非上場会社では、多くの株式が譲渡制限株式となっています。そのため、株主が第三者へ株式を譲渡しようとする場合には、会社へ「株式譲渡承認請求」を行う必要があります。
この承認請求は単なる事務手続ではありません。会社法では厳格な期限が定められており、対応を誤ると会社の意思に反して譲渡を承認したものとみなされる場合があります。そのため、経営者や総務担当者は制度の流れを正しく理解しておくことが重要です。資料でも、譲渡承認請求では期限管理が極めて重要であると説明されています。
株式譲渡承認請求の流れ
譲渡制限株式を譲渡しようとする株主や取得者は、会社に対して譲渡承認請求を行います。
請求を受けた会社は、株式の譲渡を承認するか、不承認とするかを判断し、その結果を請求者へ通知します。承認された場合には譲渡手続が進みます。
一方、不承認とした場合には、それで手続が終わるわけではありません。会社または会社が指定する買取人が株式を買い取る制度へ進む可能性があります。
このように、譲渡承認請求制度は、会社の利益と株主の利益を調整する仕組みとして設けられています。
通知期限を守ることが最も重要
譲渡承認請求で特に重要なのが通知期限です。
会社は請求の日から2週間以内に承認または不承認を通知しなければなりません。この期限を過ぎると、原則として会社が譲渡を承認したものとみなされます。
さらに、不承認とした場合にも追加の期限があります。
会社自身が株式を買い取る場合には、不承認通知の日から40日以内に買い取る旨を通知する必要があります。
一方、指定買取人が買い取る場合には、不承認通知の日から10日以内に通知しなければなりません。
これらの期限を管理できなければ、会社の想定どおりに対応できなくなる可能性があります。
実務で最初に確認すべき事項
譲渡承認請求書が届いた場合は、通常の郵便物として処理してはいけません。
資料では、まず次の事項を直ちに確認することが重要であるとしています。
- 請求書の受領日
- 請求者が株主か取得者か
- 対象となる株式数
- 譲受人の属性
- 定款で定められた承認機関
- 株主名簿の内容
これらを確認したうえで、担当者だけで判断せず、速やかに担当取締役や代表取締役へ報告することが求められます。
社内体制の整備も重要
譲渡承認請求は、いつ発生するか分かりません。
そのため、定款で承認機関を確認しておくことや、請求書が届いた際の社内連絡体制をあらかじめ整備しておくことが重要です。
特に中小企業では、担当者が制度を十分理解していないために期限を過ぎてしまうケースも考えられます。期限管理を含めた実務フローを事前に決めておくことで、不要な法的リスクを防ぐことができます。
結論
株式譲渡承認請求は、非上場会社の譲渡制限株式における重要な制度です。会社は承認するか不承認とするかを判断できますが、その判断には厳格な通知期限が設けられています。
請求書を受け取った際は、受領日や対象株式、譲受人、定款の内容などを速やかに確認し、経営陣と情報を共有することが不可欠です。日頃から社内の対応体制を整備しておくことが、事業承継やM&Aの場面で会社を守ることにつながります。
参考
- 『企業実務』2026年8月号付録「事業承継・M&A・紛争リスクを見据えた中小企業の株式実務ハンドブック」