子どものいない夫婦が直面する老後 配偶者死亡後の住まいと財産管理

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人生100年時代を迎え、子どものいない夫婦の老後が新たな社会課題となっています。

夫婦2人で暮らしている間は、住宅や生活費、財産管理について大きな不安を感じないかもしれません。

しかし、配偶者の一方が亡くなれば、残された人は単身生活になります。

2026年9月17日の日本経済新聞では、子どものいない高齢者が2050年には約1,000万人に達するという日本総合研究所の試算が紹介されました。

2024年の約500万人から、わずか26年間で倍増する見通しです。

これまで日本の住宅政策や社会保障制度は、配偶者や子どもなどの家族が高齢者を支えることを前提としてきました。

しかし、子どものいない夫婦が増えることで、家族による支援を期待できない高齢者も増加していきます。

特に重要なのが、配偶者死亡後の住まい、生活費、相続、財産管理、身元保証の問題です。

夫婦で暮らしている今から、将来の単身生活を想定した準備が必要になっています。

子どものいない高齢者は2050年に1,000万人へ

日本総合研究所の試算によると、子どものいない高齢者は2024年の約500万人から2050年には約1,000万人に増加する見通しです。

この背景には、未婚率の上昇や晩婚化、出生数の減少などがあります。

また、結婚していても子どもを持たない夫婦や、子どもを持てなかった夫婦もいます。

重要なのは、子どものいない高齢者が増えること自体が問題なのではないということです。

問題は、これまで家族が担ってきた役割を、社会制度が十分に代替できていないことです。

例えば、高齢者が病気で入院する場合、病院から緊急連絡先や身元保証人について確認されることがあります。

介護施設への入居でも、緊急時の連絡や費用の支払い、死亡後の対応などについて、家族の協力が期待される場合があります。

さらに、認知症などによって判断能力が低下した場合には、財産管理や各種契約の支援が必要になることがあります。

子どもがいれば必ず支援を受けられるわけではありませんが、子どもがいない夫婦では、こうした問題への備えをより意識する必要があります。

夫婦2人の生活から単身生活への変化

日本経済新聞で紹介された40代の女性は、7歳年上の夫と千葉県の戸建て住宅で暮らしています。

夫婦は2011年に結婚し、約2,200万円で4LDKの住宅を購入しました。

住宅ローンはすでに完済しています。

夫婦の年収は合計で約1,550万円あり、金融資産も保有しています。

経済的には比較的安定した生活を送っています。

それでも、女性は将来の住まいに不安を感じています。

年上の夫が先に亡くなれば、自分は一人になる可能性があるからです。

現在の住宅は夫婦2人で暮らすには十分な広さがあります。

しかし、80代や90代になって一人で4LDKの戸建て住宅を維持することは、必ずしも容易ではありません。

庭の手入れ、建物の修繕、掃除、防犯対策などを一人で行う必要があります。

また、車を運転できなくなれば、買い物や通院にも支障が生じる可能性があります。

持ち家があることと、高齢期に安心して暮らせることは同じではないのです。

配偶者が亡くなると生活費はどう変わるのか

夫婦の一方が亡くなると、生活費は減少する部分と、減少しにくい部分があります。

食費や被服費などは、世帯人数が減ることで支出が減少する可能性があります。

一方、住宅の固定資産税、管理費、修繕費、通信費などは、必ずしも半分にはなりません。

例えば、夫婦2人の生活費が月30万円だった場合を考えます。

配偶者が亡くなり、一人暮らしになった後の生活費を月22万円と仮定します。

生活費は8万円減少します。

しかし、世帯収入がそれ以上に減少すれば、家計は厳しくなります。

特に公的年金については、夫婦2人で受け取っていた年金が、そのまま残された配偶者に引き継がれるわけではありません。

老齢基礎年金は、それぞれの受給権に基づいて支給されます。

亡くなった配偶者の老齢基礎年金を、そのまま受け取ることはできません。

一方、一定の要件を満たす場合には、遺族厚生年金を受給できる可能性があります。

ただし、受給額は亡くなった人の厚生年金加入記録や、残された配偶者自身の年金などによって異なります。

夫婦の老後資金を考える際には、2人で暮らす場合だけでなく、一人になった場合の収支を計算することが重要です。

遺族年金があっても生活費を十分に賄えるとは限らない

具体的な例を考えてみます。

65歳以上の夫婦で、夫の老齢基礎年金が月7万円、老齢厚生年金が月13万円とします。

妻の老齢基礎年金が月7万円、老齢厚生年金が月3万円とします。

夫婦の年金収入は合計で月30万円です。

ここで夫が亡くなった場合を考えます。

現行制度の一般的な計算方法では、夫の老齢厚生年金13万円の4分の3に相当する額は月9万7,500円です。

ただし、65歳以上の遺族厚生年金では、亡くなった配偶者の老齢厚生年金の4分の3と、夫婦双方の老齢厚生年金を用いる別の計算額を比較する仕組みがあります。

