2026年の基準地価では、東京都の商業地が前年比11.4%上昇しました。
前年の11.2%上昇からさらに伸びが加速し、5年連続の上昇です。
全国47都道府県の商業地のうち、2桁の上昇率となったのは東京都だけでした。
なぜ東京の商業地はこれほど大きく値上がりしているのでしょうか。
重要な理由の1つが、オフィス市場の需給です。
東京都心ではオフィスの空室率が大きく低下し、それに伴って賃料が上昇しています。
賃料が上がれば不動産から得られる収益が増えます。その結果、不動産そのものの価値が高まり、土地価格を押し上げるという流れが生まれます。
東京の商業地は11.4%上昇
2026年の東京都の商業地は前年比11.4%上昇しました。
前年の上昇率は11.2%だったため、高い上昇率を維持しながらさらに加速しています。
東京23区を見ると、商業地の上昇率が2桁となった区は19区に達しました。
一部の都心部だけで土地価格が上昇しているわけではなく、地価上昇が広い範囲に及んでいることが分かります。
東京都の商業地の1平方メートルあたり平均価格は300万円を超えました。
これはバブル期の1993年以来、33年ぶりの高い水準です。
現在の東京の地価を支えている大きな要因が、オフィス需要の強さです。
オフィス需要が地価を支えている
新型コロナウイルス禍では在宅勤務が急速に普及しました。
そのため一時期は、企業がこれまでのような大規模オフィスを持つ必要がなくなるのではないかという見方もありました。
ところが、その後は企業の出社回帰が進んでいます。
さらに企業が立地条件や設備の良いオフィスへ移転する動きもあり、東京都心の優良オフィスに対する需要は底堅くなっています。
企業が借りたいオフィスが増える一方、利用できるオフィスが少なくなれば空室率は低下します。
この空室率が現在の東京の不動産市場を理解する重要な数字になっています。
空室率とは何か
空室率とは、利用可能なオフィスのうち、借り手が入っていない面積がどの程度あるのかを示す数字です。
例えば100のオフィススペースがあり、そのうち5が空いていれば、単純化すると空室率は5%となります。
空室率が高ければ、借り手に対して貸し手が多い状態になります。
オーナーは入居者を確保するため、賃料を下げたり、条件を良くしたりする必要が出てきます。
反対に空室率が低くなれば、借りたい企業に対して空いているオフィスが少ない状態になります。
この場合は貸し手側の交渉力が強くなります。
つまり空室率は、オフィス市場で借り手と貸し手のどちらが有利なのかを見る指標でもあります。
都心5区の空室率は0.8%
不動産サービス大手のJLLによると、千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区の都心5区にある大規模オフィスの平均空室率は、2026年6月末時点で0.8%でした。
一般的に需給が均衡している目安とされる5%を大幅に下回っています。
100のオフィススペースに対して1にも満たない程度しか空いていないと考えれば、非常に空室が少ない状態であることが分かります。
企業が新しいオフィスを探しても、希望する場所や広さの物件を簡単には見つけられません。
こうなるとオフィスオーナーは、以前より高い賃料を提示しやすくなります。
空室率の低下が賃料上昇へつながるわけです。
オフィス賃料は16.4%上昇
実際に東京のオフィス賃料は上昇しています。
2026年6月末の平均賃料は、1坪あたり4万2109円でした。
前年同月末と比べて16.4%上昇しています。
商業地の地価だけが先に上昇しているのではなく、その土地の上に建っているオフィスから得られる賃料も上昇していることがポイントです。
不動産の価値を考える場合、その不動産からどれだけ収益を得られるのかが重要になります。
同じオフィスビルでも、毎月得られる賃料が増えれば、そのビルの収益力は高くなります。
収益力が高くなれば、その建物や土地を購入したい投資家が支払える価格も高くなります。
賃料上昇が土地価格へ波及する
例えば、あるオフィスビルから年間1億円の賃料収入を得られていたとします。
その地域のオフィス需要が強まり、年間の賃料収入が1億2000万円まで増えれば、不動産の収益力は高くなります。
もちろん実際の不動産価格は、管理費や修繕費、金利、将来の賃料予測など多くの条件によって決まります。
それでも、安定して得られる賃料が増えることは不動産価値を高める重要な材料です。
建物の価値が高くなれば、その建物を建てられる土地の価値も高くなります。
このためオフィス賃料の上昇は商業地の地価上昇につながります。
投資マネーも東京に集まる
東京の商業地を押し上げているのは、実際にオフィスを利用する企業だけではありません。
国内外の投資家も日本の不動産に資金を投入しています。
2025年の日本の不動産への投資額は7兆323億円となり、前年比41.3%増加しました。
2005年以降で過去最大です。
投資家にとって、空室が少なく賃料が上昇している東京の不動産は、安定した収益を期待できる投資対象になります。
国内投資家だけでなく海外投資家も購入を希望すれば、限られた優良物件を巡って競争が起きます。
その結果、不動産価格や土地価格がさらに上昇しやすくなります。
新しいオフィスを簡単に増やせない
需要が強いなら新しいオフィスを大量に建設すればよいようにも思えます。
しかし、東京都心では土地そのものが限られています。
さらに現在は建築費も高騰しています。
土地を取得し、高い建築費を負担して新しいオフィスビルを建設するには巨額の資金が必要です。
計画から完成までにも長い時間がかかります。
需要が増えたからといって、すぐに供給を増やすことはできません。
今後のオフィス供給ペースが低い状態で需要が続けば、空室率が低い状態も続きやすくなります。
供給を簡単に増やせないことも、東京の商業地を支える要因になります。
地価が上がり続けるとは限らない
ただし、空室率が低いから地価が永久に上昇するわけではありません。
不動産価格には金利も大きく影響します。
金利が上昇すれば、不動産を購入するための借入コストが増えます。
投資家が不動産に求める利回りが上昇すれば、賃料収入が増えていても不動産価格には下落圧力がかかることがあります。
建築費の高騰も開発計画を難しくします。
つまり今後の東京の地価を見る場合には、オフィス需要だけでなく、空室率、賃料、金利、建築費、供給量を一緒に見る必要があります。
結論
2026年の東京都の商業地は前年比11.4%上昇しました。
その背景にある重要な要因が、東京都心の強いオフィス需要です。
都心5区の大規模オフィスの平均空室率は2026年6月末時点で0.8%まで低下しています。
空いているオフィスが少なくなれば貸し手側の交渉力が強くなり、賃料を引き上げやすくなります。
実際、平均オフィス賃料は前年同月末から16.4%上昇しました。
賃料が上がれば不動産から得られる収益が増えます。収益力の高い不動産には国内外から投資資金が集まり、その土地に支払える価格も高くなります。
空室率の低下、賃料上昇、収益力向上、投資資金流入、地価上昇という流れです。
東京の商業地11.4%上昇という数字を見るときには、土地だけを見るのではなく、その土地の上に建つオフィスがどれだけ稼げるのかを見ることが重要です。
参考
日本経済新聞 2026年9月16日 朝刊 東京の商業地11.4%上昇
日本経済新聞 2026年9月16日 朝刊 基準地価、5年連続上昇 建築費高騰