暗号資産を売ると課税売上割合に影響するのか 譲渡対価の5%を分母に入れる理由編

税理士
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暗号資産の譲渡は、消費税では非課税取引です。

それなら、暗号資産を売却しても消費税の計算にはほとんど関係しないように思えるかもしれません。

しかし、事業者の消費税では、売上げに消費税がかかるかどうかだけでなく、課税売上割合という重要な計算があります。

令和8年度税制改正では、暗号資産の譲渡について、この課税売上割合の計算方法が見直されます。

改正後は、暗号資産の譲渡対価の5%を課税売上割合の分母へ算入することになります。

暗号資産の売却そのものは非課税のままでも、仕入税額控除を通じて納付する消費税額に影響する可能性があるのです。

課税売上割合とは何か

事業者は、商品やサービスを仕入れたときなどに消費税を支払います。

売上げで預かった消費税から、仕入れなどで支払った消費税を差し引く仕組みが仕入税額控除です。

ただし、支払った消費税を常に全額控除できるとは限りません。

課税売上げと非課税売上げの両方を行っている事業者では、その仕入れが何のために行われたのかによって控除できる金額が変わる場合があります。

そこで重要になるのが課税売上割合です。

基本的には、売上げ全体のうち消費税の課税対象となる売上げがどの程度を占めているのかを示す割合です。

非課税売上げが増えると割合が下がることがある

課税売上割合の計算では、一定の非課税取引も分母に含まれます。

例えば、課税売上高が9,000万円、一定の非課税売上高が1,000万円であれば、単純化すると課税売上割合は90%です。

非課税売上高が増えれば、課税売上割合が低下することがあります。

課税売上割合が低くなると、仕入れ時に支払った消費税のうち控除できる金額が減少する場合があります。

その結果、売上げに対して直接消費税がかからない非課税取引でも、事業者の最終的な消費税負担に影響することがあります。

暗号資産は現在特別な取扱いになっている

暗号資産の譲渡は非課税取引ですが、現在の課税売上割合の計算では特別な取扱いが設けられています。

暗号資産の譲渡については、課税売上割合の分子にも分母にも算入しない取扱いとなっています。

そのため、暗号資産を多額に売却したとしても、その譲渡額がそのまま課税売上割合を大きく押し下げる仕組みにはなっていません。

暗号資産の売却額は大きくなりやすいため、この取扱いは事業者の消費税計算に大きな意味を持っています。

改正後は譲渡対価の5%を分母へ入れる

令和8年度税制改正では、この取扱いが変更されます。

暗号資産を譲渡した場合、その譲渡対価の5%相当額を課税売上割合の分母へ算入することになります。

例えば、暗号資産を1億円で譲渡した場合を考えてみます。

1億円全額を課税売上割合の分母へ入れるのではありません。

その5%に当たる500万円を分母へ算入します。

暗号資産の取引金額をそのまま反映するのではなく、一定割合だけを課税売上割合の計算に反映させる仕組みです。

なぜ全額ではなく5%なのか

金融商品などの譲渡では、取引金額が非常に大きくなることがあります。

例えば、1億円で取得した資産を1億100万円で売却した場合、実質的な収益は100万円でも、譲渡対価そのものは1億100万円です。

このような取引について売却額全額を課税売上割合の分母へ入れると、事業者の実際の事業構造以上に課税売上割合が大きく低下する可能性があります。

そこで、金融取引については譲渡対価の一定割合だけを課税売上割合へ反映させる考え方があります。

暗号資産についても、改正後は譲渡対価の5%を分母へ算入することで、金融資産に近い取扱いへ整理されます。

1億円売却しても1億円が分母に入るわけではない

この点は実務上、誤解しやすいところです。

暗号資産の譲渡対価が1億円だからといって、課税売上割合の分母がそのまま1億円増えるわけではありません。

改正後に算入するのは5%相当額です。

1億円なら500万円です。

5億円なら2,500万円です。

暗号資産を頻繁に売買する事業者では売却総額が非常に大きくなることがありますが、課税売上割合へ反映される金額は譲渡対価の5%となります。

課税売上割合が下がると何が起きるのか

例えば、本業で課税売上げを行っている会社が、余剰資金で暗号資産を保有しているケースを考えてみます。

会社が事務所賃料やシステム利用料、専門家報酬などについて消費税を支払っている場合、その消費税は一定の要件のもとで仕入税額控除の対象になります。

ところが暗号資産の譲渡によって課税売上割合が低下すると、共通して必要となった経費などに係る仕入税額控除額へ影響する可能性があります。

暗号資産の売却時に消費税を納めるわけではなくても、別の経費について控除できる消費税が減少する形で影響が表れることがあるわけです。

売却益ではなく譲渡対価を見る

もう1つ重要なのが、売却益ではなく譲渡対価を基準にする点です。

例えば、9,000万円で取得した暗号資産を1億円で売却したとします。

利益は1,000万円です。

しかし、課税売上割合の計算で基準となるのは、この1,000万円の利益ではありません。

譲渡対価である1億円を基礎として、その5%に当たる500万円を分母へ算入します。

所得税や法人税では利益が重要になりますが、消費税の課税売上割合では異なる考え方をするため注意が必要です。

暗号資産取引が多い企業ほど確認が必要になる

暗号資産を少額保有しているだけの事業者であれば、課税売上割合への影響は限定的な場合があります。

一方、暗号資産を頻繁に売買する企業や、多額の暗号資産を保有する企業では影響が大きくなる可能性があります。

特に、本業の課税売上高に対して暗号資産の年間譲渡額が大きい場合には注意が必要です。

暗号資産の売却損益だけを見るのではなく、年間の譲渡対価を集計し、消費税の課税売上割合へどの程度影響するのかを確認する必要があります。

暗号資産の位置付けそのものが変わる

今回の改正では、暗号資産の譲渡が非課税であるという結論そのものは変わりません。

一方、その非課税の位置付けは、支払手段に近いものから有価証券などに近い金融資産として整理される方向へ変わります。

譲渡対価の5%を課税売上割合の分母へ算入する仕組みも、この制度整理と関係しています。

さらに、暗号資産や電子決済手段の貸付けについても、課税から非課税へ変更されます。

令和8年度改正では、デジタル資産の消費税上の位置付けを金融取引に近づける複数の見直しが行われることになります。

結論

暗号資産の譲渡は、令和8年度税制改正後も消費税の非課税取引です。

そのため、暗号資産を売却した際に、通常の商品販売のように売却代金へ消費税を上乗せして納付するわけではありません。

しかし、課税売上割合の計算方法は変わります。

現行制度では暗号資産の譲渡を課税売上割合の分子と分母から除外していますが、改正後は譲渡対価の5%を分母へ算入します。

例えば、暗号資産を1億円で譲渡すれば、500万円が課税売上割合の分母へ加わることになります。

その結果、課税売上割合が低下し、仕入税額控除できる消費税額に影響する可能性があります。

暗号資産の消費税では、売却時に消費税がかかるかどうかだけを見るのでは不十分です。

今後は年間の譲渡額を把握し、課税売上割合と仕入税額控除まで含めて影響を確認することが重要になります。

参考

税のしるべ 2026年9月7日 令和8年・役に立つ消費税実務問答集

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