SNSの健康情報をどう見極めるか 人生100年時代に欠かせないヘルスリテラシーと健康を守る情報判断力

人生100年時代
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SNSやインターネットの普及によって、私たちは健康に関する情報を簡単に入手できるようになりました。病気の予防、食生活、運動、睡眠、サプリメント、老化対策など、検索すれば膨大な情報が表示されます。

一方で、情報が増えたことが必ずしも健康につながっているわけではありません。科学的な根拠が不十分な健康法や、効果を誇張した健康食品の広告も広がっています。

特に注意したいのは、健康に良いと信じて実践した行動が、かえって健康を損なう可能性があることです。

人生100年時代には、健康寿命を延ばすための知識だけでなく、健康情報の信頼性を自分で判断する力が重要になります。

その中心となるのが「ヘルスリテラシー」です。

ヘルスリテラシーとは何か

ヘルスリテラシーとは、健康や医療に関する情報を入手し、理解し、評価したうえで、自分の健康に役立つ意思決定につなげる能力です。

単に健康知識が豊富であることとは異なります。

例えば、血圧を下げる効果があると紹介された食品について、その情報の根拠を調べ、自分の健康状態や服薬状況を踏まえて適切に判断することもヘルスリテラシーの一つです。

重要なのは、情報を知っていることよりも、情報を適切に使えることです。

健康情報には個人差があります。ある人に効果があった方法が、別の人にも同じように適しているとは限りません。

年齢、持病、服薬状況、生活習慣などによって、適切な健康管理の方法は変わります。

そのため、情報をそのまま受け入れるのではなく、自分に当てはまるかを判断する姿勢が必要です。

若い世代ほどSNSへの依存度が高い現実

健康情報の入手方法には世代間で大きな違いがあります。

第一三共ヘルスケアが2025年に実施した調査によると、心身の悩みについて調べた経験がある20代以下の38.4%が、SNSから健康情報を入手していました。

30〜50代では16.4%であり、若い世代の利用割合が大きく上回っています。

さらに、インフルエンサーの動画やSNS投稿を信頼する情報源として挙げた割合は、20代以下で17.4%、30〜50代で7.5%でした。

SNSは情報へのアクセスが容易で、動画などによって理解しやすい利点があります。

しかし、閲覧回数やフォロワー数の多さは、医学的な正確性を保証するものではありません。

人気のある発信者が紹介しているからといって、その健康法が科学的に検証されているとは限らないのです。

また、SNSでは利用者の関心に応じて似た情報が繰り返し表示されることがあります。

同じ主張を何度も目にすることで、十分な根拠がなくても正しい情報だと思い込む危険があります。

健康情報を見極める5つの確認事項

埼玉県立大学では、小学校高学年を対象として、健康情報の信頼性を判断する教育が行われています。

そこで紹介されているのが「い・な・か・も・ち」という合言葉です。

これは健康情報を評価するための5つの視点を整理したものです。

いつ発信された情報なのか

医療や健康に関する知識は、研究の進展によって変わります。古い情報が現在も正しいとは限りません。

何のために発信された情報なのか

健康情報の提供が目的なのか、商品販売や広告収入が目的なのかを確認する必要があります。

書いた人は誰なのか

医師や研究者などの専門家による情報なのか、専門性が確認できない発信者による情報なのかを見極めます。ただし、専門家の肩書きだけで正確性が保証されるわけではありません。

