金価格高騰時代の資産防衛 現物金・金ETF・預金をどう使い分けるか

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金価格の高騰を背景に、資産の一部を金で保有することへの関心が高まっています。

金地金や金貨などの現物金を購入する人がいる一方、証券口座を通じて金価格に連動する上場投資信託(ETF)に投資する人もいます。

また、金利上昇によって預金の利息収入が増えていることから、金と預金をどのように使い分けるべきかという問題も重要になっています。

田中貴金属工業の税抜き参考小売価格によると、金価格は2021年8月の平均1グラム6,369円から、2026年8月には2万2,660円となりました。

5年間で約3.5倍に上昇しています。

一方、金価格が大幅に上昇したからといって、今後も同じペースで上昇するとは限りません。

金は価格変動のある資産であり、預金のように元本が保証されているわけではありません。

さらに、現物金と金ETFでは、保有方法や費用、税務上の取り扱いが異なります。

人生100年時代において、資産防衛とは単に値上がりする資産を選ぶことではありません。

老後の生活費や医療費、介護費などに備えながら、資産全体の安全性と収益性を適切に組み合わせることが重要です。

金価格高騰の背景と資産防衛への関心

金価格は、国際的な金融市場の動向によって変動します。

一般的に、金は世界的な経済不安や地政学的リスクが高まる局面で、安全資産として注目されることがあります。

また、中央銀行による金の購入や投資家の需要なども価格に影響します。

さらに、日本国内の金価格には為替相場が大きく関係します。

国際的な金価格は主に米ドル建てで取引されているため、円安が進むと、ドル建て金価格が変わらなくても円建ての金価格が上昇する場合があります。

反対に、円高が進めば、円建て金価格の下落要因となることがあります。

金価格の上昇には複数の要因が関係しており、将来の価格を正確に予測することは容易ではありません。

そのため、金を資産防衛の手段として活用する場合には、値上がりへの期待だけでなく、価格下落の可能性も考慮する必要があります。

現物金を保有するメリットとデメリット

現物金とは、金地金や金貨など、実際の金属として保有する資産です。

現物金の特徴は、金融機関の預金債権や投資信託の受益権とは異なり、金そのものを所有することにあります。

金は世界的に取引される実物資産であり、長期的な資産分散の手段として利用されることがあります。

一方、現物金には保管上の問題があります。

自宅で保管する場合には、盗難や紛失のリスクがあります。

貸金庫などを利用する場合には、保管費用が発生することもあります。

また、現物金を売却する際には、買い取り業者による査定や本人確認などの手続きが必要です。

購入価格と売却価格には差があり、小口の金地金では別途手数料が発生する場合もあります。

そのため、現物金は短期間で頻繁に売買するよりも、保管費用や売買コストを踏まえて保有を検討する必要があります。

金ETFを利用するメリットとデメリット

金ETFとは、金価格への連動を目指す上場投資信託です。

証券取引所に上場しているため、株式と同様に証券口座を通じて売買できます。

現物金と比較した場合のメリットは、金地金を自宅で保管する必要がないことです。

また、商品によっては比較的少額から投資でき、取引所の立会時間中に売買できる点も特徴です。

一方、金ETFには信託報酬などの保有コストがあります。

また、市場価格が基準価額や金価格から一時的に乖離することがあります。

さらに、金ETFには、現物の金を裏付けとする商品や、先物取引などを利用する商品があります。

商品ごとに運用方法やリスクが異なるため、金ETFという名称だけで同じ仕組みだと判断することは適切ではありません。

投資する際には、運用対象、信託報酬、価格連動の仕組み、流動性などを確認することが重要です。

預金が資産防衛の基本となる理由

預金は、老後の生活費や緊急時の支出に備えるための基本的な金融資産です。

普通預金は、必要なときに比較的容易に引き出すことができます。

また、定期預金は、一定期間資金を預けることで、契約条件に応じた利息を受け取ることができます。

日本の預金保険制度では、一般預金等について、原則として1金融機関ごとに預金者1人当たり元本1,000万円までとその利息等が保護されます。

一方、無利息であることなど一定の要件を満たす決済用預金は、全額保護されます。

ただし、預金は名目上の元本が維持されても、物価上昇によって実質的な購買力が低下する可能性があります。

例えば、預金金利が年1%であっても、物価が年3%上昇した場合には、預金の購買力は実質的に低下します。

そのため、預金だけですべての資産を保有することにも、インフレへの対応という課題があります。

現物金・金ETF・預金の基本的な違い

現物金、金ETF、預金は、それぞれ異なる特徴を持っています。

現物金は、実物資産として保有できる一方、保管や売却に費用や手間がかかります。

金ETFは、証券口座を通じて売買しやすい一方、信託報酬や市場価格の変動などに注意が必要です。

預金は、日常生活の支払いや緊急時の資金確保に適していますが、物価上昇によって実質的な価値が低下する可能性があります。

また、金には預金利息のような定期的な収益がありません。

金を保有することによる収益は、基本的に売却時の価格変動に左右されます。

一方、預金では、預入条件に応じて利息を受け取ることができます。

そのため、金と預金は単純に利回りだけで比較できるものではありません。

資産の安全性、流動性、収益性、費用などを総合的に考える必要があります。

老後の生活費は預金を中心に確保する

人生100年時代の資産管理では、生活費として必要な資金と、長期的に運用できる資金を区分することが重要です。

例えば、毎月の生活費が25万円で、公的年金などの収入が20万円の場合、毎月5万円の不足が生じます。

