土地に関する情報は、1つの制度だけで把握されているわけではありません。
土地取引に関する届出があり、所有権などに関する登記情報があり、地方公共団体が把握する地域の土地利用情報もあります。
今回の提言で注目したいのは、こうした情報をそれぞれ独立したものとして扱うのではなく、相互に照合し、国と地方公共団体の間で共有する方向性が示されていることです。
土地情報をどこまで一元的に把握できるようになるのか。
今後の土地行政を考えるうえで重要なテーマになります。
土地取引の届出だけでは把握に限界がある
現在の国土利用計画法では、一定規模以上の土地取引について届出が必要です。
資料では、市街化区域は2,000平方メートル以上、市街化区域以外の都市計画区域は5,000平方メートル以上、都市計画区域外は1ヘクタール以上とされています。
この仕組みによって、行政は一定規模以上の土地取引を把握できます。
一方、面積基準を下回る取引は届出対象になりません。
また、本来届出が必要な取引でも、届出が行われなければ、届出情報だけでは把握できないという問題があります。
今回の提言では、こうした情報把握の隙間を小さくする方向性が示されています。
届出対象未満の取引情報も国が把握へ
提言では、届出対象面積未満の土地取引情報についても、国が把握して地方公共団体への提供等を行う仕組みを構築すべきとしています。
ここで重要なのは、届出義務の対象と行政による情報把握の対象を必ずしも同じにしないという考え方です。
面積基準を引き下げても、基準そのものが存在する以上、その基準を下回る取引は残ります。
そこで届出制度だけに依存せず、対象面積未満の土地取引についても情報を把握しようとしています。
ただし、具体的にどのような方法で国が情報を取得するのかについては、今回の資料では示されていません。
登記情報との照合で無届を把握する
土地情報をつなぐという点で、さらに重要なのが登記情報です。
今回の提言では、登記情報との照合によって無届事案を把握し、現地調査に入るなど、無届事案への対応を強化すべきとしています。
届出情報だけを見ていては、無届を発見することは難しくなります。
そこで、別に存在する登記情報と照らし合わせることで、本来必要な届出が行われていない可能性のある土地取引を把握するという考え方です。
土地に関する異なる情報を組み合わせることで、届出制度の実効性を高めようとしています。
情報を集めるだけでは終わらない
今回の提言で重要なのは、土地情報を収集すること自体が目的ではないことです。
登記情報との照合によって無届事案を把握した場合には、現地調査に入るなど対応を強化する方向性が示されています。
つまり、情報の照合から実際の行政対応へつなげようとしています。
土地に関するデータを確認する。
必要があれば現地を確認する。
さらに問題があれば、行政による対応につなげる。
情報と現場を結び付ける仕組みが重要になります。
取得後の利用目的も情報として管理する
土地情報の把握は、取引時点だけではありません。
今回の提言では、届出後に利用目的を変更した場合には再届出を求め、土地利用を継続的にモニタリングできるようにすべきとしています。
これは土地情報の中身そのものが広がることを意味します。
誰が土地を取得したのかという取引情報だけでなく、その土地を何のために利用するのかという情報も重要になります。
さらに、その利用目的が取得後に変わった場合には、その変更についても把握する方向です。
土地に関する情報が、取引時点の静的な情報から、利用状況の変化を含む継続的な情報へ広がる可能性があります。
国と地方公共団体の情報共有が鍵になる
土地情報を幅広く把握しても、それぞれの行政機関の中だけに情報がとどまれば十分に活用できません。
今回の提言では、国、都道府県、市町村がそれぞれの役割に応じた分担と連携体制を構築し、重層的に対応すべきとしています。
特に、届出対象面積未満の土地取引情報について、国が把握して地方公共団体へ提供する仕組みを構築する方向性が明確に示されています。
全国的に土地取引情報を把握する国と、地域の土地利用に近い地方公共団体を情報で結ぶ考え方です。
土地情報の一元化を考える場合、単に情報を1か所に集めることよりも、必要な行政機関が情報を共有できる仕組みが重要になるでしょう。
