労務担当者はなぜ経営を学ぶ必要があるのか 会社の目標を知らなければ人事施策を提案できない理由編

経営

労務担当者には、労働関係の法律や社会保険制度などについて正確な知識が求められます。

しかし、これからの労務担当者には、それだけでは十分ではありません。

参考記事では、経営判断に必要な情報は、そのときどきの会社が置かれている状況によって異なるため、労務担当者も会社が現在どのような状態にあり、経営者がどこを目指しているのかを知っておく必要があるという考え方が示されています。

経営を知らずに労務だけを見るのではなく、会社の事業戦略を理解したうえで人に関する問題を考える。

それによって、労務は管理業務から経営判断を支える仕事へ変わっていきます。

労務だけを知っていることの限界

労務担当者にとって、法律を正しく理解することは基本です。

残業時間の上限を管理する。

必要な手続きを行う。

会社が守るべきルールを経営者や社員へ伝える。

こうした役割は欠かせません。

しかし、参考記事では、労務が経営者に対して、やってはいけないことを伝えるだけの存在になってしまう問題が取り上げられています。

あれはできません。

これは法律上問題があります。

こうした説明だけが続けば、経営者から見た労務は会社の行動を制限する部門に見えてしまいます。

必要なのは、ルールを説明したうえで、会社が目指していることを実現するために人の面から何が必要なのかを考えることです。

会社がどこを目指しているのかを知る

同じ労務問題でも、会社の経営方針によって意味が変わります。

たとえば、ある部署で残業時間が増えているとします。

事業を縮小する予定の会社と、その部署を今後大きく成長させようとしている会社では、必要な対応は同じとは限りません。

成長させる事業であれば、人材を追加する必要があるかもしれません。

必要な能力を持つ社員を育成することも考えられます。

外部から人材を採用する方法もあります。

だからこそ労務担当者は、数字を見るだけではなく、会社がその先に何をしようとしているのかを理解する必要があります。

新規事業は人材戦略でもある

参考記事では、新しいジャンルへ挑戦するときの例が示されています。

新しい事業に必要な能力を持つ人が社内にいなければ、何らかの方法でその能力を確保しなければなりません。

外部から即戦力となる人材を採用するのか。

社内の人材に新しい能力を身につけてもらうのか。

外部の企業と組んで必要なノウハウを取り入れるのか。

参考記事では、こうした選択肢について、すべて経営の話であり、そのほとんどが人の話でもあるという趣旨が示されています。

新規事業という経営戦略と、人材という労務の問題は切り離せないのです。

必要な人材を考えるのも労務の役割になる

経営戦略を理解すると、労務担当者が見るべき範囲も広がります。

現在の社員を適切に管理するだけではなく、

これからどのような能力が必要になるのか。

社内にその能力を持った人がいるのか。

育成によって対応できるのか。

外部から人材を確保する必要があるのか。

といったことを考えられるようになります。

人材を必要になってから探すのではなく、経営計画から逆算して準備するという考え方です。

労務担当者が経営を理解する意味は、ここにあります。

組織の状態も経営戦略に影響する

会社が何をしたいのかを理解するだけでなく、それを現在の組織で実行できるのかを考えることも必要です。

新規事業へ進出したい。

しかし既存社員の残業時間が増えている。

人員にも余裕がない。

この状態で新しい仕事を追加すれば、組織がさらに疲弊する可能性があります。

参考記事では、組織が思い切りアクセルを踏み込める状態なのか、それとも疲弊していて新規事業どころではないのかによって、打つべき戦略が変わるという考え方が示されています。

労務担当者は、こうした組織の状態を経営者へ伝えられる立場にあります。

労務データを経営の言葉へ翻訳する

そのためには、残業時間などの数字をそのまま報告するだけでは十分ではありません。

残業時間が増えています。

という情報を、

現在の組織には新しい仕事を引き受ける余力が小さくなっています。

という情報へ変える必要があります。

参考記事では、残業時間などを組織がどれだけアクセルを踏める状態かという形に翻訳することで、経営と労務が同じ土俵に立てるという考え方が示されています。

労務担当者には、専門的な情報を経営判断に使える情報へ翻訳する役割が求められるのです。

経営者との会話を増やす

経営を理解するためには、経営者と労務担当者が会話することも重要です。

労務担当者が経営者の考えを知らなければ、どの情報が経営判断に必要なのかも分かりません。

参考記事では、経営に必要な情報を伝えるために何が必要なのかを経営者自身も知りたいという姿勢を示し、経営陣と担当者が擦り合わせていくことの重要性が語られています。

労務担当者が一方的に制度を説明する関係から、会社をどうしていくのかを一緒に考える関係へ変えていく必要があります。

経営を学ぶと提案が変わる

経営を理解していない労務担当者であれば、

残業時間を減らしてください。

人員を増やしてください。

という提案で終わるかもしれません。

しかし、経営を理解すれば、

今後この事業を拡大するのであれば人員を補充する必要があります。

新しい事業を始める前に必要な能力を持つ人材を育成する必要があります。

現在の組織は疲弊しているため、まず体力を回復させる必要があります。

といった形で提案できます。

同じ労務情報でも、会社の経営方針と結びつけることで提案の意味が変わります。

これが経営判断に資する労務です。

結論

労務担当者に専門知識が必要であることは変わりません。

しかし、法律や制度だけを知っていても、会社にとって最適な人事労務を考えることは難しくなっています。

会社はいまどのような状態なのか。

経営者はどこを目指しているのか。

そのためにはどのような人材が必要なのか。

現在の組織にはそれを実行する余力があるのか。

こうした経営の視点を持つことで、労務担当者は単にルールを説明する存在ではなくなります。

経営者が進みたい方向を理解し、人と組織の状態から、その経営戦略を実行できる方法を考える。

労務担当者が経営を学ぶことは、労務から離れることではありません。

むしろ労務を経営の中心へ近づけることなのです。

参考

企業実務 2026年9月号 経営を縛るのではなく経営判断に資する労務を目指せ

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