土地取引について届出制度を整備しても、必要な届出が行われなければ制度は十分に機能しません。
今回の提言では、登記情報との照合によって無届事案を把握し、現地調査に入るなど、無届への対応を強化すべきとしています。
これまで以上に重要になるのは、届出を受け付けるだけではなく、行政側から届出漏れを把握して対応する仕組みです。
土地行政が「届出を待つ」仕組みから、「情報を照合して確認する」仕組みへ広がる可能性があります。
無届事案をどう把握するのか
土地取引について届出義務が定められていても、実際に届出がなければ、届出情報だけから取引の存在を確認することは困難です。
そこで今回の提言では、登記情報との照合によって無届事案を把握する方向性が示されています。
土地に関する届出情報と登記情報を照らし合わせることで、本来届出が必要であるにもかかわらず、届出が確認できない事案を把握するという考え方です。
重要なのは、土地所有者から提出された情報だけを行政が利用するのではない点です。
行政が把握できる別の情報との照合によって、届出制度の実効性を高めようとしています。
把握した後は現地調査へ
無届の可能性がある取引を把握しただけでは、対応は終わりません。
資料では、無届事案を把握して現地調査に入るなど、無届事案への対応を強化すべきとしています。
つまり、情報上の確認と現場での確認を組み合わせる方向です。
土地は、その所在地や利用状況を現場で確認することが重要になる場合があります。
登記情報などから取引の存在を把握し、必要に応じて現地の状況を確認するという流れが想定されています。
ただし、どのような場合に現地調査を行うのか、その具体的な基準については今回の資料では示されていません。
国だけで対応する仕組みではない
土地は全国各地に存在するため、国だけですべての状況を確認することには限界があります。
今回の提言では、国、都道府県、市町村がそれぞれの役割に応じた分担と連携体制を構築し、重層的に対応すべきとしています。
国が土地取引に関する情報を把握し、地域の実情を把握する地方公共団体と連携する仕組みが重要になると考えられます。
特に現地調査では、土地が所在する地域の行政機関の役割が重要になる可能性があります。
もっとも、具体的に国、都道府県、市町村がどのように役割を分担するのかについては、今後の制度設計を確認する必要があります。
届出対象面積の引下げで対象は広がる可能性
今回の提言では、無届への対応だけでなく、土地取引そのものの情報把握を広げることも求めています。
現在、土地取得の際に必要となる届出は大規模な土地取引に限られています。
これについて提言では、届出対象面積を引き下げるなど、取引段階における情報把握を強化すべきとしています。
さらに全国一律の引下げだけではなく、地方公共団体による引下げも可能にする方向性が示されています。
届出対象となる取引が増えれば、それに伴って届出の要否を適切に判断する重要性も高まります。
届出対象未満の取引情報も把握へ
さらに提言では、届出対象面積未満の土地取引情報についても、国が把握して地方公共団体への提供等を行う仕組みを構築すべきとしています。
つまり、土地取引情報を把握する仕組みは、届出対象となる取引だけに限定されない方向です。
届出対象となる取引については届出を求めます。
対象面積未満の取引についても別の形で情報を把握します。
そして、本来必要な届出が行われていない場合には、登記情報との照合などによって無届を把握します。
複数の方法を組み合わせることで、土地取引に関する情報の空白を減らそうとしていることが分かります。
取得後の土地利用も行政監督の対象へ
無届事案への対応強化は、土地を取得した時点だけの問題ではありません。
今回の提言では、届出後に利用目的を変更した場合には再届出を求め、土地利用の継続的なモニタリングを可能にすべきとしています。
さらに、土地利用関連法では必ずしも禁止されていないものの、周辺地域に悪影響を生じさせる土地利用が存在することも問題視されています。
こうした法規制の「隙間」に対応するため、土地利用基本計画に「不適切な土地利用」に該当する行為を明示し、国土利用計画法に基づく指導監督を可能にする方向性も示されています。
土地取引の届出確認と、その後の土地利用への監督がつながっていく可能性があります。
情報把握と行政監督が一体になる
今回の提言を整理すると、土地行政の一連の流れが見えてきます。
まず、届出対象面積を引き下げるなどして土地取引情報を幅広く把握します。
次に、登記情報との照合によって無届事案を確認します。
必要に応じて現地調査を行います。
取得後に利用目的が変更されれば再届出を求め、利用状況を継続的に把握します。
そして、不適切な土地利用に該当する場合には、行政による指導監督につなげる方向です。
土地取引の情報収集だけを目的とするのではなく、その情報を土地利用の適正化に活用する仕組みが検討されていると考えられます。
企業では届出漏れを防ぐ仕組みが重要になる
企業にとって注意したいのは、土地取引の届出を担当者個人の判断だけに任せないことです。
企業では、不動産取得を担当する部門、契約を担当する部門、実際に土地を利用する事業部門などが異なる場合があります。
そのため、土地を取得したにもかかわらず、届出の要否を確認する担当部門へ情報が伝わらないということも考えられます。
今後、届出対象面積が引き下げられれば、従来は届出対象外だった規模の取引についても確認が必要になる可能性があります。
土地取得の情報を社内で集約し、届出の要否を確実に確認する仕組みを整える重要性が高まるでしょう。
用途変更についても管理が必要になる可能性
さらに、取得時の届出だけを管理していればよいとは限りません。
利用目的変更時の再届出が制度化されれば、土地を取得した後の用途変更についても社内で把握する必要があります。
取得時には適切に届出を行っていても、その後の利用目的変更について必要な手続きを行わなければ、新たな届出漏れが生じる可能性があります。
土地取得時のチェックと保有期間中のチェックを分けず、一連の不動産管理として考える必要が出てくるでしょう。
具体的な調査や監督方法はこれから
もっとも、今回の資料は提言段階です。
登記情報との照合をどのように行うのか、どのような場合に現地調査を実施するのか、無届を把握した後にどのような行政対応を行うのかなど、具体的な手続きは資料からは分かりません。
また、国、都道府県、市町村の具体的な役割分担についても今後の検討事項です。
国土交通省は提言を受け、国土利用計画法など関連法の見直しも視野に入れて具体的な制度や施策を検討するとされています。
したがって、今後は法律の改正だけではなく、実際の調査や行政手続きがどのように設計されるのかにも注目する必要があります。
結論
今回の提言では、土地取引について必要な届出が行われるのを待つだけではなく、登記情報との照合によって無届事案を把握し、現地調査に入るなど、対応を強化する方向性が示されています。
さらに、届出対象面積の引下げ、対象面積未満の土地取引情報の把握、利用目的変更時の再届出、不適切な土地利用への指導監督まで、一連の仕組みとして検討されています。
企業にとっては、土地取得時に届出が必要かを確実に確認するとともに、その後の用途変更まで継続的に管理することが重要になる可能性があります。
土地行政は「届出があった土地を把握する」仕組みから、「必要な情報を照合し、現場を確認し、必要に応じて監督する」仕組みへと変化する可能性があります。
今後の制度改正では、無届事案をどのように発見し、どのような行政対応につなげるのかが重要なポイントになるでしょう。
参考
企業実務 2026年10月号 土地の取得・利用に関する規制の見直しを求める提言がまとめられる