているようで、法律上の役割が異なります。

まず、連帯保証人です。

連帯保証人は、借主が家賃を支払わない場合などに、契約で定められた範囲で支払義務を負います。

個人が賃貸借契約の連帯保証人となる場合、民法上、原則として保証する債務の極度額を定める必要があります。

極度額の定めがない個人根保証契約は効力が生じません。

一方、緊急連絡先は、借主と連絡が取れない場合や事故、病気などが発生した場合に連絡を受ける人です。

通常、緊急連絡先として登録されただけで、家賃の支払義務や身元保証義務を負うわけではありません。

ただし、実際の契約書に保証人としての条項が含まれていないかは確認が必要です。

問題は、家賃保証会社を利用して連帯保証人を不要にできても、緊急連絡先は別途求められることがある点です。

つまり、保証会社に料金を支払えば、すべての問題が解決するわけではないのです。

家賃保証会社の利用率は8割を超えた

かつて賃貸住宅の契約では、親や兄弟姉妹などの親族が連帯保証人になることが一般的でした。

しかし、単身世帯の増加や家族関係の変化に伴い、民間の家賃保証会社を利用する契約が広がっています。

国土交通省の調査によると、家賃保証会社の利用率は2010年には約4割でしたが、2023年には8割を超えています。

家賃保証会社は、借主が家賃を滞納した場合などに、契約内容に応じて貸主へ立替払いを行う仕組みです。

ただし、保証会社が支払った家賃は免除されるわけではありません。

借主は原則として、保証会社から立替金の返済を求められます。

保証料は契約内容によって異なりますが、初回に月額家賃の50%から100%程度を支払い、その後も更新保証料などが必要となる例があります。

例えば、家賃8万円の住宅で初回保証料が50%の場合、4万円を支払います。

年間保証料が1万円であれば、10年間で初回保証料と更新保証料を合わせて十数万円の負担となる可能性があります。

保証会社の利用によって住宅を借りやすくなる一方で、借主には新たな費用負担が発生します。

なぜ高齢者は入居を断られやすいのか

高齢者が賃貸住宅を借りにくい背景には、貸主側の不安があります。

代表的なのが、家賃滞納、病気、認知症、孤独死などのリスクです。

特に単身高齢者の場合、室内で倒れても発見が遅れる可能性があります。

死亡後に親族と連絡が取れなければ、残された家財の整理や賃貸借契約の終了などが難しくなる場合もあります。

貸主にとっては、原状回復費用や空室期間の長期化なども懸念材料となります。

高齢者専門の不動産仲介会社R65不動産の2025年の調査では、65歳を超えて賃貸住宅を探した人の約3人に1人が、年齢を理由に入居を断られた経験があるとされています。

