財形貯蓄の非課税とは何か 550万円まで税金がかからない仕組み編

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

財形貯蓄には、会社員などが給与から自動的にお金を積み立てられるという特徴があります。

しかし、財形貯蓄のメリットは給与天引きだけではありません。

三つある財形貯蓄のうち、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄には税制上の優遇措置があります。

一定の要件を満たせば、両方を合わせて元利金550万円まで、その元利金から生じる利子などが非課税になります。

ここで注意したいのが、「550万円の貯蓄そのものに税金がかからない」という意味ではないことです。

そもそも預金の元本には通常、税金はかかりません。

財形で非課税になるのは、そこから生じる利子などです。

今回は、通常の預金利息にはどのような税金がかかるのか、財形の「元利金550万円」とは何を意味するのか、制度改正で限度額が引き上げられると何が変わるのかを整理します。

通常の預金利息には税金がかかる

銀行にお金を預けて利息を受け取ると、その利息には原則として税金がかかります。

個人が受け取る預貯金の利子には、所得税と復興特別所得税、住民税を合わせて20.315%が課税されるのが基本です。

例えば100万円を預け、1年間に1万円の利息が付いたとします。

税引前では1万円ですが、約2032円が税金として差し引かれるため、実際に受け取れる金額は約7968円になります。

金利が非常に低かった時代には、そもそもの利息が少なかったため、利息にかかる税金もわずかでした。

ところが金利が上昇すると事情が変わります。

例えば500万円を年2%で運用すれば、単純計算では年間10万円の利息が発生します。

通常の預金なら、この10万円から約2万円の税金が差し引かれることになります。

金利が高くなるほど、利息を非課税にできる制度の価値も高くなるわけです。

財形ならすべて非課税になるわけではない

財形貯蓄には三つの種類があります。

一般財形貯蓄

財形年金貯蓄

財形住宅貯蓄

このうち税制上の非課税措置が設けられているのは、一定の要件を満たす財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄です。

