NISAの普及は資産格差を縮めるのか 誰でも使える制度でも結果に差がつく理由編

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NISAは、幅広い世代が資産形成に利用できる制度です。

投資によって得られた利益が一定の範囲で非課税になるため、長期的な資産形成を後押しする大きな仕組みとなっています。

若い世代にもNISAが広がれば、将来の資産格差を縮めることができるのでしょうか。

実は、誰でも利用できる制度であることと、誰もが同じように恩恵を受けられることは同じではありません。

NISAの普及と資産格差の関係を考えるには、制度を利用できるかだけではなく、いくら投資できるのかを見る必要があります。

NISAの最大の特徴は非課税

通常、株式や投資信託への投資によって利益が出ると、その利益には税金がかかります。

NISAでは、制度の対象となる投資から得られた売却益や配当などが非課税になります。

長期間投資を続ければ、この非課税効果は大きくなる可能性があります。

特に若い世代には長い運用期間があります。

20代から投資を始めれば、60代まで30年、40年という時間を資産形成に使うことができます。

その意味では、NISAは若者の資産形成と非常に相性のよい制度です。

制度上は多くの人に同じ機会がある

NISAの大きな特徴は、一定の条件を満たせば幅広い人が利用できることです。

勤務先が大企業だから有利になるわけでも、自営業者だから利用できないわけでもありません。

所得が高い人だけを対象にした制度でもありません。

この意味では、資産形成のための機会が広く提供されています。

インターネット証券などを利用すれば、少額から投資信託を積み立てることもできます。

以前と比べれば、若い人が投資を始めるハードルはかなり低くなったといえるでしょう。

しかし、ここで注意しなければならないことがあります。

NISAは投資するためのお金を配ってくれる制度ではないということです。

同じNISAでも投資元本が違う

例えば、毎月1万円をNISAで積み立てる人と、毎月10万円を積み立てる人を考えてみます。

1年間の投資元本は、それぞれ12万円と120万円です。

10年間では120万円と1200万円になります。

運用益を考えなくても、元本だけで1080万円の差が生まれます。

さらに投資によって利益が出れば、元本が大きい人ほど金額ベースで大きな利益を得る可能性があります。

仮に100万円と1000万円の金融資産がそれぞれ10パーセント値上がりした場合、増える金額は10万円と100万円です。

同じ10パーセントでも結果は同じではありません。

NISAの非課税という恩恵も、投資する金額が大きいほど金額ベースでは大きくなりやすいのです。

NISAを使えない人もいる

さらに重要なのが、投資そのものを始める余裕がない人です。

給料から家賃、食費、光熱費、社会保険料、税金などを払うと、ほとんどお金が残らない人もいます。

奨学金を返済している若者もいます。

まず生活防衛資金を貯めなければならない人もいるでしょう。

こうした人にとって、NISAの非課税枠が大きくても、それを十分に利用することはできません。

制度上は利用できても、経済的には利用しにくいという状況が生まれます。

これが制度上の公平と実際の利用格差の違いです。

NISAが資産格差を広げる可能性もある

少し意外に思えるかもしれませんが、NISAの普及が結果として資産格差を広げる場面も考えられます。

例えば、投資余力のある若者が20代から積極的にNISAを利用し、投資余力のない若者は40代まで投資できなかったとします。

前者には20年近い運用期間があります。

その間に積み立てた元本だけでなく、運用によって得た利益をさらに投資する複利の効果も期待できます。

後から投資を始めた人が同じ金額を毎月積み立てても、運用期間の差を完全に取り戻すのは簡単ではありません。

つまり、NISAという便利な制度があるからこそ、「早く使える人」と「使えない人」の差が長期的に拡大する可能性もあるのです。

だからといってNISAが悪いわけではない

ここで誤解してはいけないのは、NISAそのものが資産格差を生み出しているわけではないことです。

NISAは税負担を軽減し、家計の長期的な資産形成を支援する制度です。

少額からでも長期積立を始めやすくしたことには大きな意味があります。

問題は、その制度を利用する前の段階にあります。

投資に回せる所得があるか。

十分な生活防衛資金があるか。

投資について基本的な知識を持っているか。

こうした条件が人によって異なるため、同じ制度を利用しても結果に差が生まれます。

金融教育だけでも十分ではない

そこで金融教育が重要になります。

NISAの仕組み、長期投資、分散投資、リスクとリターンなどについて若いうちから学べれば、資産形成を始めやすくなります。

しかし、金融教育だけですべてを解決できるわけでもありません。

毎月の収入をほぼ生活費に使っている人に、投資の重要性を説明しても投資資金は生まれません。

金融知識と投資余力は別の問題だからです。

資産形成を広げるには、金融教育だけでなく、賃金や雇用、住宅費など若い世代の家計そのものを見る必要があります。

少額から参加できることには大きな意味がある

一方で、NISAが資産格差の縮小に役立つ可能性もあります。

以前は「投資はまとまったお金を持つ人がするもの」というイメージがありました。

現在では少額から投資信託を積み立てることができます。

月1000円や5000円からでも資産形成を経験できる環境があります。

少額でも若いうちから投資を始めれば、長い時間を利用できます。

投資金額だけではなく、早く始めることも若い世代にとって大きな武器になります。

NISAの重要な役割は、資産を持っていない人が最初の一歩を踏み出しやすくすることにもあるでしょう。

結論

NISAは、若い世代の資産形成を後押しする非常に重要な制度です。

しかし、NISAが普及すれば自動的に資産格差が縮小するわけではありません。

制度上は同じ非課税の仕組みを利用できても、毎月1万円投資できる人と10万円投資できる人では、長期間で形成される資産に大きな差が生まれます。

そもそも生活に余裕がなく、投資を始められない人もいます。

つまり、NISAには「誰でも利用できる」という公平さがある一方で、「誰でも同じだけ利用できる」わけではありません。

若者の資産格差を考えるときには、NISA口座の数だけを見るのではなく、その背後にある所得、生活費、投資余力まで見る必要があります。

NISAは資産格差を解決する万能薬ではありません。

それでも、少額から長期的な資産形成に参加できる入口として大きな意味があります。

重要なのは、その入口まで多くの若者がたどり着ける経済環境をつくることなのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月10日 朝刊 若者の金融資産、格差拡大

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