流動性プレミアムとは何か 資金を長期間動かせない代わりに追加リターンを期待する仕組み編

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投資では、一般に高いリターンを期待するほど、それに見合ったリスクを引き受ける必要があります。

オルタナティブ投資で重要になるリスクの1つが、資産を売りたいときに簡単に売却できない流動性リスクです。

では、なぜ投資家はわざわざ換金しにくい資産へ投資するのでしょうか。

その理由を理解するための重要な考え方が「流動性プレミアム」です。

資金を自由に動かせないという不便さを引き受ける代わりに、追加的なリターンを期待する考え方です。

プレミアムとは何か

投資の世界でいうプレミアムとは、あるリスクを引き受けることによって期待される追加的な収益を意味します。

例えば、安全性の高い資産とリスクの高い資産がまったく同じ期待リターンであれば、多くの投資家は安全性の高い資産を選ぶでしょう。

あえてリスクの高い資産を保有するためには、それに見合った追加的なリターンが期待できる必要があります。

つまり、

リスクを引き受ける

その対価として追加的なリターンを期待する

という関係です。

流動性プレミアムも、この考え方の1つです。

流動性プレミアムとは何か

流動性プレミアムとは、換金しにくい資産を保有することに対して投資家が期待する追加的なリターンです。

上場株式であれば、証券取引所を通じて比較的容易に売却できます。

一方、PEなどの非上場資産では、売却したいと思ってもすぐに売却できるとは限りません。

投資商品によっては、長期間にわたって資金を引き出せないこともあります。

投資家から見れば、これは大きな制約です。

その制約を受け入れる代わりに、流動性の高い資産より高いリターンを期待するわけです。

お金を自由に使えないことには価値がある

例えば、同じようなリスクを持つ2つの投資商品があるとします。

一方はいつでも売却できます。

もう一方は10年間売却できません。

期待リターンまで同じであれば、多くの人はいつでも売却できる商品を選ぶでしょう。

10年間売却できない商品を選んでもらうためには、それに見合った魅力が必要になります。

その1つが、より高い期待リターンです。

つまり、流動性そのものにも経済的な価値があります。

「いつでも現金に戻せる」という自由を手放すことには、対価が必要になると考えることができます。

PEで流動性プレミアムが期待される理由

PEは流動性プレミアムを理解しやすい代表的な投資対象です。

PEでは、主として非上場企業の株式へ投資します。

非上場株式は証券取引所で日々売買されていません。

投資した後、企業価値を高め、株式を別の企業などへ売却したり、投資先企業を上場させたりするまで資金を回収できないことがあります。

この間、投資家は自由に資金を動かせない可能性があります。

そのため、上場株式にはない流動性リスクを引き受けることになります。

この追加的なリスクに対する対価の1つとして期待されるのが、流動性プレミアムです。

長期投資家ほど流動性プレミアムを狙いやすい

流動性プレミアムは、すべての投資家が同じように獲得できるわけではありません。

重要なのは、その資金をどれくらい長く使わずにいられるかです。

例えば、大学基金などは非常に長い期間を前提として資産を運用できます。

明日すべての資産を現金化する必要はありません。

そのため、資産の一部について流動性を手放すことができます。

記事では、米ハーバード大学ではPEへの配分比率が約40%と上場株式より高いことが紹介されています。

長期運用できる投資家だからこそ、流動性リスクを引き受け、その対価となるリターンを狙いやすいと考えることができます。

個人投資家にも時間を味方につける余地はある

個人投資家にも、長期投資できるという特徴があります。

例えば、20年後や30年後に使う老後資金であれば、短期的な資金需要をそれほど考えなくてよい場合があります。

ただし、大学基金などとは大きな違いがあります。

個人には生活があります。

住宅購入、教育費、病気や介護など、予定していなかった資金が必要になる可能性もあります。

したがって、長期投資できるからといって、資産の大部分を流動性の低い商品へ投資することが適切とは限りません。

流動性を手放せるのは、長期間使う予定のない資金に限るという考え方が重要になります。

流動性プレミアムは保証された利益ではない

特に注意したいのは、流動性プレミアムは保証された利益ではないことです。

「10年間売却できないから、必ず高いリターンが得られる」という仕組みではありません。

投資先企業の業績が悪化することもあります。

想定した企業価値の向上を実現できないこともあります。

予定していた価格で売却できないこともあります。

最終的なリターンが上場株式を下回る可能性もあります。

流動性リスクを取ることと、高いリターンが確定することは別の話です。

あくまで追加的なリターンを期待する理由の1つと考える必要があります。

高いリターンの源泉を考える

オルタナティブ投資の商品を見ると、「高い期待リターン」が強調されることがあります。

そこで考えたいのが、

「なぜ高いリターンが期待できるのか」

ということです。

企業価値を高めることによるリターンなのか。

信用リスクを取っているからなのか。

価格変動リスクを取っているからなのか。

それとも流動性を手放しているからなのか。

期待リターンの源泉を理解すると、自分がどのようなリスクを引き受けているのかも見えてきます。

高いリターンという数字だけを見るのではなく、その裏側を確認することが重要です。

結論

流動性プレミアムとは、資産を簡単に現金化できないという流動性リスクを引き受けることに対して期待される追加的なリターンです。

PEなどのオルタナティブ資産では、投資した資金を長期間動かせない場合があります。

その不便さを受け入れる代わりに、流動性の高い資産を上回るリターンを期待する考え方があります。

ただし、流動性プレミアムは保証された利益ではありません。

重要なのは、高いリターンだけを見るのではなく、そのリターンが何の対価なのかを考えることです。

投資では「自由にお金を動かせること」にも価値があります。

その自由を手放すことによって何を得ようとしているのかを理解することが、オルタナティブ投資を判断するうえで重要になります。

参考

日本経済新聞 2026年9月26日朝刊 何のためのオルタナ投資か

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