iDeCoの掛け金はなぜ全額所得控除になるのか 60代で働く人ほど節税効果を得やすい理由編

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iDeCoの大きなメリットとしてよく紹介されるのが、掛け金の全額が所得控除になることです。

例えば年間50万円をiDeCoへ拠出した場合、その50万円がそのまま税金から差し引かれるわけではありません。

税金を計算する基礎となる所得から50万円を差し引く仕組みです。

この違いを理解すると、なぜ所得のある人ほどiDeCoの節税効果が大きくなりやすいのかが分かります。

特に制度改正によって60歳以降もiDeCoを利用しやすくなれば、働く60代にとって所得控除は重要な意味を持つようになります。

iDeCoの掛け金は小規模企業共済等掛金控除になる

iDeCoで支払った掛け金は、所得税を計算するときに小規模企業共済等掛金控除の対象となります。

掛け金の全額を所得から差し引くことができます。

例えば年間74万4000円をiDeCoへ拠出したとします。

この場合、一定の要件のもとで74万4000円全額が所得控除の対象になります。

生命保険料控除などのように、支払った金額に応じて一定額までしか控除できない仕組みとは異なります。

拠出した掛け金そのものが所得控除になることがiDeCoの大きな特徴です。

所得控除は税金そのものを差し引く制度ではない

ここは誤解しやすいところです。

所得控除が74万4000円あるからといって、税金が74万4000円安くなるわけではありません。

所得税は、収入から必要経費や給与所得控除などを差し引き、さらに所得控除を差し引いた課税所得を基礎として計算します。

iDeCoへ拠出すると、この課税所得を小さくできます。

その結果として所得税が減ります。

住民税についても、所得控除によって課税対象となる所得が小さくなるため、税負担の軽減につながります。

税率によって節税額は変わる

iDeCoの節税効果を大まかに理解する場合は、掛け金と税率の関係を見ると分かりやすくなります。

例えば年間74万4000円を拠出し、所得税と住民税を合わせた税率を15パーセントと仮定します。

単純計算では年間約11万1600円の税負担軽減になります。

10年間同じ条件が続けば約111万6000円です。

一方、税率が20パーセントなら年間約14万8800円、10年間では約148万8000円となります。

つまり同じ金額をiDeCoへ拠出しても、その人に適用される税率によって節税効果は変わります。

一般に課税所得が大きく、高い税率が適用される人ほど所得控除の価値も大きくなります。

60代で働く人に所得控除が重要になる

以前は60歳になると定年退職し、その後は年金生活へ移るという人生設計が一般的でした。

しかし現在は60歳以降も働く人が増えています。

給与収入があり、そこから所得税や住民税を負担しているのであれば、iDeCoの所得控除を活用できる可能性があります。

制度改正後、企業年金のない会社員などの拠出可能額が月6万2000円になれば、年間では74万4000円です。

60歳以降も一定の給与を受け取りながら働く人にとって、この所得控除は決して小さくありません。

若い時期のiDeCoは長期間の複利運用が大きな魅力です。

一方、60代のiDeCoでは、運用期間が比較的短くても所得控除による効果を得られることが重要になります。

課税所得がなければ節税効果は小さくなる

反対に注意したいのが、所得税や住民税をほとんど負担していない場合です。

iDeCoへ掛け金を拠出しても、もともと課税される所得がなければ所得税を減らす余地がありません。

所得控除は、払った掛け金に対して国から一定割合のお金が戻ってくる制度ではないからです。

あくまで税金を計算する所得を小さくする仕組みです。

そのため60歳以降にiDeCoを利用する場合には、自分が年間どの程度の所得税や住民税を負担しているのかを確認することが重要です。

単純に拠出可能額いっぱいまで掛け金を出せば得になるとは限りません。

運用益が出なくても所得控除は利用できる

iDeCoのもう一つ興味深いところは、所得控除と運用成績が別の話だということです。

例えば元本確保型の定期預金を選び、運用益がほとんど出なかったとしても、掛け金について所得控除を利用できる可能性があります。

もちろんiDeCoには手数料があり、将来受け取る際の税金も考える必要があります。

それでも、投資で大きな利益を狙わなければiDeCoを利用する意味がないわけではありません。

特に60代では、資産を大きく増やすことよりもリスクを抑えながら税制優遇を利用したい人もいるでしょう。

所得控除は、そうした使い方を考えるうえでも重要です。

入口だけでなく出口の税金も確認する

iDeCoの所得控除は非常に魅力的ですが、入口の節税だけを見て判断するのは適切ではありません。

積み立てた資産は将来受け取ります。

一時金として受け取れば退職所得として扱われ、退職所得控除を利用できる可能性があります。

年金として受け取れば雑所得となり、公的年金等控除との関係が生じます。

特に60歳前後で勤務先から退職金を受け取る場合は、会社の退職金とiDeCoの一時金との関係が重要になります。

拠出時にいくら税金が減るのかだけではなく、最終的にいくら手元に残るのかまで考える必要があります。

結論

iDeCoの掛け金は全額が所得控除の対象になります。

ただし掛け金そのものが税金から差し引かれるわけではありません。

掛け金によって課税所得を小さくし、その結果として所得税や住民税の負担を軽くする仕組みです。

だからこそ、60歳以降も働き、所得税や住民税を負担している人にとってiDeCoの所得控除は大きな意味を持ちます。

制度改正によって60代でも大きな金額を拠出できるようになれば、iDeCoは単なる老後の積立制度ではなく、働きながら老後資金を準備し、同時に現在の税負担を調整する制度としても注目されるでしょう。

重要なのは、自分の所得と税率を確認することです。

60代のiDeCoでは、何パーセントで運用できるかだけではなく、自分の所得控除がいくらの節税につながるのかを計算することが第一歩になります。

参考

日本経済新聞 2026年9月12日 朝刊 60歳からiDeCo増額 拠出・非課税枠活用しやすく

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