これは、高齢者全体の3人に1人が住宅を借りられないという意味ではありません。

しかし、実際に住宅を探した高齢者の中で、年齢が入居の障壁となっていることを示しています。

住宅が空いていても、高齢者が自由に入居できるとは限らないのです。

親族がいない場合は誰を緊急連絡先にするのか

単身者が高齢になると、親が亡くなり、兄弟姉妹も高齢になっている可能性があります。

親族がいても、遠方に住んでいたり、長年交流がなかったりする場合があります。

このような場合、緊急連絡先を誰に頼めばよいのでしょうか。

まず考えられるのが、友人や知人です。

ただし、不動産会社や保証会社によっては、親族以外を緊急連絡先として認めない場合があります。

また、友人に頼む場合には、何かあったときにどこまで対応してもらうのかを事前に確認する必要があります。

次に、民間の見守りサービスや身元保証サービスなどを利用する方法があります。

事業者によっては、緊急連絡先の引受けや安否確認などに対応しています。

ただし、サービス内容や料金、対応時間、契約終了時の取扱いなどは事業者ごとに異なります。

さらに、自治体の居住支援窓口や居住支援法人に相談する方法もあります。

地域によっては、住宅探しと生活支援を組み合わせた相談が可能です。

重要なのは、親族がいないからといって住宅確保を諦めるのではなく、利用できる支援制度を早めに確認することです。

2025年の住宅セーフティネット法改正で何が変わったのか

高齢者や障害者、低所得者など、住宅を確保することが難しい人を支援するため、住宅セーフティネット制度が整備されています。

2025年10月には改正住宅セーフティネット法が施行され、支援の仕組みが強化されました。

注目されるのが、居住サポート住宅の制度です。

これは、住宅確保要配慮者に対して、安否確認や見守り、必要に応じた福祉サービスへのつなぎなどを提供する住宅を認定する仕組みです。

単に住宅を貸すだけではなく、入居後の生活を支えることを目的としています。

高齢の単身者にとっては、安心して暮らせる住宅の選択肢が広がる可能性があります。

貸主側にとっても、見守り体制が整うことで、入居者に何かあった場合の不安を軽減できることが期待されます。

ただし、制度が始まったからといって、全国どこでも十分な住宅が確保されているわけではありません。

認定住宅の供給や支援を担う人材の確保には課題が残っています。

制度の利用を検討する際には、居住地域で実際に利用できる住宅や支援内容を確認する必要があります。

UR賃貸住宅は単身者の選択肢になるのか

単身者の住宅確保を考える際に、都市再生機構のUR賃貸住宅も選択肢となります。

UR賃貸住宅では、原則として礼金、仲介手数料、更新料が不要です。

また、通常の民間賃貸住宅で求められるような連帯保証人も不要です。

ただし、入居には一定の収入基準や貯蓄基準などがあり、誰でも無条件で入居できるわけではありません。

物件によっては家賃が高く、単身者には広すぎる間取りしか空いていない場合もあります。

特に都市部では、希望する地域や家賃帯の住宅が見つからないことがあります。

また、UR賃貸住宅に入居できたとしても、病気や認知症、緊急時の対応など、生活上の問題がすべて解決するわけではありません。

住宅契約の保証人問題と、高齢期の生活支援の問題は分けて考える必要があります。

持ち家でも身元保証の問題はなくならない

それでは、住宅を購入すれば保証人や緊急連絡先の問題から解放されるのでしょうか。

賃貸住宅の入居審査という問題はなくなります。

しかし、高齢期の身元保証や財産管理の問題まで解消されるわけではありません。

例えば、単身者が病気で入院した場合、病院から緊急連絡先や身元保証人について確認されることがあります。

ただし、身元保証人がいないことだけを理由に、医療機関が正当な理由なく診療を拒むことは認められていません。

また、介護施設へ入居する際には、緊急時の対応や費用の支払い、死亡後の手続きなどについて確認される場合があります。

さらに、認知症などで判断能力が低下すれば、持ち家の管理や売却が難しくなる可能性があります。

住宅を所有していても、将来の意思決定を支える仕組みが必要になるのです。

50代から準備しておきたい緊急時の対応

就職氷河期世代が50代のうちから取り組みたいのは、緊急時の連絡体制を整えることです。

第一に、現在の賃貸借契約を確認します。

緊急連絡先として誰が登録されているのか、その人が高齢になった場合に変更できるのかを確認しておきます。

第二に、保証会社の契約内容を確認します。

保証の範囲、更新料、緊急連絡先の条件などを把握します。

第三に、地域の居住支援制度を調べます。

自治体の住宅担当窓口や居住支援協議会、居住支援法人などが相談先になります。

第四に、友人や知人とのつながりを維持します。

親族だけに頼るのではなく、日常的に連絡を取り合える関係を築くことも重要です。

第五に、将来の財産管理や死後の手続きを考えます。

任意後見契約や財産管理等委任契約、死後事務委任契約などは、それぞれ役割が異なります。

必要に応じて専門家に相談し、自分の状況に合った仕組みを検討することが大切です。

なお、これらの契約を締結すれば、必ず賃貸住宅の緊急連絡先として認められるわけではありません。

契約の目的と、住宅を貸す側が求める条件を確認する必要があります。

結論

高齢者の住宅問題は、家賃を支払えるかどうかだけでは判断できません。

年収700万円や1,500万円を超える人でも、単身で頼れる親族がいなければ、将来の住まいに不安を抱えることがあります。

家賃保証会社の普及によって、連帯保証人を確保する負担は軽減されてきました。

しかし、緊急連絡先や見守り、死亡後の手続きなどの問題は残っています。

2025年に施行された改正住宅セーフティネット法は、住宅と生活支援を結び付ける重要な制度改革です。

ただし、制度を実際に機能させるためには、住宅の供給だけでなく、支援を担う人材や事業者の確保が必要です。

人生100年時代には、家族がいることを前提とした住宅制度から、家族がいなくても安心して暮らせる制度への転換が求められます。

単身者が50代から準備すべきなのは、老後資金だけではありません。

自分に何かあったときに誰が連絡を受け、誰が必要な手続きを支えるのか。

その仕組みを元気なうちから考えておくことが、安心できる老後の住まいにつながるのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月15日 氷河期おひとり様、賃貸の緊急連絡先「誰に頼めば」 親高齢で難しく

日本経済新聞 2026年9月17日 子のない高齢者1000万人に、終のすみかは 結婚しても「いずれ一人」

日本経済新聞 2026年9月18日 高齢者賃貸、孤独死懸念で厳しく おひとり様「住宅政策の蚊帳の外」

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