会社が倒産すると、影響を受けるのはその会社だけとは限りません。
その会社から代金を受け取る予定だった取引先にも影響が及ぶことがあります。
売掛金を回収できなくなり、予定していた入金が突然なくなるからです。
その結果、取引先まで資金繰りに行き詰まり、倒産することがあります。
これが連鎖倒産です。
今回の参考記事では、決済サービス会社である全東信の破産によって、小規模な飲食店などに連鎖倒産が発生することが懸念されています。
キャッシュレス時代には、商品を販売する相手だけでなく、売上代金の入金に関係する会社の倒産まで自社の経営に影響する可能性があるのです。
連鎖倒産とは何か
連鎖倒産とは、ある会社の倒産をきっかけとして、その取引先など別の会社まで倒産することです。
会社同士はさまざまな取引関係でつながっています。
商品を販売する会社があります。
その商品を仕入れる会社があります。
代金の支払いを後払いにしている場合もあります。
そのため、一社が倒産すると、その会社と取引していた企業にも影響が広がることがあります。
たとえばA社がB社に1000万円の商品を販売し、翌月に代金を受け取る予定だったとします。
ところが入金前にB社が倒産しました。
A社は予定していた1000万円を受け取れなくなる可能性があります。
A社自身の事業が赤字でなくても、突然1000万円の入金がなくなれば資金繰りが大きく変わります。
これが別の会社の倒産へ波及していくのが連鎖倒産の怖さです。
売掛金を回収できなくなると何が起きるのか
企業間取引では、商品を販売した日に代金を受け取るとは限りません。
先に商品やサービスを提供し、後から代金を受け取る取引があります。
その場合、代金を受け取るまでの間は売掛金などとして残ります。
問題は、相手が倒産した場合です。
売上はすでに計上されていたとしても、予定していた現金が入ってこない可能性があります。
たとえば100万円の商品を販売して20万円の利益が出る予定だったとします。
ところが100万円の代金そのものを回収できなければ、単に20万円の利益がなくなるという話では済みません。
商品を仕入れるために支払ったお金などはすでに出ている可能性があります。
売掛金の回収不能は、利益だけではなく手元資金に直接影響するのです。
決済会社の倒産でも似た問題が起きる
今回の参考記事で特徴的なのは、一般的な取引先の倒産ではなく、決済に関係する会社の倒産が問題になっていることです。
全東信は、飲食店を中心とするクレジットカード加盟店に対して、カード会社に先行して売上代金を入金するサービスを提供していました。
加盟店から見れば、顧客に商品やサービスを提供した後、カード売上に関係する代金を受け取るまでの資金の流れに全東信が関係していたことになります。
ところが全東信は2026年7月に自己破産しました。
参考記事では、同社のサービスを利用していた加盟店の中に、最大で1カ月分の売上代金が入金されない店舗が出たとされています。
店舗そのものが経営破綻したわけではありません。
顧客が来なかったわけでもありません。
売上がなかったわけでもありません。
それでも、売上代金の入金に関係する会社が破産したことで、店舗の資金繰りに影響が及んだのです。
売上があるのに資金繰りが悪化する
この問題を理解するには、売上と現金を分けて考える必要があります。
たとえば飲食店が1カ月に1000万円を売り上げていたとします。
そのうち600万円がキャッシュレス決済だったとします。
売上高だけを見れば1000万円あります。
しかし、キャッシュレス売上600万円がまだ店舗へ入金されていなければ、店舗の手元に600万円の現金があるわけではありません。
その状態で決済に関係する会社に問題が起こり、予定していた入金が止まればどうなるでしょうか。
店舗には家賃の支払いがあります。
食材の仕入代金もあります。
従業員への給与もあります。
売上高が1000万円あったとしても、支払日に必要な現金がなければ資金繰りに行き詰まる可能性があります。
連鎖倒産は、赤字だから起こるとは限らないのです。
一社の入金停止が次の支払停止につながる
連鎖倒産では、お金の流れが次々と止まっていくことがあります。
単純化して考えてみます。
決済会社から飲食店へ500万円が入金される予定だったとします。
ところが決済会社が倒産し、その500万円が入ってきません。
