投資商品を選ぶとき、多くの人が最初に確認するのは利回りや期待リターンではないでしょうか。
しかし、投資にはもう1つ重要な視点があります。
「必要になったときに売却して現金にできるか」ということです。
この換金のしやすさを流動性といいます。
オルタナティブ投資では、高いリターンが期待できる一方、簡単には換金できない商品があります。
そこで重要になるのが流動性リスクです。
流動性とは何か
流動性とは、資産をどれだけ容易に現金へ換えられるかを示す考え方です。
現金そのものは、すぐに支払いに使えるため流動性が非常に高い資産です。
上場株式も比較的流動性が高い資産です。
証券取引所で日々売買されているため、市場が開いていれば売却することができます。
一方、非上場株式や不動産などは事情が異なります。
買い手を探す必要があり、売却までに長い時間がかかることがあります。
このような資産は流動性が低いといいます。
流動性リスクとは何か
流動性リスクとは、資産を売却したいときに売却できなかったり、売却するために大幅な値下げを迫られたりするリスクです。
例えば、1,000万円の価値があると評価されている資産を持っていたとします。
帳簿上や評価上は1,000万円の価値があります。
しかし、急いで現金化しようとしても買い手が見つからなければ、すぐには1,000万円を手にすることができません。
早く売却するために900万円や800万円まで価格を下げなければならないことも考えられます。
資産価値と、実際に現金化できる金額は必ずしも同じではないのです。
上場株式との大きな違い
上場株式には証券取引所という売買市場があります。
多くの投資家が参加しているため、売り手と買い手を比較的見つけやすい仕組みになっています。
一方、PEなどの非上場資産には、上場株式と同じような市場がありません。
「今日売却したい」と思っても、すぐに買い手が現れるとは限りません。
投資商品によっては、そもそも一定期間売却できない契約になっている場合もあります。
この違いは、投資家にとって非常に重要です。
投資で利益が出ていても、その資産を必要なときに現金化できなければ、生活資金として利用することはできないからです。
売れないこと自体がリスクになる
投資のリスクというと、価格が下落することを想像しがちです。
しかし、価格が下落していなくてもリスクは存在します。
それが「売れない」というリスクです。
例えば、老後の生活費として500万円が必要になったとします。
上場株式や投資信託であれば、価格変動はあるものの、売却して現金化できる可能性があります。
ところが、資金が長期間拘束されるPEなどに投資していれば、必要な時期に500万円を取り出せない可能性があります。
評価額が高くても、使えなければ生活資金にはなりません。
流動性リスクは、価格変動とは別に考える必要があります。
なぜ流動性の低い資産に投資するのか
それでは、なぜ投資家はわざわざ流動性の低い資産へ投資するのでしょうか。
理由の1つが、より高いリターンへの期待です。
投資家にとって、資金を長期間自由に動かせないことは不利な条件です。
その不利な条件を受け入れるのであれば、その対価として追加的なリターンがなければ投資する魅力は小さくなります。
そこで、流動性の低さを引き受けることに対する追加的なリターンが期待されます。
これを流動性プレミアムと呼びます。
つまり、流動性リスクと期待リターンには密接な関係があります。
長期投資家は流動性リスクを取りやすい
流動性リスクをどこまで取れるかは、投資家によって異なります。
例えば、大学基金や年金基金などは長期間運用することを前提としています。
すべての資産を明日現金化する必要はありません。
そのため、資産の一部をPEなどの流動性の低い資産へ振り向けることができます。
一方、個人の場合は事情が違います。
住宅購入、教育費、医療費、老後の生活費など、まとまった資金が必要になる可能性があります。
長期投資できるからといって、すべての資産を長期間換金できない商品へ投資することはできません。
高利回りだけで判断してはいけない
流動性の低い商品を見るときに注意したいのが、利回りだけで比較しないことです。
例えば、いつでも売却できる商品と、10年間資金を動かせない商品が同じ5%の期待リターンだったとします。
数字だけを見ると同じです。
しかし、投資家にとっての条件はまったく違います。
後者では10年間資金を使えないという制約を負います。
したがって、リターンを比較するときには、
どの程度価格が変動するのか。
いつ売却できるのか。
途中解約できるのか。
売却時に価格が下がる可能性はあるのか。
こうした条件も一緒に考える必要があります。
個人投資家は使う時期から逆算する
個人投資家が流動性リスクを考えるときには、お金を使う時期から逆算すると分かりやすくなります。
例えば、数年後に住宅購入の頭金として使う予定の資金であれば、換金性は非常に重要です。
一方、20年、30年先まで使う予定のない余裕資金であれば、一定の流動性リスクを取れる可能性があります。
つまり、
「この商品は高いリターンが期待できるか」
だけではなく、
「このお金はいつ必要になるのか」
を先に考える必要があります。
投資商品の流動性と、自分の資金需要を一致させることが重要なのです。
結論
流動性リスクとは、資産を売却したいときに売却できなかったり、売却するために大幅な値下げが必要になったりするリスクです。
PEや不動産などのオルタナティブ資産には、上場株式より流動性の低いものがあります。
その不便さやリスクを引き受ける代わりに、追加的なリターンが期待される場合があります。
しかし、個人投資家にとって重要なのは、期待リターンだけではありません。
どれほど高い評価額がついていても、必要なときに現金化できなければ、そのお金を使うことはできません。
投資では「いくら増えるか」と同時に、「いつ現金に戻せるか」を確認することが重要です。
流動性は目立ちにくい要素ですが、長期投資を考えるうえで欠かすことのできない重要なリスクなのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月26日朝刊 何のためのオルタナ投資か