SNSの健康情報はなぜ信じられやすいのか 情報過多の時代に必要な判断力

人生100年時代
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SNSやインターネットの普及によって、健康に関する情報を誰でも簡単に入手できる時代になりました。食事、運動、睡眠、ダイエット、サプリメント、病気の予防など、健康に関する情報は日々大量に発信されています。

一方で、情報が豊富になったことと、正しい健康判断ができることは必ずしも一致しません。

科学的な根拠が十分ではない健康法が注目されたり、個人の体験談が医学的な事実であるかのように広がったりすることがあります。

特にSNSでは、情報の正確性よりも、閲覧者の関心を集める表現が優先される場合があります。

人生100年時代には、健康情報を集める能力だけでなく、その情報が信頼できるかを判断する能力が欠かせません。

若い世代ほどSNSを健康情報の入手先に利用

健康情報の入手方法は、世代によって大きく異なります。

第一三共ヘルスケアが2025年に実施した調査によると、心身の悩みについて調べた経験がある20代以下の38.4%が、SNSを通じて健康情報を入手していました。

30〜50代では16.4%であり、若い世代の利用割合が大きく上回っています。

さらに、インフルエンサーの動画やSNS投稿を信頼する情報源として挙げた割合は、20代以下で17.4%、30〜50代では7.5%でした。

こうした違いは、健康情報に接する環境の変化を示しています。

従来は医療機関、新聞、テレビ、専門書などが主な情報源でしたが、現在は個人が発信する動画やSNS投稿も大きな影響力を持っています。

SNSは短時間で情報を得られ、具体的な体験談にも触れられる便利な手段です。

しかし、情報を発信するために医学的な資格や専門知識が必要なわけではありません。

情報の入手しやすさと信頼性を区別することが重要です。

SNSの情報が信じられやすい仕組み

SNSには、利用者の関心に応じて情報を表示する仕組みがあります。

例えば、健康診断で血圧が高いと指摘された人が、血圧を下げる食事について検索したとします。

その後、関連する健康食品や生活習慣の動画が繰り返し表示されることがあります。

同じ内容の情報に何度も接すると、その主張が正しいと感じやすくなる場合があります。

心理学では、繰り返し接する情報を真実だと判断しやすくなる現象が知られています。

さらに、自分の考えに合う情報を優先して集める「確証バイアス」も判断に影響します。

特定の健康法が効果的だと信じている人は、その効果を支持する体験談に注目する一方、否定的な研究結果を見落とす可能性があります。

SNSでは、こうした心理的な傾向と情報表示の仕組みが重なることがあります。

その結果、十分な根拠がない情報でも、多くの人が支持しているように見える場合があります。

フォロワー数と医学的な信頼性の違い

SNSでは、フォロワー数や再生回数が情報の影響力を示す指標になります。

数十万人のフォロワーを持つ発信者の健康情報は、多くの人の目に触れます。

しかし、フォロワー数が多いことは、医学的な正確性を保証するものではありません。

健康情報の信頼性は、発信者の人気ではなく、主張を裏付ける科学的根拠によって判断する必要があります。

医師や研究者などの専門家による発信であっても、専門分野や根拠を確認することが重要です。

また、健康食品の販売企業から報酬を受けている場合には、広告や販売促進の目的が含まれている可能性があります。

広告であること自体が問題なのではありません。

問題となるのは、販売目的が十分に示されず、効果や安全性について誤解を招く情報が発信されることです。

情報を評価するときには、誰が発信しているかに加え、なぜ発信しているかを考える必要があります。

個人の成功体験が強い説得力を持つ理由

SNSで広がりやすい健康情報には、個人の体験談が多く含まれます。

特定の食品を食べ続けた結果、体重が減少したという投稿や、ある健康法によって体調が改善したという動画などです。

具体的な数字や写真を伴う体験談は、見る人に強い印象を与えます。

しかし、個人の体験だけでは、その健康法に効果があると判断できません。

例えば、体重が減少した人が同時に食事量を減らし、運動を増やしていた可能性があります。

その場合、体重減少の原因を特定の食品だけに求めることはできません。

また、健康法を試して効果があった人ほど積極的に情報を発信し、効果がなかった人の経験は目立たないことも考えられます。

健康情報を評価するためには、成功例だけでなく、効果が確認されなかった例や副作用なども含めて検討する必要があります。

個人の体験談は参考情報にはなりますが、医学的な効果を証明するものではありません。

健康への不安が判断力に与える影響

健康情報を信じやすくなる背景には、健康への不安があります。

健康診断で異常を指摘されたときや、家族が病気になったときには、少しでも有効な対策を探したくなるものです。

こうした心理に対して、短期間で改善する、特別な努力は必要ない、誰でも効果が期待できるといった表現は魅力的に映ります。

しかし、健康管理には個人差があり、すべての人に同じ効果が得られる方法は限られています。

