トークン化預金とCBDCは何が違うのか 銀行のお金と中央銀行のお金の違い編

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

金融のデジタル化が進むなかで、トークン化預金とCBDCという言葉を目にする機会が増えています。

どちらもデジタル技術を使ったお金なので、似た仕組みのように感じるかもしれません。

しかし、両者には根本的な違いがあります。

トークン化預金は民間銀行のお金です。

一方、CBDCは中央銀行のお金です。

この違いを理解すると、私たちが普段使っているお金が実は複数の種類に分かれていることも見えてきます。

CBDCとは何か

CBDCとは中央銀行デジタル通貨のことです。

中央銀行が発行するデジタル形式の通貨を意味します。

日本で考えれば、日本銀行が発行するデジタル円というイメージです。

現在、私たちが直接利用できる中央銀行のお金の代表例は紙幣です。

1万円札は日本銀行券であり、日本銀行が発行しています。

CBDCが導入されれば、中央銀行のお金をデジタルな形でも利用できる可能性があります。

銀行預金は中央銀行のお金ではない

銀行口座に100万円の残高があると、その100万円も日本円です。

しかし、日本銀行が直接私たちに100万円を預かっているわけではありません。

民間銀行に対する預金債権です。

例えばA銀行に100万円を預けている場合、預金者はA銀行に対して100万円を払い戻してもらえる権利を持っています。

つまり、銀行預金は民間銀行が提供しているお金です。

普段は現金も銀行預金も同じ1円として利用できるため、違いを意識することはほとんどありません。

しかし、金融システムの仕組みとしては発行主体が違います。

トークン化預金は銀行預金の延長

トークン化預金は、この民間銀行の預金をデジタル上のトークンとして扱えるようにしたものです。

例えばA銀行にある10万円の預金をトークン化して、ブロックチェーンなどの基盤上で移転できるようにします。

トークン化したからといって、中央銀行のお金になるわけではありません。

あくまでA銀行に対する預金債権です。

そのため、トークン化預金の信用力は基本的に発行する銀行と結びついています。

この点は普通預金と同じです。

CBDCは中央銀行の負債

一方、CBDCは中央銀行が直接発行します。

利用者から見れば、中央銀行に対する直接的な請求権という位置付けになります。

この違いは信用リスクを考えるうえで重要です。

民間銀行には経営破綻の可能性があります。

そのため銀行預金には預金保険制度など、預金者を保護する仕組みがあります。

一方、中央銀行が自国通貨建てで発行するお金は、民間銀行の預金とは信用構造が異なります。

つまり、同じデジタル円でも誰が発行しているかによって金融上の性質が違うのです。

なぜ銀行のお金と中央銀行のお金があるのか

現在の金融システムでは、民間銀行と中央銀行がそれぞれ異なる役割を担っています。

私たち個人や企業は、主に民間銀行の預金を利用しています。

給与振込、公共料金、クレジットカードの引き落とし、企業間決済など、多くの経済活動は銀行預金を使って行われています。

一方、銀行同士の最終的な決済では中央銀行のお金が重要になります。

日本の銀行は日本銀行に当座預金口座を持っています。

銀行間の資金の受け渡しは、この中央銀行マネーを使って最終的に決済されます。

つまり、一般の利用者と銀行の世界では民間銀行のお金が使われ、そのさらに奥では中央銀行のお金が使われています。

CBDCが普及すると銀行は不要になるのか

CBDCの議論でよく出てくるのが、中央銀行がデジタル通貨を発行すれば銀行預金が不要になるのではないかという疑問です。

理論的には、個人や企業が大量の資金をCBDCとして保有するようになれば、銀行預金から資金が流出する可能性があります。

銀行は預金を集め、その資金などを使って企業や個人に融資しています。

預金が大きく減れば、銀行の資金調達にも影響します。

そのためCBDCを導入する場合には、保有額に一定の制限を設けるなど、銀行システムへの影響を抑える仕組みも重要な論点になります。

CBDCは単なる電子マネーの導入ではなく、金融システム全体に関係する問題なのです。

トークン化預金なら銀行の役割を維持できる

トークン化預金には、現在の銀行制度を維持しながらデジタル化できるという特徴があります。

利用者のお金は引き続き銀行預金です。

銀行は預金を受け入れ、企業や個人への融資などを行います。

そのうえで、預金を動かす部分をブロックチェーンなどに対応させます。

つまり、銀行という仕組みを大きく変えずに、24時間365日の送金や国際決済の高速化を実現しようとする方法です。

世界の大手銀行がトークン化預金に力を入れる理由の1つもここにあります。

中銀当座預金トークンとも違う

さらに注意したいのが、プロジェクトアゴラなどで検討されている中銀当座預金トークンとの違いです。

中銀当座預金トークンも中央銀行のお金ですが、一般の個人が利用するCBDCとは目的が違います。

中銀当座預金は主に銀行など金融機関が中央銀行に持っている預金です。

これをトークン化することで、銀行間の最終決済をデジタル化しようとしています。

一般の利用者が使うCBDCと、金融機関が使う中銀当座預金トークンは分けて考える必要があります。

将来は複数のデジタルマネーが共存する可能性

将来のお金がCBDCだけになるとは限りません。

トークン化預金、CBDC、ステーブルコインなど、複数のデジタルマネーが共存する可能性があります。

日常の銀行取引ではトークン化預金を利用し、特定の決済ではCBDCを利用するという形も考えられます。

国際取引ではステーブルコインが利用される場面もあるかもしれません。

重要になるのは、それぞれのデジタルマネーが安全に交換できることです。

デジタルマネーが増えるほど、相互接続の仕組みが金融インフラの重要な役割になっていきます。

結論

トークン化預金とCBDCの最大の違いは、誰が発行するお金なのかという点です。

トークン化預金は民間銀行が発行する銀行預金をデジタル化したものです。

CBDCは中央銀行が発行するデジタル通貨です。

同じ1万円として利用できたとしても、トークン化預金は民間銀行に対する債権であり、CBDCは中央銀行のお金という違いがあります。

金融のデジタル化を理解するときには、ブロックチェーンを使っているかどうかだけを見るのでは十分ではありません。

そのお金を誰が発行しているのかを見ることが重要です。

将来はトークン化預金、CBDC、ステーブルコインなど複数のデジタルマネーが存在し、それらを安全につなぐ金融インフラが重要になる可能性があります。

お金の形がデジタルへ変わっても、その裏側にある信用を誰が支えているのかという基本は変わらないのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月15日 朝刊 トークン化預金、国際送金即時に

タイトルとURLをコピーしました