マンション価格高騰に政府が本格対応へ 短期転売への課税強化で住宅価格は下がるのか

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2026年10月22日

東京都心を中心にマンション価格の高騰が続くなか、自民党が投機的な不動産取引を抑制するための税制改正の検討に入りました。

2027年4月の統一地方選挙を見据え、住宅購入が難しくなっている現役世代や子育て世帯への支援を強化する狙いがあります。

検討されているのは、短期間で土地やマンションを売却して利益を得る取引に対する課税強化です。

ただし、不動産価格の高騰には建築費の上昇、土地不足、住宅供給の制約など複数の要因が存在します。

短期転売への課税を強化するだけで、マンション価格を引き下げられるのでしょうか。

今回は、政府・与党が検討する住宅価格抑制策について、税制、不動産市場、金融機関、家計への影響という観点から解説します。

東京23区の新築マンション平均価格は1億3,784万円

不動産経済研究所によると、2025年度の東京23区の新築マンションの平均価格は1億3,784万円となりました。

前年度から18.5%上昇しています。

一方、厚生労働省の統計によると、2025年の東京都のフルタイム労働者の平均年収は678万円でした。

単純に比較すると、新築マンションの平均価格は平均年収の約20.3倍に相当します。

もちろん、実際の住宅購入では共働き世帯の収入や頭金、住宅ローンの借入条件などを考慮する必要があります。

それでも、一般的な給与所得者が東京都心の新築マンションを購入することは、以前より難しくなっていると考えられます。

住宅価格の上昇は、単なる資産価格の問題ではありません。

結婚、出産、子育て、転職、老後の生活設計など、人生の重要な意思決定にも影響を及ぼします。

住宅を購入できる世帯と購入できない世帯の格差が広がれば、資産形成の機会にも差が生じる可能性があります。

政府が検討する短期転売への課税強化

自民党の住宅土地・都市政策調査会は、2026年10月21日からマンション価格高騰への対応策について議論を始めました。

検討対象の一つが、土地譲渡益重課制度の適用再開です。

この制度は、投機的な土地取引を抑制するため、1973年に創設されました。

個人の一定の土地譲渡に係る事業所得などには52%の税率を適用し、法人には土地の所有期間などに応じて譲渡益に対する税負担を上乗せする仕組みです。

ただし、バブル崩壊後の1998年から適用が停止されています。

今回、自民党内で制度の再開が検討対象として浮上しているのは、短期間の売買によって利益を得る投機的な取引が住宅価格を押し上げているとの問題意識があるためです。

もっとも、この制度はもともと土地取引を対象とするものであり、既存マンションの短期転売にどのように適用するかは別途検討が必要です。

現時点で、具体的な税制改正の内容や実施時期が決まったわけではありません。

現行制度でも短期譲渡には約40%の税金がかかる

不動産の売却益については、現在でも所有期間に応じて異なる税率が適用されています。

個人が土地や建物を売却した場合、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年以下であれば、原則として短期譲渡所得に区分されます。