年間では60万円の不足となります。

この不足額を補うための資金については、必要なときに利用できることが重要です。

そのため、近い将来に使う予定の生活費を、価格変動のある金に集中させることは適切とは限りません。

金価格が下落した時期に生活費が必要になれば、不利な価格で売却せざるを得ない可能性があります。

一方、当面使用する予定のない資金については、資産分散の一環として金を保有することも考えられます。

老後資金の管理では、まず生活費や緊急時の支出に備える資金を確保し、そのうえで余裕資金の運用方法を検討することが基本です。

資産全体に占める金の割合を考える

金を資産防衛に活用する場合には、資産全体に占める割合を確認する必要があります。

例えば、金融資産が3,000万円ある人が、金を300万円保有している場合、金の割合は10%です。

一方、同じ金融資産3,000万円でも、金を1,500万円保有している場合には、金の割合は50%となります。

金の割合が高いほど、金価格の変動が資産全体に与える影響は大きくなります。

仮に金価格が20%下落した場合、金を300万円保有していれば評価額の減少は60万円です。

一方、金を1,500万円保有していれば、評価額の減少は300万円となります。

このように、同じ価格変動でも、保有割合によって家計への影響が異なります。

ただし、金の適切な保有割合は、年齢や収入、資産状況、リスク許容度などによって異なります。

すべての人に共通する最適な割合があるわけではありません。

金価格の上昇後に売却を検討する視点

長年保有してきた金の価格が大幅に上昇した場合には、一部を売却して資産配分を見直すことも考えられます。

例えば、当初は金融資産全体の10%だった金の割合が、価格上昇によって20%になった場合です。

この場合、金を一部売却して預金などに振り替えることで、資産全体の価格変動リスクを抑えられる可能性があります。

このように、資産配分を当初の方針に近づけることをリバランスといいます。

ただし、金を売却する際には、買い取り手数料や税金などが発生する場合があります。

また、売却後に金価格がさらに上昇する可能性もあります。

そのため、短期的な価格予測だけで判断するのではなく、老後資金の必要額や資産配分の方針に基づいて売却を検討することが重要です。

現物金と金ETFでは税金の仕組みが異なる

金を保有する際には、売却時の税務上の取り扱いにも注意が必要です。

個人が保有する金地金を売却して利益が生じた場合には、原則として総合課税の譲渡所得となります。

総合課税の譲渡所得には年間最高50万円の特別控除があり、所有期間が5年を超える場合には、特別控除後の長期譲渡所得の2分の1が総合課税の対象となります。

一方、国内の証券取引所に上場する一般的な金ETFの売却益は、原則として上場株式等の譲渡所得等として申告分離課税の対象となります。

所得税、復興特別所得税、住民税を合わせた税率は通常20.315%です。

ただし、金ETFの具体的な税務上の取り扱いは商品によって異なる場合があるため、確認が必要です。

また、NISAの対象となる金ETFについては、NISA口座での売却益などが非課税となる場合があります。

すべての金ETFがNISAの対象になるわけではありません。

現物金と金ETFでは、売買の仕組みだけでなく、税引き後の手取り金額にも違いが生じる可能性があります。

金投資と相続対策の関係

金地金や金貨などの現物金は、相続財産となる場合があります。

相続税では、原則として相続開始時点の時価を基準に評価します。

そのため、金価格が上昇している場合には、相続税評価額が高くなる可能性があります。

一方、金ETFについても、相続財産として評価する必要があります。

ただし、現物金と金ETFでは、相続時の確認方法や財産管理の手続きが異なります。

現物金は、保管場所や数量、純度、重量などを把握しておく必要があります。

金ETFは、証券会社の取引報告書や残高報告書などによって保有状況を確認できます。

また、相続人が複数いる場合には、現物金を分割する方法や、売却して現金化する方法などを検討する必要があります。

金を保有する際には、運用上のメリットだけでなく、将来の相続手続きも考慮することが重要です。

結論

金価格の高騰によって、現物金や金ETFへの関心が高まっています。

しかし、金は価格変動のある資産であり、預金と同じように元本が保証されているわけではありません。

現物金には実物資産として保有できる特徴がありますが、保管費用や盗難、紛失などのリスクがあります。

金ETFは証券口座を通じて売買しやすい一方、信託報酬や商品ごとの運用方法に注意が必要です。

預金は、生活費や緊急時の支出に備えるための基本的な金融資産ですが、物価上昇によって実質的な購買力が低下する可能性があります。

そのため、現物金、金ETF、預金のいずれか一つを選ぶのではなく、それぞれの役割を理解して使い分けることが重要です。

人生100年時代において、資産防衛の目的は、短期間で資産を大きく増やすことではありません。

老後の生活に必要な資金を確保しながら、物価上昇や金融市場の変動に備えることです。

まず、生活費や医療費、介護費などに必要な資金を預金などで確保し、そのうえで余裕資金の一部を金などに分散することが基本となります。

金価格の上昇だけに注目するのではなく、資産全体の安全性、流動性、税金、相続まで見据えた長期的な資産管理が求められます。

参考

日本経済新聞 2026年11月3日 朝刊「貴金属買い取り、勧誘トラブル5年で5倍超 店舗はクーリングオフ外」

田中貴金属工業「金価格推移」

金融庁「資産形成の基本」

金融庁「NISAを知る」

預金保険機構「預金保険制度の概要」

国税庁「金地金を売ったときの税金」

国税庁「株式等を譲渡したときの課税」

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