特に、病気の治療や予防について断定的な表現が使われている場合には注意が必要です。

健康への不安が強いときほど、すぐに商品を購入したり、医療機関での治療を自己判断で中断したりしないことが大切です。

必要に応じて医師や薬剤師などに相談し、情報を確認する時間を確保することが重要になります。

健康情報の誤認が実際の被害につながる危険性

誤った健康情報は、単なる知識の問題にとどまりません。

消費者庁は2026年9月、インターネット上の健康食品などについて、同年4〜6月に117事業者、126商品に改善指導を行ったことを公表しました。

対象には、妊活、冷え性、高血圧予防、アンチエイジングなどに関する効果について、十分な根拠が確認できない表示をしていた商品が含まれています。

また、国民生活センターには、海外事業者から購入した鉄サプリメントを長期間摂取し、鉄過剰状態や肝機能障害が疑われる症状が生じたという相談も寄せられています。

健康に必要な栄養素であっても、過剰に摂取すれば健康を損なう可能性があります。

健康食品は、医薬品と同じ基準で治療効果が確認されているとは限りません。

健康に良いという印象だけで判断せず、成分、摂取量、安全性を確認する必要があります。

情報を見極めるための基本的な習慣

健康情報に接したときには、すぐに信じたり否定したりするのではなく、いくつかの視点から確認することが有効です。

まず、情報の発信者と発信時期を確認します。

医療や健康に関する知識は研究によって更新されるため、過去には正しいと考えられていた情報が、現在では見直されている場合があります。

次に、情報の根拠を確認します。

研究論文、公的機関の資料、専門家による解説など、主張を裏付ける資料が示されているかを調べます。

さらに、一つの情報源だけで判断しないことも重要です。

厚生労働省、消費者庁、国立健康・栄養研究所などが提供する情報と比較することで、判断材料を増やせます。

ただし、一般的な健康情報が自分の健康状態に適しているとは限りません。

持病や服薬状況などによっては、専門家による個別の判断が必要になります。

高齢者にも求められる情報判断力

SNSによる健康情報の問題は、若い世代だけに限りません。

人生100年時代には、高齢者もインターネットを通じて健康情報を収集する機会が増えています。

加齢に伴って血圧、血糖値、骨密度、認知機能などへの関心が高まり、健康維持を目的とした商品やサービスを利用することもあります。

しかし、健康への関心が高いことと、情報を適切に判断できることは別の問題です。

高額な健康食品や定期購入サービスを契約する前には、効果の根拠だけでなく、費用や解約条件も確認する必要があります。

また、家族が健康情報を共有し、必要に応じて一緒に確認することも有効です。

高齢者の情報判断力を支えることは、健康被害の防止だけでなく、家計の安定にもつながります。

健康リテラシーと金融リテラシーの共通点

健康情報の判断と資産運用の判断には、共通する部分があります。

投資では、高い利回りを強調する情報だけを信じて商品を購入することは危険です。

運用実績、手数料、リスク、情報の発信者などを確認する必要があります。

健康情報についても同様です。

短期間で大きな効果が得られるといった宣伝に対しては、その根拠や安全性を確認することが欠かせません。

健康食品や健康サービスへの支出が長期間続けば、家計への影響も無視できません。

例えば、毎月1万円の健康食品を購入すれば、年間12万円、10年間で120万円の支出になります。

その費用に見合う効果が確認できなければ、合理的な健康投資とはいえません。

健康とお金の両方を守るためには、魅力的な宣伝に流されず、根拠と費用対効果を確認する姿勢が重要です。

結論

SNSやインターネットは、健康情報を入手するための便利な手段です。

しかし、情報が繰り返し表示される仕組みや、人気のある発信者への信頼、個人の体験談の説得力などによって、科学的な根拠が十分ではない情報も信じられやすくなります。

特に健康への不安が強いときには、簡単に効果が得られるという情報に注意する必要があります。

健康情報の信頼性は、フォロワー数や再生回数ではなく、科学的な根拠や安全性によって判断することが大切です。

人生100年時代には、健康を維持するための知識だけでなく、情報を選択し、自分に適した行動につなげる能力が求められます。

健康情報を見極める力は、健康寿命を守るだけでなく、不要な支出を抑え、老後の家計を安定させることにもつながります。

情報があふれる時代だからこそ、健康を守るために必要なのは、情報を多く集めることではなく、その信頼性を自分で判断する力です。

参考

日本経済新聞 2026年10月30日 朝刊「SNSの健康情報、どう見極める 広がる『ヘルスリテラシー』教育」

消費者庁「インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示に対する改善指導」

国民生活センター「海外事業者が販売する鉄サプリメントに関する注意喚起」

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」

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