一般財形貯蓄については、給与天引きで積み立てることはできますが、原則として通常の預貯金などと同様に利子などに課税されます。

つまり、「財形なら利息が非課税」と一括りにすることはできません。

老後資金を目的とする財形年金と、住宅取得などを目的とする財形住宅について、目的を限定する代わりに税制優遇を設けているのです。

元利金550万円とは何を意味するのか

財形の税制を理解するときに少し分かりにくいのが、「元利金550万円まで」という表現です。

元利金とは、元本とそこから生じた利子などを合わせた金額です。

例えば財形住宅に500万円を積み立て、その後利息が付いて残高が510万円になったとします。

この場合、元本500万円だけを見るのではなく、利息を含めた510万円という元利金で非課税限度額を考えます。

現行制度では、原則として財形年金と財形住宅を合わせて元利金550万円までについて、そこから生じる利子などを非課税にできます。

したがって、「550万円まで積み立てれば、その後どれだけ利息が増えても無制限に非課税」という単純な仕組みではありません。

非課税限度額を管理しながら利用する制度になっています。

550万円そのものが節税額ではない

もう一つ重要なのは、550万円がそのまま非課税になる所得の金額ではないことです。

550万円は非課税制度の対象となる元利金の限度額です。

実際の税制メリットは、そこから発生する利子などに本来かかる税金がなくなることです。

例えば、単純化して550万円から年間11万円の利息が発生したとします。

通常なら20.315%の税金がかかるため、約2万2300円が税金として差し引かれます。

財形の非課税要件を満たしていれば、この税負担を避けることができます。

したがって財形の非課税メリットは、金利によって大きく変わります。

低金利ならメリットは小さくなり、金利が高くなればメリットは大きくなります。

今回、財形制度が改めて注目されている背景には、「金利ある世界」への変化があります。

年金財形と住宅財形は合算する

550万円という非課税限度額を考えるうえで特に注意したいのが、財形年金と財形住宅の関係です。

基本的には、それぞれ550万円ずつ使えるわけではありません。

両方を利用している場合には合算して考えます。

例えば財形年金の元利金が300万円、財形住宅の元利金が250万円なら、合計550万円です。

この時点で基本的な非課税限度額に達することになります。

一方、財形年金が200万円、財形住宅が200万円なら合計400万円なので、限度額まで150万円の余地があるという考え方になります。

老後資金と住宅資金という二つの目的がありますが、税制上の非課税枠は共通して管理されるのが基本です。

なぜ非課税限度額が設けられているのか

それでは、なぜ無制限に非課税としないのでしょうか。

財形の税制優遇は、勤労者による住宅取得や老後資金づくりを支援するために設けられています。

一方、無制限に非課税にすると、多額の金融資産を持つ人ほど大きな税制メリットを受けられる可能性があります。

そこで一定額までを政策的に支援する仕組みになっています。

これはNISAなどにも共通する考え方です。

資産形成を税制面から支援しながら、非課税になる金額には一定の上限を設けるわけです。

問題は、その上限が経済環境の変化に合っているかどうかです。

550万円は1994年から変わっていない

現在の550万円という非課税限度額は、1994年から据え置かれています。

30年以上、同じ金額です。

しかし、その間に賃金も物価も住宅価格も変化しました。

特に住宅価格の上昇は大きく、2025年までの15年間で戸建て価格は約1.2倍、マンション価格は約2.2倍になったとされています。

仮に住宅価格が3000万円なら、550万円は住宅価格の約18%に相当します。

住宅価格が6000万円になれば、同じ550万円でも約9%にすぎません。

制度上は同じ550万円でも、住宅購入を支援する力は実質的に小さくなります。

これが非課税限度額の引き上げが検討される大きな理由です。

限度額が引き上げられると何が変わるのか

仮に非課税限度額が550万円から引き上げられれば、より多くの資金を非課税制度の対象として積み立てられるようになります。

特に影響を受ける可能性があるのが、財形住宅を利用して住宅購入の頭金を準備する人です。

住宅価格が上昇すれば、必要となる頭金の金額も大きくなります。

550万円という枠を超えて住宅資金を準備したい人にとって、限度額の拡大は制度を利用しやすくする方向に働きます。

財形年金についても同様です。

物価が上昇すれば、老後に必要となる生活費も増えます。

30年前の550万円と現在の550万円では、購入できる商品やサービスの量が違います。

限度額の引き上げには、インフレによって低下した非課税枠の実質的な価値を回復させる意味があります。

金利上昇によって限度額引き上げの効果も大きくなる

さらに、今回の見直しでは金利上昇も重要です。

仮に非課税限度額が引き上げられても、金利がほぼゼロなら節税効果は限定的です。

しかし金利が上昇すると、非課税対象となる元利金が増える効果が大きくなります。

例えば500万円に年2%の利息が付けば年間10万円ですが、1000万円なら年間20万円です。

通常なら、それぞれの利息に20.315%の税金がかかります。

非課税対象となる元利金が増えれば、税金を差し引かれずに受け取れる利息も増える可能性があります。

長い超低金利時代には目立たなかった財形の税制優遇が、金利上昇によって再び意味を持ち始めているのです。

非課税には条件がある

もっとも、財形年金や財形住宅は、単に積み立てれば無条件で非課税になる制度ではありません。

それぞれ目的が定められています。

財形年金は老後の年金資金として利用することを前提とし、財形住宅は住宅取得や一定のリフォームなどに利用することを前提としています。

目的外の払い出しをすると、原則として非課税措置を受けられなくなる場合があります。

つまり税制優遇と引き換えに、資金の使い道に一定の制約を設けているわけです。

自由に使える一般財形と、税制優遇のある年金財形や住宅財形との大きな違いがここにあります。

結論

財形貯蓄の非課税制度とは、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄について、一定の要件を満たせば合計で元利金550万円まで、その元利金から生じる利子などを非課税にできる仕組みです。

通常の預金利息には所得税、復興特別所得税、住民税を合わせて20.315%が課税されます。

財形の非課税制度を利用すれば、この税負担を抑えることができます。

ただし、550万円そのものが所得から控除されたり、550万円分の税金が免除されたりするわけではありません。

あくまで550万円は非課税制度の対象となる元利金の限度額であり、実際に非課税になるのはそこから生じる利子などです。

現在の550万円という限度額は1994年から30年以上据え置かれてきました。

その間に住宅価格や物価は上昇し、550万円の実質的な価値は低下しています。

さらに日本が「金利ある世界」に移れば、利子に対する非課税メリットそのものも大きくなります。

厚生労働省が検討する非課税限度額の引き上げは、単純な税制優遇の拡大というだけではありません。

30年以上変わらなかった金額基準を、インフレや住宅価格、金利上昇という現在の経済環境に合わせ直す見直しと考えることができます。

参考

日本経済新聞 2026年8月22日 朝刊 厚労省、財形の非課税限度額上げ インフレ対応で検討

日本経済新聞 2026年8月22日 朝刊 財形貯蓄制度とは

タイトルとURLをコピーしました