自動車ローン金利上昇と新車価格高騰の二重苦――マイカー購入で家計が考えるべき資金計画

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自動車の購入を巡る家計環境が大きく変わり始めています。これまで日本では、低金利を背景に自動車ローンを利用し、毎月の返済額を抑えながら新車を購入することが一般的な選択肢となっていました。しかし、日本銀行の利上げによって自動車ローンの金利が上昇し、従来の資金計画が通用しにくくなっています。

さらに、新車価格そのものも上昇しています。安全性能の向上や環境規制への対応、原材料費や人件費の増加などを背景に、自動車は以前より高額な買い物となりました。

自動車ローンの金利上昇と車両価格の高騰が同時に進むことで、消費者は二重の負担を抱えることになります。

マイカーは生活を支える重要な資産である一方、購入後も維持費が継続的に発生します。これからの自動車購入では、車両価格だけでなく、金利、返済期間、残価設定、維持費、将来の家計収支まで含めた総合的な判断が必要です。

自動車ローン金利の上昇が本格化

2026年10月から、ホンダやマツダなどの自動車メーカーがローン金利を引き上げました。

ホンダの金融子会社であるホンダファイナンスは、自動車や二輪車のローン金利を一律0.4%引き上げています。

これにより、残価設定型クレジットの実質年率は5.6%、通常のクレジットは6.2%となりました。

マツダも一部販売店で残価設定型クレジットの金利を引き上げ、奈良県内の販売店では5.4%となっています。

日産自動車やスズキでも金利引き上げの動きが見られます。

背景には、日本銀行による金融政策の正常化があります。

日本銀行は2026年9月に政策金利を1.25%へ引き上げました。金融機関の資金調達コストが上昇するなか、自動車メーカーの金融子会社も従来の低金利を維持することが難しくなっています。

自動車ローンの金利は、住宅ローンと比較すると高い水準にあります。

特にディーラーローンでは、販売促進のための優遇金利が適用されない場合、年5〜6%台の金利負担が発生することになります。

新車価格は10年間で24%上昇

金利上昇以上に家計への影響が大きいのが、新車価格そのものの高騰です。

総務省の小売物価統計によると、2025年の普通乗用車の価格は371万4,750円となり、10年間で24%上昇しました。

仮に10年前に300万円で購入できた自動車が、現在では370万円程度になっている計算です。

価格上昇の背景には、複数の構造的な要因があります。

衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備の高度化、燃費規制への対応、電動化技術の導入、原材料費の上昇などです。