また、妻自身の老齢厚生年金との支給調整もあります。

この例で、妻が受け取る老齢厚生年金と遺族厚生年金の合計は、一般的な現行制度の計算では月9万7,500円相当となります。

これに妻自身の老齢基礎年金7万円を加えると、月16万7,500円です。

夫婦2人の年金収入30万円と比較すると、月13万2,500円の減少になります。

なお、これは制度の仕組みを説明するための単純化した例です。

実際の受給額は、年金加入記録や生年月日、経過措置、今後の制度改正などによって異なります。

また、税金や社会保険料を考慮した手取り額とも異なります。

重要なのは、配偶者死亡後には世帯の年金収入が大きく減少する可能性があることです。

持ち家があっても住宅維持費は続く

住宅ローンを完済した持ち家があれば、老後の住居費負担は軽くなると考えられます。

しかし、持ち家にも維持費が必要です。

例えば、戸建て住宅について次のような年間費用を仮定します。

固定資産税と都市計画税は年間12万円です。

火災保険や地震保険などは年間5万円です。

屋根や外壁、設備などの修繕に備える積立額を年間20万円とします。

庭の管理やその他の維持費を年間5万円とします。

合計すると年間42万円です。

月額換算では3万5,000円になります。

さらに、大規模な修繕が必要になれば、一度に数百万円の支出が発生する可能性もあります。

高齢期に一人で住宅を維持する場合には、費用だけでなく、修繕業者の選定や契約内容の確認なども負担になります。

持ち家があるから安心と考えるのではなく、住宅を維持し続けられるかという視点が必要です。

子どものいない夫婦の相続は誰が相続人になるのか

子どものいない夫婦では、相続についても注意が必要です。

配偶者が亡くなった場合、残された配偶者がすべての財産を相続できるとは限りません。

民法では、配偶者は常に相続人となります。

しかし、亡くなった人に子どもがいない場合には、父母などの直系尊属や兄弟姉妹が相続人となる場合があります。

例えば、夫が亡くなり、妻と夫の兄弟姉妹が相続人になる場合を考えます。

法定相続分は、妻が4分の3、兄弟姉妹全体で4分の1です。

夫の遺産が4,000万円であれば、法定相続分に従うと妻が3,000万円、兄弟姉妹全体で1,000万円になります。

この遺産の大部分が自宅不動産だった場合、遺産分割が難しくなる可能性があります。

例えば、妻が自宅に住み続けたいと考えても、他の相続人との間で財産の分け方について協議が必要になる場合があります。

遺産分割協議がまとまらなければ、相続手続きが長期化する可能性もあります。

子どものいない夫婦では、配偶者に財産を残すための準備が重要になります。

遺言書があれば配偶者に自宅を残しやすくなる

子どものいない夫婦が相続対策として検討したいのが、遺言書の作成です。

例えば、夫が自宅を妻に相続させたい場合、その意思を遺言書に明確に記載しておく方法があります。

兄弟姉妹には遺留分がありません。

そのため、夫の相続人が妻と兄弟姉妹である場合、適切な遺言書を作成しておけば、原則として妻に全財産を相続させることが可能です。

一方、夫の父母などの直系尊属が相続人になる場合には、遺留分の問題が生じる可能性があります。

また、遺言書を作成する場合には、公正証書遺言や自筆証書遺言など、それぞれの方式に応じた要件を満たす必要があります。

遺言書が無効になれば、希望した財産承継が実現できない可能性があります。

さらに、遺言書を作成しただけでは、亡くなった後のすべての手続きが自動的に進むわけではありません。

必要に応じて遺言執行者を指定することも検討すべきです。

子どものいない夫婦では、双方が遺言書を作成し、どちらが先に亡くなっても残された配偶者が困らないように準備することが重要です。

認知症になると住宅の売却が難しくなる

高齢期の住宅問題では、認知症などによる判断能力の低下にも注意が必要です。

例えば、夫が亡くなった後、妻が一人で戸建て住宅に住んでいるとします。

80歳になり、住宅の維持管理が難しくなったため、自宅を売却して高齢者向け住宅へ移りたいと考えました。

しかし、認知症などによって契約内容を理解し判断する能力が不足している場合には、不動産売買契約を有効に締結できない可能性があります。

このような場合には、成年後見制度の利用などを検討する必要があります。

成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度があります。

法定後見制度は、判断能力が低下した後に、家庭裁判所が本人の状態に応じて後見人などを選任する仕組みです。

任意後見制度は、判断能力が十分にあるうちに、将来支援を受ける人や事務内容を契約で定めておく仕組みです。

ただし、任意後見契約を締結しただけで直ちに代理権が発生するわけではありません。

本人の判断能力が不十分となり、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点から効力が生じます。