短期譲渡所得の税率は、所得税30%、住民税9%です。

復興特別所得税を含めた実効税率は39.63%となります。

一方、所有期間が5年を超える長期譲渡所得の税率は、所得税15%、住民税5%で、復興特別所得税を含めると20.315%です。

つまり、短期譲渡の税率は長期譲渡の約2倍です。

例えば、マンションを購入価格より2,000万円高く売却し、取得費や譲渡費用などを差し引いた課税譲渡所得が2,000万円となった場合を考えます。

特例の適用がないと仮定すると、税負担は次のようになります。

短期譲渡所得の場合は約793万円です。

長期譲渡所得の場合は約406万円です。

その差は約387万円となります。

すでに大きな税率差が存在するにもかかわらず、短期転売が続いていることが、今回の課税強化論の背景にあります。

課税強化によって短期転売は減少するのか

短期転売への課税強化には、一定の抑制効果が期待できます。

例えば、購入後1年以内に売却する場合の税負担が大幅に増えれば、短期的な値上がり益を狙う投資家の採算は悪化します。

その結果、投機目的の購入需要が減少する可能性があります。

しかし、税率を引き上げれば必ず住宅価格が下がるとは限りません。

第一に、売却益が非常に大きい場合には、税負担が増えても投資家が利益を確保できることがあります。

第二に、短期転売を避けるために保有期間を長期化させれば、市場に売り出される物件が減少する可能性があります。

第三に、住宅価格の上昇が供給不足によって生じている場合、投機的な需要を抑制しても価格の下落幅は限定的になると考えられます。

また、法人による不動産保有や株式譲渡を利用した取引など、課税対象の設計によっては制度の実効性に差が生じます。

税制改正では、投機的な取引を的確に対象としながら、一般の住宅購入者や事業者に過度な負担を与えない制度設計が求められます。

マンション価格高騰の根本原因は住宅供給の不足

住宅価格が高騰する背景には、投機的な取引以外にも構造的な要因があります。

特に重要なのが住宅供給の制約です。

東京都心では、マンション建設に適した土地の確保が難しくなっています。

さらに、建築資材価格の上昇、人手不足、建設労働者の賃金上昇などによって建築費も高騰しています。

再開発事業では、権利関係の調整や建設期間の長期化も供給コストを押し上げる要因となります。

一方、都心部には交通利便性や職住近接を求める住宅需要が集中しています。

需要が強い地域で供給が十分に増えなければ、価格は高止まりしやすくなります。

このため、住宅価格の抑制には短期転売への課税強化だけでなく、住宅供給を増やす政策も必要です。

例えば、既存建築物の住宅への転用、再開発の円滑化、空き家の活用、良質な中古住宅の流通促進などが考えられます。

投機抑制策と供給拡大策を組み合わせることが重要です。

不動産価格の急落は金融機関にも影響する

住宅価格の抑制政策には、金融システムへの影響という重要な問題があります。

2026年6月時点で、国内金融機関の融資全体に占める不動産業向け融資の比率は18.2%となっています。

これは、バブル期の10%前後を上回る水準です。

また、金融庁によると、2025年3月時点で全国の地方銀行の不動産業向け融資の約4分の1が東京都心5区に集中しています。

仮に都心の不動産価格が急落すれば、不動産会社の資金繰りや担保価値に影響が及ぶ可能性があります。

金融機関が融資姿勢を厳格化すれば、不動産開発や住宅供給にも悪影響が生じかねません。

不動産価格の下落は、住宅購入を希望する世帯には歓迎される面があります。

しかし、急激な価格下落は金融機関の経営や経済活動全体に波及する可能性があります。

したがって、政策の目的は単純な不動産価格の引き下げではなく、投機による過度な価格上昇を抑えながら、市場の安定を確保することに置くべきでしょう。

住宅購入支援だけでは賃貸世帯の負担は減らない

住宅政策を考える際には、持ち家を購入する世帯だけでなく、賃貸住宅で暮らす世帯への配慮も欠かせません。

新築マンション価格が上昇すると、購入を断念した世帯が賃貸住宅にとどまることがあります。

その結果、賃貸需要が増え、家賃上昇につながる可能性があります。

住宅価格の高騰は、持ち家世帯だけの問題ではないのです。

国民民主党は公営住宅の家賃負担軽減や空き家を活用した低廉な賃貸住宅の供給を提案しています。

東京都でも官民ファンドを活用した割安な賃貸住宅の整備が進められています。

今後の住宅政策では、購入支援と賃貸支援を一体的に考える必要があります。

特に、子育て世帯、若年層、単身高齢者など、それぞれの生活状況に応じた住宅支援が重要になるでしょう。

海外では外国人の住宅取得規制も広がる

住宅価格の高騰は、日本だけの問題ではありません。

カナダやオーストラリアでは、外国人による一定の住宅購入を時限的に禁止する措置が導入されています。

シンガポールでは、外国人による一定の住宅取得に対して60%の追加印紙税を課しています。

韓国でも外国人による住宅取得への規制が導入されています。

こうした政策の背景には、住宅が投資対象として取引されることによって、国内の居住者が住宅を取得しにくくなるという問題があります。

ただし、外国人の住宅取得を規制すれば、必ず住宅価格が下がるわけではありません。

住宅価格には国内投資家の需要や供給不足、金利、所得水準なども影響します。

また、国籍を基準とした規制には国際協定との整合性という問題もあります。

日本では、国籍そのものよりも、短期転売など取引の投機性に着目した制度設計が検討されています。

住宅市場の健全化という目的から考えれば、取引の実態に基づいて政策を設計することが重要です。

住宅価格抑制策は2027年度税制改正の重要論点に

今回の議論は、2027年度税制改正に向けた動きとしても注目されます。

与党が2026年12月にまとめる税制改正大綱では、短期転売に対する課税強化が論点となる可能性があります。

今後、注目すべき点は、課税対象、税率、所有期間、適用開始時期などです。

例えば、短期転売に対する税率を引き上げる場合でも、すべての不動産取引を対象とするのか、特定地域や一定の取引に限定するのかによって影響は異なります。

転勤、相続、離婚、介護などの事情で短期間に住宅を売却せざるを得ない人への配慮も必要です。

さらに、制度の適用開始前に購入した物件をどのように扱うかという経過措置も重要になります。

税制改正の内容によっては、投資家が制度開始前に売却を急いだり、反対に売却を見送ったりする可能性があります。

制度の発表時期と実施時期の設定も、不動産市場の安定に大きく影響すると考えられます。

結論

マンション価格の高騰を抑制するため、自民党が短期転売への課税強化を含む政策の検討を始めました。

住宅価格が一般的な給与所得者の所得水準から大きく乖離している現状を踏まえれば、住宅市場の健全化は重要な政策課題です。

ただし、住宅価格の高騰は投機的な取引だけで生じているわけではありません。

土地不足、建築費の上昇、住宅供給の制約、都心への人口集中など、複数の要因が重なっています。

短期転売への課税強化には一定の効果が期待できますが、それだけで住宅価格の問題を解決することは難しいでしょう。

また、不動産価格の急激な下落は、金融機関や不動産開発事業者の経営にも影響する可能性があります。

重要なのは、投機的な取引を抑制するとともに、住宅供給の拡大、中古住宅市場の整備、賃貸住宅への支援などを総合的に進めることです。

2027年度税制改正では、税率の引き上げそのものだけでなく、どのような取引を規制し、住宅市場全体にどのような影響を与えるのかが問われます。

住宅は投資対象であると同時に、人々の生活を支える基盤です。

住宅価格の抑制と不動産市場の安定をいかに両立させるかが、今後の住宅政策の重要な課題になると考えます。

参考

日本経済新聞 2026年10月22日朝刊 マンション高騰抑制策、自民党が検討 統一地方選へ短期売買規制など

国税庁 土地や建物を売ったときの税金

不動産経済研究所 2025年度首都圏新築分譲マンション市場動向

厚生労働省 2025年賃金構造基本統計調査

金融庁 2025年3月期における金融機関の不動産業向け融資に関する資料

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