高齢者を狙う健康情報の落とし穴 不安につけ込む広告と消費者被害

人生100年時代
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人生100年時代を迎え、健康寿命を延ばしたいと考える高齢者が増えています。病気の予防、認知機能の維持、関節の痛みの改善、体力の回復など、健康に関する関心は年齢とともに高まる傾向があります。

こうした健康への関心を背景に、健康食品やサプリメント、健康器具、各種健康サービスの市場が広がっています。

一方で、高齢者の健康不安につけ込み、科学的な根拠が十分ではない商品を販売したり、高額な契約を結ばせたりする消費者トラブルも問題になっています。

特にインターネットやSNSでは、医師や専門家の推薦を装った広告、効果を誇張した健康食品、解約が難しい定期購入契約などに注意が必要です。

健康を守るために購入した商品が、かえって健康被害や家計の負担につながる可能性があります。

人生100年時代には、健康情報を見極める能力と、消費者として自分の財産を守る能力の両方が求められます。

高齢者の健康不安と消費行動の関係

高齢期には、身体機能や健康状態の変化を実感する機会が増えます。

血圧や血糖値の上昇、筋力の低下、関節の痛み、物忘れなど、日常生活の中で健康への不安を感じることがあります。

こうした不安を抱えているときには、簡単に健康状態を改善できるとする商品やサービスが魅力的に見える場合があります。

例えば、飲むだけで関節の痛みが改善する、認知機能の低下を防げる、血管を若返らせるといった広告です。

しかし、健康状態は年齢、生活習慣、持病、服薬状況など、さまざまな要因によって左右されます。

特定の商品だけで健康上の問題が解決するとは限りません。

また、高齢者のすべてが健康情報に弱いわけではありません。

情報を十分に検証できる人も多く、年齢だけで判断力を決めつけることは適切ではありません。

重要なのは、健康への不安が強い状況では、誰でも魅力的な広告の影響を受ける可能性があるという点です。

健康食品の誇大広告に潜む問題

健康食品の広告では、効果を強調する表現が使われることがあります。

消費者庁は2026年9月、インターネット上の健康食品などについて、同年4〜6月に117事業者、126商品に改善指導を行ったことを公表しました。

対象には、高血圧予防、冷え性の改善、アンチエイジングなどについて、十分な根拠が確認できない表示をしていた商品が含まれていました。

こうした広告で注意したいのは、健康への効果が科学的に証明されているかどうかです。

健康食品は、一般に医薬品とは異なる制度の下で販売されています。

そのため、食品として販売されている商品について、病気の治療や予防に効果があると安易に判断することはできません。

また、天然由来、無添加、植物成分といった表示も、安全性や有効性を保証するものではありません。

広告の印象ではなく、成分、摂取量、科学的根拠などを確認する必要があります。

医師や専門家を装った広告への注意

健康食品の広告には、医師や研究者などの専門家が推薦しているように見せるものがあります。

白衣を着た人物の写真や、医療機関を連想させる表現が使われると、消費者は医学的な信頼性が高いと感じやすくなります。

しかし、広告に登場する人物が実際の医師であるとは限りません。

また、医師が推薦している事実があったとしても、それだけで商品の効果が科学的に証明されたことにはなりません。

近年は生成AIなどを利用して、実在する人物の画像や音声を加工することも技術的に可能になっています。

著名人や専門家が商品を推薦しているように見える広告についても、発信元を確認する必要があります。

特に、特定の商品を購入するよう強く誘導する広告では、情報提供と販売促進を区別することが重要です。

医療機関や公的機関が提供する情報と比較し、根拠を確認する習慣が求められます。

定期購入契約による家計への負担

健康食品に関する消費者トラブルでは、定期購入契約にも注意が必要です。

インターネット広告では、初回限定価格として大幅な割引が表示されることがあります。

しかし、実際には複数回の購入が条件になっていたり、2回目以降の価格が大幅に上昇したりする場合があります。

例えば、初回980円、2回目以降毎月8,000円の商品を12カ月購入すると、合計は8万8,980円になります。

初回価格だけを見て購入すると、想定以上の支出につながる可能性があります。

また、解約方法が電話に限定されていたり、一定期間前までに申し出る必要があったりする場合もあります。

通信販売では、原則としてクーリング・オフ制度は適用されません。

ただし、最終確認画面などにおける契約内容の表示に問題がある場合には、特定商取引法などに基づいて契約を取り消せる可能性があります。

購入前には、総支払額、継続回数、解約条件を確認することが大切です。

高額な健康器具や健康サービスの契約

健康関連の消費者被害は、サプリメントだけではありません。

健康器具、家庭用の施術機器、健康維持を目的とするサービスなどでも、高額な契約が問題になることがあります。

特に、無料体験や説明会などをきっかけとして、商品の購入を勧められる場合があります。

最初は少額の商品や無料サービスを提供し、利用者との信頼関係を築いた後に高額な契約へ誘導する手法には注意が必要です。

健康に関する不安を強調し、今すぐ購入しなければ状態が悪化するといった説明が行われる場合には、慎重に判断する必要があります。

また、契約を急がせたり、家族に相談しないよう求めたりする販売方法も警戒すべきです。

高額な健康関連商品を購入する際には、その場で契約せず、必要性や価格の妥当性を確認することが重要です。

健康食品による身体的な被害

健康食品の問題は、金銭的な負担だけではありません。