住宅を将来売却する可能性がある場合には、判断能力が十分なうちから財産管理の方法を検討しておくことが重要です。

家族信託は住宅管理の選択肢になるのか

財産管理の方法として、家族信託が注目されることがあります。

家族信託は、信頼できる家族などに財産を託し、契約で定めた目的に従って管理や処分を行ってもらう仕組みです。

例えば、夫婦の一方が認知症になった場合に備えて、住宅の管理や売却について信託契約を設計することが考えられます。

ただし、家族信託には受託者となる人が必要です。

子どものいない夫婦では、配偶者や親族などの中から適切な受託者を確保できるかが問題になります。

また、家族信託は財産管理の制度であり、身上保護や医療同意などを包括的に代替するものではありません。

税務上の取扱いや信託終了後の財産の帰属についても、慎重な検討が必要です。

家族信託を利用すればすべての問題が解決するわけではなく、任意後見制度や遺言書などとの役割分担が重要になります。

身元保証人がいない場合の施設入居

子どものいない夫婦が将来直面する可能性があるのが、介護施設への入居時の身元保証問題です。

日本経済新聞が紹介した2022年の総務省関東管区行政評価局の調査では、病院や介護施設の9割以上が身元保証人を求めていました。

また、身元保証人がいない場合に受け入れを断ると回答した施設などもありました。

ただし、身元保証人がいないことだけを理由に、医療機関が正当な理由なく診療を拒むことは認められていません。

介護保険施設についても、身元保証人がいないことのみを理由にサービス提供を拒むことは適切ではありません。

それでも実際には、緊急時の連絡や費用の支払い、死亡後の手続きなどを誰が担うのかという問題が残ります。

近年は民間の身元保証サービスや高齢者等終身サポートサービスも増えています。

しかし、契約内容や費用、預託金の管理、事業者の継続性などを慎重に確認する必要があります。

特に長期間にわたる契約では、事業者が将来もサービスを提供できるかという問題があります。

子どものいない夫婦は、どちらかが元気なうちに、地域の相談窓口や利用可能な支援制度を確認しておくことが大切です。

夫婦のどちらが先に亡くなっても困らない準備

子どものいない夫婦が老後に備えるためには、双方が一人になった場合を想定することが重要です。

まず、夫婦それぞれの年金見込額を確認します。

配偶者死亡後に受け取れる遺族年金についても、個別の加入記録を基に確認する必要があります。

次に、住宅の所有名義を確認します。

夫婦共有なのか、一方の単独所有なのかによって、相続や売却の手続きが異なります。

さらに、預貯金や有価証券、生命保険などの金融資産を整理します。

どの金融機関にどのような資産があるのか、残された配偶者が把握できるようにしておくことが重要です。

また、遺言書の作成を検討します。

子どものいない夫婦では、兄弟姉妹などが相続人になる可能性があるため、財産承継の意思を明確にしておくことが有効です。

加えて、将来の住み替えについて話し合っておきます。

現在の住宅に住み続けるのか、利便性の高いマンションへ移るのか、サービス付き高齢者向け住宅などを利用するのかを検討します。

最後に、判断能力が低下した場合の財産管理や、死亡後の手続きを誰に依頼するかを考えます。

これらを元気なうちに準備しておくことで、将来の不安を軽減できる可能性があります。

結論

子どものいない夫婦の老後問題は、単に子どもがいないことによる不安ではありません。

配偶者が亡くなった後に、住宅、生活費、財産管理、相続、身元保証などを一人で判断しなければならなくなることが大きな課題です。

持ち家があり、十分な金融資産を保有していても、安心できるとは限りません。

認知症などで判断能力が低下すれば、不動産の売却や金融資産の管理が難しくなる可能性があります。

また、遺言書がなければ、配偶者と兄弟姉妹などの間で相続手続きが必要になる場合があります。

人生100年時代には、夫婦2人で暮らす期間だけでなく、どちらかが一人になった後の生活を見据える必要があります。

そのためには、年金収入、住宅維持費、金融資産、相続、財産管理、身元保証を一体として考えることが重要です。

さらに、社会全体としても、家族による支援を当然とする仕組みから、家族がいなくても安心して暮らせる制度への転換が求められます。

子どものいない夫婦にとって、最も重要なのは、将来一人になっても生活が成り立つ仕組みを、夫婦が元気なうちに整えておくことです。

それが、残された配偶者の生活と財産を守り、安心できる老後につながるのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月17日 子のない高齢者1000万人に、終のすみかは 結婚しても「いずれ一人」

日本経済新聞 2026年9月15日 氷河期おひとり様、賃貸の緊急連絡先「誰に頼めば」 親高齢で難しく

日本経済新聞 2026年9月18日 高齢者賃貸、孤独死懸念で厳しく おひとり様「住宅政策の蚊帳の外」

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