住宅ローンをいくらまで借りられるのかを考えるとき、重要な指標の1つが返済負担率です。
返済負担率とは、年収に対して住宅ローンなどの年間返済額がどれくらいの割合を占めるのかを示すものです。
住宅ローンの審査でも使われる重要な指標ですが、ここで注意したいことがあります。
金融機関の審査で認められる返済負担率と、家計が無理なく維持できる返済負担率は必ずしも同じではありません。
金利が上昇する時代には、審査に通るかどうかだけではなく、返済後の生活にどれだけ余裕が残るのかを見る必要があります。
返済負担率とは何か
返済負担率は、年間の返済額が年収に占める割合です。
例えば、年収800万円の人が住宅ローンを毎月15万円返済するとします。
年間返済額は180万円です。
この場合、年収800万円に対して年間180万円を返済するため、返済負担率は22.5%になります。
毎月の返済額が20万円なら年間240万円となり、返済負担率は30%です。
このように返済負担率を見ることで、収入に対してどの程度の返済を抱えているのかを確認できます。
住宅ローン審査では他の借入れも含まれる
返済負担率を考えるときに注意したいのが、住宅ローンだけを見るとは限らないことです。
自動車ローン、教育ローン、カードローンなどがあれば、それらの返済額も含めて審査される場合があります。
例えば、住宅ローンの返済だけなら余裕があるように見えても、自動車ローンなどの返済が重なれば家計負担は大きくなります。
住宅ローンを申し込む前に他の借入れを整理することが重要とされるのは、このためです。
住宅ローンは単独で考えるのではなく、家計が抱えている借入れ全体で考える必要があります。
審査に通る返済負担率と安全な返済負担率は違う
住宅ローン審査では、金融機関ごとに返済負担率などについて一定の基準があります。
しかし、その基準以内だからといって、家計に十分な余裕があるとは限りません。
例えば、同じ返済負担率30%でも、家庭によって実際の負担感は大きく異なります。
子どもの人数、教育方針、自動車の保有、親の介護、住宅以外の資産などによって必要なお金が違うからです。
金融機関の審査基準は、家計の理想的な生活費まで保証してくれる基準ではありません。
審査に通ったことを、そのまま安全な借入額であると考えないことが大切です。
額面年収ではなく手取りで考える
返済負担率では一般的に額面年収が使われます。
しかし、実際に住宅ローンを返済するのは手取り収入からです。
給与からは所得税、住民税、社会保険料などが差し引かれます。
例えば額面年収に対する住宅ローン返済額が25%だったとしても、手取り収入に対する割合はそれより高くなります。
さらに、住宅購入後には固定資産税なども必要になります。
マンションなら管理費や修繕積立金、駐車場代などが発生することもあります。
住宅ローン返済額だけを住宅費と考えてはいけません。
実際に毎月自由に使えるお金から住宅関連費用を差し引いて、家計にどれだけ余裕が残るかを見る必要があります。
金利が上昇すると返済負担率も変わる
変動金利型住宅ローンでは、借入時点の返済負担率だけを確認しても十分ではありません。
将来金利が上昇すれば、利息負担が増えるからです。
借入時点では返済負担率に余裕があっても、金利上昇によってその余裕が小さくなる可能性があります。
そのため、変動金利を利用する場合には、現在の金利だけでなく、金利が1%上昇した場合や2%上昇した場合についても返済額を確認しておくことが重要です。
金利上昇を正確に予測する必要はありません。
複数の金利水準を想定して、どこまでなら家計が耐えられるのかを確認することが重要なのです。
収入が減る場合も考える
住宅ローンの返済期間は長期にわたります。
その間、収入がずっと増え続けるとは限りません。
共働き世帯であれば、出産や育児によって一時的に片方の収入が減ることがあります。
転職や介護などによって働き方が変わる可能性もあります。
さらに、住宅ローン返済が60歳以降まで続く場合には、定年や再雇用による収入変化も考える必要があります。
現在の年収だけで返済負担率を計算するのではなく、将来収入が減少した場合にも返済できるかを見ることが大切です。
教育費が増える時期にも注意する
住宅ローン返済と教育費の負担が重なる家庭では、特に注意が必要です。
住宅購入直後は子どもが小さく、教育費がそれほどかからない場合があります。
その時点では住宅ローン返済に余裕があるように見えます。
しかし、子どもが中学校、高校、大学へ進学するにつれて教育費が増える可能性があります。
住宅ローンの返済額が変わらなくても、家計全体の余裕は小さくなるのです。
住宅ローンを組むときには、現在の家計だけではなく、将来最も支出が大きくなる時期を想定しておく必要があります。
返済しながら貯蓄できるかを見る
住宅ローンの安全性を考えるうえで、もう1つ重要なのが貯蓄です。
毎月の住宅ローンを返済できても、まったく貯蓄できない状態であれば家計には余裕がありません。
住宅設備の故障や病気、収入減少など、予定外の出来事が起きたときに対応できなくなるからです。
また、住宅ローン返済と並行して老後資金も準備する必要があります。
したがって、返済負担率を見るときには「返済できるか」だけではなく、「返済した後にも継続して貯蓄できるか」を確認することが重要です。
結論
返済負担率は、住宅ローンの借入額を考えるための重要な指標です。
しかし、金融機関の審査基準を満たしているからといって、その住宅ローンが家計にとって安全とは限りません。
返済負担率は額面年収だけではなく、実際の手取り収入から考える必要があります。
さらに、管理費や修繕積立金、固定資産税、教育費なども考慮しなければなりません。
変動金利を利用するなら金利上昇、共働きなら収入減少、返済期間が長ければ定年後の収入変化も想定する必要があります。
住宅ローンで重要なのは、返済負担率を限界まで高めて借入額を増やすことではありません。
住宅ローンを返済しながら生活を維持し、貯蓄や教育費、老後資金まで準備できる余裕を残すことです。
返済負担率は「いくら借りられるか」を知るためだけではなく、「いくらまでなら安心して返せるか」を考えるために使うことが重要です。
参考
日本経済新聞 2026年9月26日 朝刊 住宅ローン金利上昇に備え 借入額抑制や貯蓄が重要に