飲食店はその500万円の一部を使って、食材会社へ200万円を支払う予定でした。
さらに従業員への給与や店舗の家賃も支払わなければなりません。
予定していた500万円が入らなければ、飲食店はこれらの支払いができなくなる可能性があります。
飲食店が食材会社への200万円を支払えなくなれば、今度は食材会社の資金繰りにも影響します。
一社の入金停止が別の会社の支払停止を生み、その支払停止がさらに別の会社へ影響する可能性があります。
これが連鎖という言葉の意味です。
小規模企業ほど影響を受けやすい理由
今回の参考記事では、特に小規模な飲食店への影響が懸念されています。
小規模企業の場合、突然の入金停止を吸収できるだけの余裕資金が十分ではないことがあります。
たとえば1カ月分の売上代金が入ってこなくても、十分な現預金を持つ会社なら一時的に立て替えることができるかもしれません。
銀行などから資金を調達できる場合もあります。
しかし、手元資金に余裕がなければ事情は変わります。
数日後の給与や仕入代金を、今月の売上代金の入金によって支払う予定だった会社では、一度の入金停止が大きな問題になります。
特に飲食店では、日々の営業を続けるために食材を仕入れる必要があります。
給与や家賃などの支払いも続きます。
売上代金の入金が止まったからといって、すべての支払いを同じように止められるわけではありません。
今回はもともと厳しい経営環境の中で起きた
参考記事が連鎖倒産を懸念している背景には、飲食店を取り巻く経営環境もあります。
記事では、物価高や人手不足によって小規模飲食店の経営環境が厳しくなっていることが指摘されています。
つまり、十分な経営余力がある状態で決済会社の破産が起きたとは限りません。
もともと厳しい経営環境に置かれているところへ、売上代金の未入金という新たな問題が加わるわけです。
さらに参考記事では、全東信のサービスを利用していた店舗がカード決済を利用できなくなることで、客離れを招く可能性についても触れています。
入金されないという問題だけではありません。
決済手段を失うことで、将来の売上にも影響する可能性があるのです。
連鎖倒産を防ぐには入金予定まで管理する
企業の資金繰りを考えるとき、売上高だけを管理するのでは十分ではありません。
重要なのは、いつ現金が入ってくるのかです。
1000万円の売上があっても、その1000万円がすべて入金済みなのか、来週入るのか、翌月に入るのかでは資金繰りが違います。
さらに、その入金がどの会社を経由しているのかも重要になります。
キャッシュレス化が進むほど、店舗の売上代金には決済に関係する複数の事業者が関わる可能性があります。
そのため、
いくら入金される予定なのか
いつ入金されるのか
どの事業者から入金されるのか
入金が止まった場合に何日営業を続けられるのか
といった視点が重要になります。
今回の参考記事は、キャッシュレス決済の便利さだけでなく、その裏側にある資金の流れを確認する必要性を示しているといえます。
結論
連鎖倒産とは、ある会社の倒産をきっかけとして、その取引先など別の会社まで資金繰りに行き詰まり、倒産することです。
典型的には、取引先が倒産して売掛金を回収できなくなり、自社も支払いができなくなることで発生します。
しかし、キャッシュレス時代には注意すべき相手が取引先だけとは限りません。
今回の参考記事では、決済サービス会社である全東信の破産によって、一部の加盟店で最大1カ月分の売上代金が入金されない事態が発生したとされています。
さらにカード決済を利用できなくなることで客離れを招き、資金繰りに支障を来す事業者が出る可能性も指摘されています。
店舗には売上があり、顧客も代金を支払っている。
それでも、売上代金の入金に関係する会社が倒産すれば、店舗の資金繰りに影響することがあります。
特に物価高や人手不足によって経営環境が厳しい小規模飲食店では、一時的な入金停止でも大きな負担になりかねません。
キャッシュレス化によって便利になるほど、自社のお金がどの会社を経由し、いつ現金として入ってくるのかを把握することが重要になります。
連鎖倒産を考えるうえでは、取引先だけでなく、自社の資金の流れを支えている事業者まで含めて見る必要があるのです。
参考
企業実務 2026年9月 キャッシュレス時代の盲点 懸念される小規模飲食店の連鎖倒産