税効果会計では、貸倒引当金や賞与引当金、減損損失など、会計と税務で費用を認識する時期が異なる項目から繰延税金資産が生じることがあります。
その中でも少し分かりにくいのが、事業税です。
事業税は会社が負担する税金ですが、会計上で費用として認識する時期と、法人税の課税所得を計算するときに損金として扱われる時期にズレが生じることがあります。
そのため、決算で計上された未払事業税が税効果会計の対象となり、繰延税金資産につながることがあります。
参考記事では、税効果会計とは、企業会計上の資産または負債の額と課税所得計算上の資産または負債の額に一時差異がある場合、その差異に係る法人税等を適切な会計期間に配分する手続きだと説明されています。 9e099b3c-c74b-430b-a3b4-371a250…
未払事業税も、この会計と税務の時期の違いから理解することができます。
事業税とは何か
会社には利益などに応じてさまざまな税金が課されます。
代表的なものとして法人税、法人住民税、法人事業税があります。
このうち法人事業税は、都道府県に納める地方税です。
税金というと、すべて同じように法人税の計算上扱われるように思えるかもしれません。
しかし、税金の種類によって税務上の取り扱いは異なります。
法人税や法人住民税は、原則として法人税の所得計算上、損金になりません。
一方、法人事業税は、一定の時期に法人税の所得計算上の損金になります。
この違いが、未払事業税の税効果会計を理解する重要なポイントになります。
未払事業税とは何か
会社は決算を行うと、その事業年度の所得などを基礎として法人事業税を計算します。
しかし、決算日時点では、その税金をまだ実際に支払っていないことがあります。
そこで会計上は、その事業年度に対応する税金として費用を認識するとともに、まだ支払っていない金額を未払法人税等などの負債として計上します。
つまり、決算時点では、
会計上は税金費用を認識している
実際にはまだ納付していない
という状態になります。
さらに法人税の課税所得を計算する際には、この事業税が会計上費用になった時期と税務上損金になる時期が一致しないことがあります。
ここに税効果会計の対象となるズレが生じます。
事業税は翌期に損金になることがある
たとえば、3月決算の会社を考えてみます。
会社は3月期の所得をもとに事業税を計算し、決算でその税金を費用として認識します。
しかし、その事業税について法人税の所得計算上損金となる時期は、会計上費用として認識した時期とは異なることがあります。
そのため、
今期の会計では費用になっている
今期の税務ではまだ損金になっていない
翌期以降に税務上損金になる
という時間的なズレが生じます。
これは、これまで取り上げてきた賞与引当金などと似た構造です。
参考記事でも、会計上費用として計上する時期と税務上損金として認められる時期が異なる場合があり、その時期の違いによる税金への影響を適切な事業年度に配分することが説明されています。 9e099b3c-c74b-430b-a3b4-371a250…
将来損金になれば課税所得が減る
未払事業税が現在の法人税の所得計算上損金にならず、将来損金になるのであれば、その将来の事業年度では課税所得を減らす方向に働きます。
つまり、将来支払う法人税等を減少させる効果があります。
これが将来減算一時差異の考え方です。
たとえば、税効果会計の対象となる未払事業税が1000万円あり、税効果を計算する税率を30パーセントと仮定します。
単純化すると、
1000万円掛ける30パーセント
で300万円となります。
将来1000万円が損金になることで税負担を300万円軽減できると見込まれるのであれば、一定の要件のもとで、その税効果を繰延税金資産として認識するという考え方になります。
税金なのに資産が生まれるのはなぜか
未払事業税の税効果会計が分かりにくい理由の一つが、「税金から税金の資産が生まれる」という点です。
しかし、考え方を分解すると理解しやすくなります。
ポイントは、事業税そのものを資産として計上しているわけではないことです。
現在計上している事業税が将来の法人税の所得計算上損金になることによって、将来の課税所得が減ります。
その結果として生じる将来の税負担軽減効果を繰延税金資産として認識しているのです。
参考記事でも、将来損金として認められることによって税負担が軽くなると見込まれる金額を、繰延税金資産として計上する考え方が示されています。 9e099b3c-c74b-430b-a3b4-371a250…
法人税等調整額が相手勘定になる
未払事業税から繰延税金資産を認識する場合にも、法人税等調整額が関係します。
参考記事では、繰延税金資産を計上するときには法人税等調整額を貸方に計上し、税金費用を減額すると説明されています。 9e099b3c-c74b-430b-a3b4-371a250…
たとえば300万円の繰延税金資産を認識すると仮定すれば、基本的な関係は、
繰延税金資産300万円
法人税等調整額300万円
となります。
これによって、現在の会計上の利益と税金費用を合理的に対応させます。
法人税等調整額は、実際に税務署や地方自治体へ納付する税額を直接変更する勘定科目ではありません。
あくまで税効果会計によって各会計期間の税金費用を調整するためのものです。
翌期に損金になると一時差異が解消する
その後、事業税が税務上損金になる時期を迎えると、それまで存在していた会計と税務のタイミングのズレが解消します。
それに伴って、対応する繰延税金資産も取り崩されます。
参考記事では、繰延税金資産を取り崩すときには法人税等調整額を借方に計上し、税金費用を増額すると説明されています。 9e099b3c-c74b-430b-a3b4-371a250…
つまり、
今期に会計上の費用を認識する
税務上の損金算入は後になる
将来の税負担軽減効果を繰延税金資産として認識する
翌期以降に損金となって一時差異が解消する
繰延税金資産を取り崩す
という流れになります。
法人税と事業税の違いが重要になる
未払事業税の税効果会計を理解すると、税金はすべて同じように扱われるわけではないことも分かります。
会社が負担する法人税等の中には、法人税の所得計算上損金にならないものと、損金になるものがあります。
法人税や法人住民税と事業税では、この点に違いがあります。
したがって、決算書に税金費用が計上されているからといって、そのすべてについて同じ税効果会計が行われるわけではありません。
その税金が法人税の課税所得計算上どのように扱われるのかまで確認する必要があります。
税効果会計は、会計上の費用だけを見るのではなく、税務上いつ損金になるのかを合わせて考えることで理解しやすくなります。
結論
未払事業税とは、決算で費用として認識されているものの、まだ支払われていない事業税などを指します。
事業税は、会計上費用として認識する時期と法人税の課税所得計算上損金になる時期が異なることがあります。
そのため、現在の会計では費用になっているのに、税務では将来になってから損金になるという時間的なズレが生じます。
将来損金になることで課税所得が減少し、税負担を軽減する効果が見込まれる場合には、一定の要件のもとで繰延税金資産を認識します。
そして法人税等調整額を使って、その税金への影響を適切な会計期間に配分します。
未払事業税の税効果会計は一見複雑ですが、「現在は損金にならないものが将来損金になる」という点では、参考記事で取り上げられた貸倒引当金と基本的な考え方は共通しています。
参考
企業実務 2026年9月 なるほど納得勘定科目 会計上の利益と税金の費用を対応させるには