会社では年度の初めに売上や利益の予算を立てます。
しかし、経営者が知りたいのは「今まで予算を達成できたか」だけではありません。
このまま進んだら年度末の売上や利益はいくらになるのか。
年間予算を達成できそうなのか。
達成できないのであれば、どのくらい不足するのか。
こうした将来の見通しも重要です。
そこで、年度途中までに確定した実績と、残り期間の予測を組み合わせて年度末の売上や利益を見積もります。
これが着地見込みです。
なお、参考記事は着地見込みそのものを直接説明したものではなく、予実管理における差異分析と次の行動への落とし込みを中心に説明しています。
ここでは、その考え方をもとに、着地見込みとのつながりを整理します。
着地見込みの意味
着地見込みとは、年度が終わる前の段階で、最終的な売上や利益がどの程度になりそうなのかを予測する考え方です。
たとえば、年間売上予算が1億2000万円の会社があるとします。
半年が経過した時点で売上実績が5500万円だったとします。
年間予算を単純に12カ月で割れば、半年間では6000万円の売上が必要でした。
したがって、半年時点では500万円の未達です。
しかし、ここで重要なのは「500万円未達だった」という過去の確認だけではありません。
残り半年でどの程度の売上を見込めるのかを考えます。
残り半年で6500万円を売り上げられるのであれば、年間では1億2000万円となり、予算を達成できます。
一方、残り半年の売上が6000万円しか見込めないのであれば、年間売上は1億1500万円です。
年度末になる前に、500万円程度の予算未達が予想できます。
これが着地見込みを見る意味です。
予算との違い
予算と着地見込みは似ていますが、役割が違います。
予算は、年度開始前などに会社が設定した目標です。
年間売上1億2000万円、年間利益3000万円といった数字を設定します。
一方、着地見込みは、年度途中までの実績や現在の状況を踏まえて、実際にはどのくらいになりそうなのかを予測した数字です。
たとえば、
年間売上予算は1億2000万円
現在の着地見込みは1億1000万円
ということがあります。
この場合、目標そのものが1億1000万円になったという意味ではありません。
目標は1億2000万円ですが、現状のままでは1億1000万円程度になりそうだということです。
この違いを明確にしておくことが重要です。
実績と残り期間の予測
着地見込みを考えるときには、すでに確定した実績と、これから発生する数字を分けて考えます。
たとえば、4月から3月までを事業年度とする会社で、9月までの上半期が終了したとします。
上半期の売上実績が5500万円だったとします。
ここまでの5500万円は、すでに発生した実績です。
次に10月から3月までの売上を予測します。
受注済みの商品があります。
現在商談中の案件もあります。
季節による売上変動もあります。
新商品の発売予定もあるかもしれません。
こうした情報を使って残り期間の売上を予測します。
仮に下半期の売上を6200万円と予測すれば、年間の着地見込みは1億1700万円となります。
このように、確定した実績と将来の予測を組み合わせて年度末の姿を考えます。
単純に実績を倍にすればよいとは限らない
半年間で5500万円売り上げたから、年間ではその2倍の1億1000万円になると考える方法もあります。
しかし、実際の会社の売上は毎月均等に発生するとは限りません。
夏に売上が集中する会社もあります。
年度末に売上が増える会社もあります。
大型案件の納品予定によって売上が大きく変わる会社もあります。
そのため、着地見込みでは単純に過去の実績を延長するだけでなく、残り期間に何が起こるのかを見ることが重要です。
特に大きな商談や受注がある会社では、一つの案件によって年間売上の着地が大きく変わることがあります。
将来について現在分かっている情報をできるだけ反映する必要があります。
差異の原因を着地見込みへ反映する
ここで重要になるのが予実管理です。
参考記事では、売上未達が発生した場合、単に未達金額を見るのではなく、その原因を掘り下げることが重要だと説明しています。
たとえば売上が予算を下回った原因が、主力製品の販売数量減少だったとします。
さらに調べると、主要得意先への訪問回数が半分に減っていたことが分かりました。
この原因が一時的なものなのか、今後も続くのかによって着地見込みは変わります。