不適切な土地利用への対応にも情報が必要
情報連携は、土地利用への指導監督とも関係します。
資料では、周辺地域に悪影響を生じさせる土地利用であっても、土地利用関連法では必ずしも禁止されていないものが存在することを、法規制の「隙間」として問題視しています。
そこで、土地利用基本計画に「不適切な土地利用」に該当する行為を明示し、国土利用計画法に基づく指導監督を可能にする方向性が示されています。
こうした対応を行うためには、土地の取得だけでなく、その後どのように利用されているのかを把握することが重要になります。
取引情報、利用目的の情報、現地の状況などをどのようにつなげるのかが、制度の実効性を左右する可能性があります。
デジタル化の具体像までは示されていない
土地情報の照合や行政機関間の共有と聞くと、大規模なデジタルシステムによる一元管理を想像するかもしれません。
しかし、今回の資料では、具体的な情報システムの構築方法までは示されていません。
どのデータベースを利用するのか。
登記情報との照合をどのような方法で行うのか。
国と地方公共団体をどのようなシステムで接続するのか。
こうした具体的な仕組みについては、資料から判断することはできません。
現段階で確認できるのは、登記情報との照合や、国が把握した土地取引情報の地方公共団体への提供といった情報連携の方向性です。
企業側でも土地情報の一元管理が重要になる可能性
行政側で土地情報の連携が進めば、企業側でも自社の土地情報を適切に管理する重要性が高まる可能性があります。
企業が多数の不動産を所有している場合、取得時の資料が各事業所や各部門に分散していることも考えられます。
利用目的変更時の再届出が制度化されれば、取得時にどのような利用目的で届け出たのかを確認できなければ、その後の変更を適切に判断することが難しくなります。
今回の資料が企業に特定の管理システムを導入するよう求めているわけではありません。
しかし、所在地、面積、取得時の利用目的、届出状況、現在の利用状況などを確認できる状態にしておくことは、制度変更への対応を考えるうえで重要になるでしょう。
行政と企業の双方で情報の継続性が重要になる
今回の提言を通じて見えてくるのは、土地情報を一時点だけで管理することの限界です。
土地を取得した時点の情報だけでは、その後の利用状況までは分かりません。
現在の利用状況だけを見ても、取得時から何が変わったのかは分かりません。
そこで、取得時の情報と、その後の利用目的の変更をつなげて把握する考え方が重要になります。
行政にとっても企業にとっても、土地情報を継続的に管理することが今後の重要なテーマになる可能性があります。
情報の一元化と規制強化は同じではない
注意したいのは、行政が土地情報を幅広く把握することと、すべての土地取引や土地利用を新たに規制することは同じではないという点です。
今回の提言には、届出対象面積未満の土地取引についても情報を把握する方向性が示されています。
一方、それらすべてについて新たな届出義務を課すと決定されたわけではありません。
情報把握の範囲と、法的な届出義務や指導監督の範囲は分けて考える必要があります。
今後の制度設計では、どの情報を把握するのかと、その情報をどのような行政対応に利用するのかの両方を確認することが重要です。
結論
今回の提言では、土地情報を個別の制度の中だけで管理するのではなく、相互に照合し、国と地方公共団体の間で共有する方向性が示されています。
届出対象面積未満の土地取引情報についても国が把握し、地方公共団体へ提供します。
登記情報との照合によって無届事案を把握し、必要に応じて現地調査につなげます。
さらに、取得後に利用目的が変更された場合には再届出を求め、土地利用を継続的にモニタリングする方向です。
ただし、土地情報を一元的に管理する具体的なシステムが決まったわけではありません。
今後の焦点は、土地に関する複数の情報をどのようにつなぎ、国、都道府県、市町村がどのように共有し、実際の土地行政に活用するかです。
土地情報を「集める」段階から「つなげて活用する」段階へ。
今回の提言は、土地管理の仕組みがその方向へ進む可能性を示しているといえるでしょう。
参考
企業実務 2026年10月号 土地の取得・利用に関する規制の見直しを求める提言がまとめられる