元となる根拠はあるのか

研究結果や公的機関の資料など、主張を裏付ける根拠が示されているかを確認します。

違う情報と比較したか

一つの情報だけで判断せず、複数の信頼できる情報源を確認することが重要です。

この5つの視点は、子どもだけでなく、大人や高齢者にとっても役立ちます。

健康食品とサプリメントに潜む危険性

健康情報の見極めが特に重要になるのが、健康食品やサプリメントです。

消費者庁は2026年9月、インターネット上の健康食品などについて、同年4〜6月に117事業者、126商品に改善指導を行ったことを公表しました。

対象には、妊活、冷え性、高血圧予防、アンチエイジングなどに関する効果を、十分な根拠なく表示していた商品が含まれています。

健康食品は、医薬品と同じように病気の治療や予防の効果が確認されているとは限りません。

また、天然成分や植物由来という表示があっても、安全性が保証されるわけではありません。

さらに、必要以上に摂取すると健康被害につながる栄養素もあります。

国民生活センターには、海外事業者から購入した鉄サプリメントを長期間摂取し、鉄過剰状態や肝機能障害が疑われる症状が生じたという相談が寄せられています。

鉄は人体に必要な栄養素ですが、多く摂取すればするほど健康になるわけではありません。

栄養素には必要量があり、種類によっては過剰摂取を避けるための上限量も設定されています。

サプリメントを利用する際には、成分、含有量、摂取目安、注意事項を確認し、必要に応じて医師や薬剤師などに相談することが大切です。

医学的な根拠と個人の体験談の違い

SNSで広がりやすい健康情報の一つが、個人の成功体験です。

特定の食品を食べたら体調が改善した、ある運動を続けたら病気が治ったといった体験談は、具体的で印象に残りやすい特徴があります。

しかし、個人の体験だけでは、その方法に効果があると判断できません。

体調の改善には、生活習慣の変化、自然な回復、他の治療など、複数の要因が関係している可能性があります。

医学的な効果を判断するためには、適切に設計された研究によって、効果と安全性を検証する必要があります。

研究結果についても、対象人数、研究方法、他の研究との整合性などを確認することが重要です。

特に「誰にでも効く」「必ず改善する」「副作用がない」といった断定的な表現には注意が必要です。

健康や医療の分野では、不確実性を適切に説明している情報ほど、慎重に検討されている場合があります。

高齢者にとっても重要な情報判断力

ヘルスリテラシーは、若い世代だけの課題ではありません。

人生100年時代には、高齢者が自分の健康を管理する期間が長くなります。

血圧、血糖値、脂質、骨密度、認知機能など、年齢とともに関心が高まる健康課題も増えていきます。

こうした不安に対して、健康食品や高額な健康サービスが魅力的に見えることがあります。

しかし、健康への不安が大きいときほど、効果を強調する情報を信じやすくなる可能性があります。

特に注意したいのは、医療機関での治療をやめて健康食品に切り替えるよう勧める情報です。

根拠の乏しい健康法を優先することで、必要な治療を受ける機会を失う危険があります。

高齢者の健康管理では、かかりつけ医や薬剤師など、相談できる専門家との関係を持つことが重要です。

家族が健康情報を一緒に確認することも、誤った判断を防ぐ助けになります。

健康情報と家計管理の共通点

健康情報を見極める力は、金融リテラシーとも共通しています。

資産運用では、高い利回りを強調する情報だけで投資を判断することは危険です。

運用実績、手数料、リスク、情報の発信者などを確認する必要があります。

健康情報についても同様です。

効果だけでなく、安全性、費用、科学的根拠、発信者の利益関係を確認することが欠かせません。

例えば、毎月1万円のサプリメントを購入すると、年間12万円、10年間で120万円になります。

その支出に見合う健康上の効果が確認できなければ、家計にとっても合理的な選択とはいえません。

一方で、適切な運動、栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠、禁煙など、健康維持に役立つ基本的な生活習慣は、必ずしも高額な支出を必要としません。

健康への投資では、支出額の大きさではなく、根拠に基づく効果と安全性を重視する必要があります。

学校教育から家庭教育への広がり

愛媛県西条市では、中学生を対象としてSNS上のダイエット情報やサプリメントの信頼性を考える授業が行われました。

生徒自身が情報の根拠を確認し、議論する実践的な教育です。

こうした取り組みは、今後さらに重要になると考えられます。

健康情報を正しく判断する力は、知識を暗記するだけでは身につきません。

実際の広告やSNS投稿を題材にして、何が事実で、何が推測で、何が宣伝なのかを考える経験が必要です。

家庭でも、子どもがSNSで見つけた健康情報について、親子で根拠を確認する習慣をつくることができます。

同様に、高齢の親が購入しようとしている健康食品について、家族が情報を調べることも有効です。

世代を超えて情報を検証する習慣を持つことが、家庭全体の健康を守ることにつながります。

人生100年時代の健康管理と情報の選択

長寿社会では、健康情報との付き合い方が生活の質を左右します。

健康寿命を延ばすためには、日々の生活習慣を整えることに加え、必要な医療を適切に利用することが重要です。

そのためには、信頼できる情報源をあらかじめ把握しておくことが役立ちます。

厚生労働省、消費者庁、国立健康・栄養研究所などの公的機関が提供する情報は、健康食品や栄養に関する判断材料になります。

ただし、公的機関の情報であっても、自分の健康状態にそのまま当てはまるとは限りません。

一般的な情報と個別の医療判断を区別することが必要です。

また、生成AIによって健康情報を調べる機会も増えています。

生成AIは情報整理に役立つ一方、誤った内容や根拠が確認できない説明を示す可能性があります。

AIの回答についても、一次情報を確認し、重要な医療判断をAIだけに委ねない姿勢が求められます。

結論

SNSやインターネットは、健康情報を手軽に入手できる便利な手段です。しかし、情報の多さと信頼性の高さは同じではありません。

健康情報を正しく活用するためには、発信時期、発信目的、発信者、科学的根拠、他の情報との比較という5つの視点が重要になります。

特に、健康食品やサプリメントについては、効果だけでなく安全性や過剰摂取の危険性にも注意する必要があります。

ヘルスリテラシーは、子どもから高齢者まで、すべての世代に必要な生活能力です。

人生100年時代には、健康を維持することが生活の質だけでなく、医療費や介護費を含む家計の安定にも関係します。

健康情報を無条件に信じるのでも、すべてを疑うのでもなく、根拠を確かめて適切に判断することが大切です。

健康を守るために必要なのは、情報をたくさん集めることではなく、信頼できる情報を選び、自分に合った行動につなげる力です。

参考

日本経済新聞 2026年10月30日 朝刊「SNSの健康情報、どう見極める 広がる『ヘルスリテラシー』教育」

消費者庁「インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示に対する改善指導」

国民生活センター「海外事業者が販売する鉄サプリメントに関する注意喚起」

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」

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