訪問回数をすぐに戻せるのであれば、販売数量が回復する可能性があります。
一方、主要商品の需要そのものが減っているのであれば、今後も売上未達が続く可能性があります。
過去の差異を分析することは、将来の数字を予測するうえでも重要なのです。
利益の着地見込みも重要になる
着地見込みは売上だけではありません。
利益についても考える必要があります。
たとえば売上は年間予算を達成できそうでも、原材料価格が予算作成時より大幅に上昇している場合があります。
この場合、売上予算を達成しても利益予算を達成できない可能性があります。
反対に、売上は予算を多少下回っていても、原価や経費が予算より少なければ、利益は予算に近づく場合があります。
そのため、経営判断では売上の着地だけでなく、利益の着地も確認することが重要です。
売上はいくらになりそうなのか。
原価はいくらになりそうなのか。
経費はいくらになりそうなのか。
最終的に利益はいくら残りそうなのか。
こうした数字を組み合わせて年度末の姿を予測します。
経営判断に早く使える理由
着地見込みの大きな意味は、問題を早く発見できることです。
年間利益予算3000万円の会社があるとします。
年度の半分が終わった段階で、最新の着地見込みを作ったところ、年間利益が2000万円程度になりそうだと分かったとします。
1000万円の不足です。
年度末になってから1000万円不足していたと分かっても、その年度について打てる対策はほとんど残されていません。
しかし、半年を残した段階で分かれば対応する時間があります。
営業活動を見直すこともできます。
価格を見直すこともできます。
仕入条件や経費を見直せる可能性もあります。
設備投資の実施時期を再検討する場合もあります。
着地見込みは、未来を正確に当てることだけが目的ではありません。
経営者が早く判断するための情報として使うことに意味があります。
着地見込みを出して終わりではない
着地見込みを作成すると、「年間売上は1億1000万円になりそうです」といった数字が出てきます。
しかし、その数字を確認するだけでは業績は変わりません。
参考記事では、差異の原因までたどり着いても翌月の行動が変わらなければ未来の数字は変わらず、分析で終わる予実管理は反省会にしかならないという考え方が示されています。
着地見込みについても同じです。
年間売上が1000万円不足しそうだと分かったのであれば、なぜ不足するのかを考えます。
そして、自分たちで変えられる原因について具体的な行動を決めます。
何をするのか。
誰がするのか。
いつまでにするのか。
さらに翌月、その行動によって着地見込みが改善したのかを確認します。
予測した数字を行動につなげることが重要なのです。
着地見込みは毎月変わってもよい
着地見込みは、年度途中で一度作ったら固定するものではありません。
新しい実績が出れば、将来の見通しも変化します。
10月時点では年間売上1億1000万円と予測していたものの、11月に大型案件を受注したことで1億1500万円へ改善することがあります。
反対に、主要顧客からの受注が減少し、1億500万円へ下がることもあります。
重要なのは、最初に作った着地見込みを当てることではありません。
最新の情報を反映しながら、年度末の姿を継続的に見直すことです。
そして見通しが変化したら、その原因を確認して次の経営判断につなげます。
結論
着地見込みとは、年度末を待たずに、すでに確定した実績と残り期間の予測を組み合わせて年間の売上や利益を見積もる考え方です。
予算が会社の目標であるのに対して、着地見込みは現時点で実際にどの程度の数字になりそうなのかを見るものです。
そのため、予算と着地見込みが違うことは珍しくありません。
重要なのは、その差を早い段階で把握することです。
年度末になって予算未達を知るのではなく、途中で未達の可能性を把握できれば、残された期間に対策を打つことができます。
そして着地見込みを作るためには、過去の予算差異について原因まで分析することが重要です。
その原因が今後も続くのか。
改善によって解消できるのか。
それによって将来の数字は変わります。
着地見込みとは、年度末の数字を当てるだけのものではありません。
未来の数字を早く見えるようにし、未来の数字を変えるための行動を早く始めるための経営管理なのです。
参考
企業実務 2026年9月号 猫と学ぶ経理力の磨き方 第9話 頑張りますで終わらせたら予実管理ちゃうで