自動車の性能や安全性が向上していることは消費者にとってメリットですが、購入時の負担が大きくなっていることも事実です。

さらに、車両価格が上昇すると、同じ頭金割合でも借入金額が増えるため、支払利息も増加します。

つまり、車両価格の上昇と金利上昇は、それぞれ独立した負担ではなく、相互に影響しながら家計を圧迫する関係にあります。

金利1%の違いが返済総額を変える

自動車ローンを利用する場合、金利の違いがどの程度の負担になるのかを確認することが重要です。

例えば、300万円を5年間、元利均等返済、ボーナス返済なしで借り入れる場合を考えます。

金利が年3%の場合、毎月の返済額は約5万3,900円、総返済額は約323万円です。

金利が年5%になると、毎月の返済額は約5万6,600円、総返済額は約340万円になります。

さらに年6%では、毎月の返済額は約5万8,000円、総返済額は約348万円となります。

年3%と年6%を比較すると、総返済額には約25万円の差が生じます。

この試算は、借入期間中の金利が固定され、手数料などを考慮しない場合です。

車両価格が400万円、500万円と高くなれば、金利差による負担もさらに大きくなります。

自動車購入では、毎月の返済額に注目しがちですが、返済総額を確認することが欠かせません。

残価設定型クレジットのメリットと注意点

近年、自動車購入で利用が広がっているのが残価設定型クレジット、いわゆる残クレです。

残クレは、契約終了時点の車両の想定残存価値をあらかじめ設定し、その金額を最終回の支払いとして据え置く仕組みです。

通常のローンと比較して、毎月の返済額を抑えやすいことが特徴です。

一方、残クレには注意点もあります。

第一に、据え置いた残価部分にも金利負担が生じる契約が一般的です。

毎月の返済額が少なくても、支払利息の総額が少ないとは限りません。

第二に、契約終了時には、車両を返却する、買い取る、乗り換えるといった選択が必要になります。

車両を買い取る場合には、残価相当額を一括で支払うか、再度ローンを組む必要が生じることがあります。

第三に、走行距離や車両の状態などについて契約条件が設定される場合があります。

条件を満たさなければ、返却時に追加負担が発生する可能性があります。

残クレは毎月の資金繰りを改善する手段ですが、購入費用そのものを安くする制度ではありません。

ディーラーローンと銀行ローンの比較

自動車ローンを利用する場合、ディーラーが提供するローンだけでなく、銀行や信用金庫などのマイカーローンも比較することが重要です。

ディーラーローンは、車両購入と同時に手続きを進めやすく、審査や契約の利便性に優れています。

一方、銀行のマイカーローンは、条件によってディーラーローンより低い金利で借り入れられる場合があります。

ただし、金利は金融機関、借入金額、返済期間、利用者の信用状況などによって異なります。

また、銀行ローンには変動金利型もあるため、借入時の金利だけで比較することは適切ではありません。

比較する際には、適用金利、保証料、事務手数料、繰上返済条件、金利変更の有無を確認する必要があります。

さらに、ディーラーによってはローン利用を条件に車両価格の値引きや購入特典を提供する場合があります。

そのため、金利だけでなく、車両購入価格とローン返済総額を合わせた実質的な負担で判断することが重要です。

低金利キャンペーンに潜む確認事項

金利上昇が続くなか、自動車メーカーは販売促進のために低金利キャンペーンを展開しています。

中国のBYDは2026年10月から、新型車を除く車種を対象に金利0%の販売施策を始めました。

欧州メーカーでも一部車種を対象に低金利プランを提供する動きがあります。

金利0%であれば、通常のローンと比較して利息負担を大幅に抑えられます。

ただし、金利0%という表示だけで購入を決めることは避けたいところです。

対象車種や契約期間が限定されている場合や、現金購入時の値引き条件と異なる場合があります。

また、ローン金利が低くても、車両本体価格や付属品、保証サービスなどの費用が高ければ、購入総額が必ずしも安くなるとは限りません。

低金利キャンペーンを利用する場合には、通常金利で購入した場合との総支払額を比較することが必要です。

自動車の保有コストは購入代金だけではない

マイカー購入では、ローン返済額だけでなく、購入後の維持費も考慮しなければなりません。

自動車には、自動車税、自動車重量税、自賠責保険、任意保険、車検費用、整備費用、燃料費、駐車場代などが発生します。

車種や使用状況、居住地域によって差がありますが、年間数十万円の維持費が必要になることも珍しくありません。

例えば、ローン返済が毎月5万円、その他の維持費が毎月3万円であれば、年間の自動車関連支出は96万円になります。

5年間では480万円です。

この金額には、突発的な修理費用や買い替え時の追加負担が含まれていません。

自動車購入を検討する際には、購入価格だけでなく、保有期間全体の総コストを把握することが重要です。

特に住宅ローンや教育費、老後資金の準備と重なる世帯では、自動車関連支出が家計の柔軟性を低下させる可能性があります。

金利上昇時代の自動車購入と家計管理

金利が上昇する局面では、自動車購入の判断基準を見直す必要があります。

まず重要なのは、購入可能額と家計が無理なく負担できる金額を区別することです。

ローン審査に通過する金額が、必ずしも家計に適した購入金額とは限りません。

将来の収入減少や教育費の増加、住宅ローンの返済負担などを考慮し、余裕のある資金計画を立てる必要があります。

また、頭金を増やせば借入金額を減らせますが、預貯金を過度に取り崩すことにも注意が必要です。

病気や失業、住宅設備の修繕などに備える生活予備資金まで自動車購入に充てることは避けるべきです。

中古車の購入や車種の見直し、購入時期の調整も選択肢になります。

自動車が生活に不可欠な地域では、購入そのものを見送ることが難しい場合もあります。

その場合でも、必要な機能と希望する装備を区別することで、購入費用を抑える余地があります。

高齢期のマイカー購入と老後資金

自動車購入の資金計画は、現役世代だけでなく高齢世代にとっても重要です。

定年退職後は給与収入が減少し、公的年金を中心とした生活に移行する世帯が増えます。

そのなかで高額な自動車ローンを組むと、毎月の固定支出が老後の生活費を圧迫する可能性があります。

特に注意したいのは、退職金を受け取った直後の自動車購入です。

退職金によって一時的に預貯金が増加しても、その資金は今後20年、30年にわたる生活を支える重要な財源です。

自動車の買い替えに多額の資金を投入すると、医療費や介護費、住宅修繕費などへの対応力が低下するおそれがあります。

また、高齢期には運転を続ける期間についても考える必要があります。

購入後数年で運転をやめる可能性がある場合には、高額な新車を購入することが合理的とは限りません。

安全装備の充実した中古車やカーシェアリング、公共交通機関なども含めて検討することが大切です。

自動車は生活の利便性を高める手段ですが、老後資金を過度に減少させないことが優先されます。

結論

自動車ローン金利の上昇と新車価格の高騰によって、マイカー購入を取り巻く環境は大きく変化しています。

これまでの低金利時代には、毎月の返済額を基準に自動車を選ぶことも可能でした。しかし、金利が年5〜6%台となる状況では、借入金額と返済期間によって支払利息が大きく変わります。

特に残価設定型クレジットでは、毎月の返済額が少ないことと、総支払額が少ないことを混同しないよう注意が必要です。

今後の自動車購入では、車両本体価格、ローン金利、返済総額、維持費、将来の買い替え費用を総合的に比較することが求められます。

現役世代では住宅費や教育費とのバランス、高齢世代では老後資金の確保が重要になります。

金利上昇時代のマイカー購入で大切なのは、購入できる自動車を選ぶことではなく、長期的な家計の安定を維持しながら保有できる自動車を選ぶことです。

自動車を生活の豊かさにつなげるためにも、目先の月額負担だけにとらわれず、保有期間全体を見据えた資金計画が欠かせません。

参考

日本経済新聞 2026年11月2日 朝刊

「ホンダやマツダ、車ローン金利引き上げ 消費者は新車高と二重苦」

総務省「小売物価統計調査」

日本自動車工業会「2025年度乗用車市場動向調査」

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