成分の過剰摂取や医薬品との相互作用によって、健康被害が生じる可能性があります。

国民生活センターには、海外事業者から購入した鉄サプリメントを長期間摂取し、鉄過剰状態や肝機能障害が疑われる症状が生じたという相談が寄せられています。

鉄は人体に必要な栄養素ですが、過剰摂取によって健康を損なう場合があります。

また、高齢者は複数の医薬品を服用していることもあります。

健康食品の成分が医薬品の作用に影響する可能性があるため、利用前に医師や薬剤師へ相談することが大切です。

特に、病気の治療を中断して健康食品だけに頼ることは危険です。

健康食品は、必要な医療の代わりになるものではありません。

消費者契約を守る法律と相談制度

健康食品や健康サービスの契約トラブルでは、消費者を保護する法律が重要になります。

消費者契約法では、事業者による不実告知や一定の困惑を生じさせる勧誘などについて、要件を満たす場合に契約を取り消せる制度が設けられています。

また、特定商取引法では、訪問販売、電話勧誘販売、通信販売などの取引類型に応じた規制があります。

訪問販売や電話勧誘販売などでは、一定の条件の下でクーリング・オフ制度が適用されます。

一方、通信販売には原則としてクーリング・オフ制度がありません。

そのため、どのような方法で契約したのかによって、利用できる制度が異なります。

契約内容に疑問がある場合には、消費者ホットライン「188」を通じて、最寄りの消費生活センターなどに相談できます。

契約書、広告画面、注文確認メール、支払記録などを保存しておくことも重要です。

家族による見守りと本人の意思の尊重

高齢者の消費者被害を防ぐためには、家族による見守りが有効です。

ただし、家族が本人の判断を一方的に否定することは望ましくありません。

高齢者にも、自分の健康管理や消費行動について意思決定する権利があります。

重要なのは、本人の意思を尊重しながら、必要な情報を一緒に確認することです。

例えば、新しい健康食品を購入しようとしている場合には、商品の成分や科学的根拠、契約条件を一緒に調べることが考えられます。

また、毎月の支出額や定期購入契約の有無を確認することも役立ちます。

家族が日常的に健康や家計について話し合える関係を築いておけば、問題が発生したときにも相談しやすくなります。

高齢者の消費者被害防止では、監視することよりも、安心して相談できる環境を整えることが重要です。

認知機能の変化と財産管理への備え

高齢期には、認知機能の変化によって契約内容を十分に理解することが難しくなる場合があります。

ただし、認知機能の低下が直ちに契約能力の喪失を意味するわけではありません。

契約の有効性は、契約時の本人の判断能力や具体的な事情などによって判断されます。

判断能力が不十分になった場合には、成年後見制度などの利用が選択肢になります。

成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度があります。

任意後見制度は、本人に判断能力があるうちに、将来の財産管理などについて契約を結んでおく仕組みです。

一方、法定後見制度は、判断能力が不十分になった場合に、家庭裁判所が成年後見人等を選任する制度です。

こうした制度は、健康食品の購入トラブルだけを対象とするものではありません。

財産管理や契約行為全般を支援する仕組みとして、必要性を慎重に検討することが重要です。

健康情報の判断力と老後資金の保全

高齢期の健康情報を見極める能力は、老後資金を守ることにもつながります。

例えば、毎月2万円の健康食品や健康サービスを利用すると、年間24万円の支出になります。

10年間では240万円、20年間では480万円です。

その支出が必要であり、健康維持に役立っているのであれば、一定の価値があります。

しかし、科学的な根拠が不十分な商品を不安から購入し続けている場合には、家計の見直しが必要です。

老後には、医療費、介護費、住宅修繕費など、予測が難しい支出も発生します。

健康関連支出が固定費化すると、将来の生活費に影響する可能性があります。

健康を守ることと財産を守ることは、別々の課題ではありません。

健康情報を正しく判断する能力は、合理的な家計管理の基盤にもなります。

結論

高齢者を対象とする健康食品や健康サービスには、健康維持に役立つものがある一方、科学的な根拠が十分ではない商品や、不適切な販売方法による消費者トラブルも存在します。

特に、健康への不安を強調する広告、医師や専門家の推薦を装った宣伝、解約条件が分かりにくい定期購入契約などには注意が必要です。

健康食品を購入する際には、効果の根拠、安全性、契約条件、継続費用を確認することが重要です。

また、健康被害や契約トラブルが疑われる場合には、医療機関や消費生活センターなどへ早めに相談する必要があります。

人生100年時代には、健康寿命を延ばすことと、老後資金を守ることの両立が求められます。

家族による見守りや財産管理制度への理解も、安心して暮らし続けるための重要な備えになります。

健康への不安につけ込む情報から身を守るためには、商品の魅力的な宣伝ではなく、科学的な根拠と契約内容を確認し、自分の健康と財産の両方を守る判断力が必要です。

参考

日本経済新聞 2026年10月30日 朝刊「SNSの健康情報、どう見極める 広がる『ヘルスリテラシー』教育」

消費者庁「インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示に対する改善指導」

国民生活センター「健康食品に関する消費者トラブル」

消費者庁「特定商取引法ガイド」

消費者庁「消費者契約法」

法務省「成年後見制度・成年後見登記制度」

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