棚卸資産の評価損と税効果会計とは何か 商品価値を下げても税務で損金にならない場合がある理由編

会計
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会社が保有する商品や製品、原材料などは、決算時に棚卸資産として貸借対照表に計上されます。

しかし、商品が売れ残ったり、価格が大きく下落したりすると、当初の取得価額のまま資産として計上することが適切ではなくなる場合があります。

そこで会計上、棚卸資産の価値を引き下げて評価損を計上することがあります。

ところが、会計上で評価損を計上したからといって、税務でも同じ金額がすぐに損金になるとは限りません。

今回の参考記事では、税効果会計について、会計上と税務上の資産または負債の金額に一時差異がある場合、その差異に関係する法人税等を適切な会計期間に配分する手続きと説明されています。 9e099b3c-c74b-430b-a3b4-371a250…

棚卸資産の評価損も、この「会計と税務のタイミングの違い」という考え方から理解することができます。

棚卸資産の評価損とは何か

棚卸資産とは、会社が販売するために保有している商品や製品、製造に使用する原材料などです。

たとえば小売業であれば店舗や倉庫にある商品、製造業であれば完成した製品や仕掛品、原材料などが棚卸資産になります。

通常、商品を100万円で仕入れれば、販売されるまでは100万円の棚卸資産として計上されます。

しかし、その商品を100万円で仕入れたからといって、いつまでも100万円の価値があるとは限りません。

流行の変化によって売れなくなったり、市場価格が下落したりすることがあります。

このような場合、一定の会計上のルールに従って棚卸資産の帳簿価額を引き下げ、その減少額を費用として処理することがあります。

これが棚卸資産の評価損です。

会計で評価損になっても税務では同じとは限らない

ここで重要になるのが、会計と税務の違いです。

会計上、棚卸資産の価値が低下したとして評価損を計上しても、その金額が税務上そのまま損金として認められるとは限りません。

税務には税務上の評価方法や損金算入のルールがあるためです。

その結果、

会計では評価損を費用にした

税務ではその評価損が損金になっていない

という状態が生じる場合があります。

参考記事でも、会計上費用として計上する時期と税務上損金として認められる時期が異なる場合があり、その時期の違いによる税金への影響を考える必要があると説明されています。 9e099b3c-c74b-430b-a3b4-371a250…

会計と税務で棚卸資産の金額が違ってくる

簡単な例で考えてみます。

1000万円で仕入れた商品について、会計上300万円の評価損を計上したとします。

すると、会計上の棚卸資産の帳簿価額は700万円になります。

一方、その300万円の評価損が税務上損金として認められず、税務上の棚卸資産の金額が1000万円のままだとします。

すると、

会計上の帳簿価額は700万円

税務上の金額は1000万円

となります。

両者の間には300万円の差が生じます。

この差が将来解消する性質のものであれば、税効果会計の対象となる一時差異になります。

商品を将来販売すると差が解消する

では、この300万円の差はどうなるのでしょうか。

棚卸資産は通常、将来販売されます。

販売されたときには、税務上の棚卸資産の金額も売上原価などを通じて損金に反映されていきます。

つまり、会計では評価損として先に費用を認識したのに対して、税務では将来になってから課税所得を減らす効果が現れる場合があります。

現在は損金にならないものの、将来は課税所得を減少させる方向に働くわけです。

これは将来減算一時差異の基本的な考え方です。

参考記事の貸倒引当金でも、税務上すぐに損金にならない金額が将来損金として認められることで、将来の税負担が軽くなるケースが紹介されています。 9e099b3c-c74b-430b-a3b4-371a250…

繰延税金資産を計上する仕組み

先ほどの300万円の一時差異について考えてみます。

仮に税効果を計算する税率を30パーセントとすると、

300万円掛ける30パーセント

で90万円になります。

将来、この300万円が税務上の損金として反映されれば、その時点の課税所得が減少します。

そのため、一定の要件を満たす場合には、この90万円を将来の税負担を軽減する効果として繰延税金資産に計上します。

基本的な関係は、

繰延税金資産90万円

法人税等調整額90万円

となります。

参考記事の貸倒引当金の事例でも、貸倒引当金繰入限度超過額300千円に40パーセントの法定実効税率を掛けた120千円を繰延税金資産として計上しています。 9e099b3c-c74b-430b-a3b4-371a250…

対象が貸倒引当金から棚卸資産に変わっても、一時差異から将来の税金への影響を計算するという基本構造は同じです。

法人税等調整額で税金費用を調整する

棚卸資産の評価損を会計上計上すると、その事業年度の利益は減少します。

ところが、その評価損が税務上損金にならなければ、その事業年度の課税所得は会計上の利益ほど減少しません。

このままでは、会計上の利益と税金費用の対応関係が分かりにくくなります。

そこで税効果会計を適用し、将来の税負担軽減効果を繰延税金資産として認識します。

参考記事では、繰延税金資産を計上するときには法人税等調整額を貸方に計上して税金費用を減額すると説明されています。 9e099b3c-c74b-430b-a3b4-371a250…

法人税等調整額を使うことで、会計上の利益と税金費用を合理的に対応させているわけです。

評価損と値下げは同じではない

棚卸資産の評価損を考える際には、商品の販売価格を値下げすることと区別する必要があります。

たとえば1000円の商品を800円に値下げして販売することと、決算時に棚卸資産の帳簿価額そのものを引き下げることは同じではありません。

値下げは販売価格を変更する行為です。

一方、評価損は決算時点で棚卸資産として計上している金額を見直す会計処理です。

税効果会計で問題になるのは、会計上その帳簿価額を引き下げたにもかかわらず、税務上の金額が同じようには引き下げられない場合です。

この違いを押さえると、なぜ一時差異が生じるのか理解しやすくなります。

減損損失と並べると仕組みが分かりやすい

前回取り上げた固定資産の減損損失と、今回の棚卸資産の評価損には共通点があります。

どちらも、

資産の価値が低下する

会計上の帳簿価額を引き下げる

税務上は同じ時点で損金にならない場合がある

会計と税務の資産額に差が生じる

将来その差が解消する

という流れです。

参考記事では、税効果会計について、会計上と税務上の資産または負債の一時差異に係る法人税等を適切な会計期間に配分する仕組みと説明されています。 9e099b3c-c74b-430b-a3b4-371a250…

貸倒引当金や賞与引当金では引当金を中心に考えましたが、減損損失や棚卸資産評価損まで広げると、税効果会計がさまざまな決算項目に関係していることが分かります。

結論

棚卸資産の評価損とは、商品や製品などの価値が低下した場合に、一定の会計上のルールに従って帳簿価額を引き下げることで生じる損失です。

会計上で評価損を計上しても、税務上同じ金額が直ちに損金として認められるとは限りません。

そのため、会計上の棚卸資産の帳簿価額と税務上の金額に一時的な差が生じる場合があります。

その差が将来の商品販売などによって解消し、将来の課税所得を減らす方向に働く場合には、一定の要件のもとで繰延税金資産を認識します。

そして法人税等調整額を使って、将来の税負担軽減効果を適切な会計期間に配分します。

固定資産の減損損失と棚卸資産の評価損を並べて考えると、税効果会計では「会計上の資産額と税務上の資産額がなぜ違うのか」を確認することが、一時差異を理解する重要なポイントだと分かります。

参考

企業実務 2026年9月 なるほど納得勘定科目 会計上の利益と税金の費用を対応させるには

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