暗号資産を貸すと消費税はどう変わるのか 貸付けが課税から非課税になる令和8年度改正編

税理士
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暗号資産は売買するだけでなく、保有している暗号資産を他者へ貸し付け、その対価を受け取る取引も行われています。

いわゆる暗号資産レンディングなどです。

暗号資産そのものを譲渡した場合は消費税の非課税取引ですが、これまで暗号資産の貸付けは譲渡とは異なる取引として、原則として消費税の課税対象とされてきました。

令和8年度税制改正では、この取扱いが見直されます。

暗号資産の貸付けについても非課税取引とすることで、売却と貸付けの消費税上の取扱いを整理する方向です。

暗号資産の譲渡と貸付けは別の取引

暗号資産の消費税を考えるときには、売る場合と貸す場合を区別する必要があります。

暗号資産を売却すれば、暗号資産そのものを相手へ譲渡することになります。

この暗号資産の譲渡は、現在も消費税の非課税取引です。

一方、暗号資産を一定期間相手へ貸し付け、その対価として利用料などを受け取る取引は、暗号資産そのものの譲渡とは異なります。

現行制度では、この貸付けについて課税取引として扱われる場合があります。

貸付けの対価には消費税が関係していた

例えば、事業者が保有している暗号資産を一定期間貸し付け、その対価として貸付料を受け取ったとします。

現行制度では、暗号資産の貸付けは消費税の課税対象となるため、事業者はその対価について消費税を計算する必要があります。

暗号資産を売却すれば非課税なのに、貸し付ければ課税になるという違いが存在しているわけです。

暗号資産を金融資産として考えると、この取扱いには分かりにくい面があります。

令和8年度改正で非課税になる

令和8年度税制改正では、暗号資産の貸付けについて消費税を非課税とする見直しが行われます。

これにより、暗号資産そのものの譲渡だけでなく、貸付けについても消費税を課税しない方向になります。

暗号資産を金融商品に近い資産として整理していく流れの一環と考えると理解しやすくなります。

売る場合と貸す場合で大きく異なっていた消費税上の取扱いが見直されることになります。

電子決済手段の貸付けも非課税になる

今回の改正は暗号資産だけに限られません。

電子決済手段の貸付けについても、消費税を非課税とする見直しが行われます。

デジタル技術の発達によって、従来の現金や預金だけでは説明できない新しい金融資産や決済手段が広がっています。

こうした取引について、従来の金融取引との整合性を考えながら消費税上の位置付けを整理する必要が生じています。

暗号資産と電子決済手段の貸付けを非課税とする改正も、その一環です。

非課税になると受取額だけを見るのでは足りない

貸付けの対価が非課税になれば、受け取った貸付料について消費税を納めなくてよくなるため、単純に有利になるようにも見えます。

しかし、消費税では売上側だけでなく仕入側も考える必要があります。

事業者が課税売上げを行うために支払った消費税は、一定の要件を満たせば仕入税額控除できます。

一方、非課税売上げに対応する課税仕入れについては、仕入税額控除が制限される場合があります。

そのため、貸付けが非課税になることによって、事業者全体の仕入税額控除に影響する可能性があります。

課税売上割合との関係が重要になる

非課税売上げがある事業者では、課税売上割合が重要になります。

課税売上割合は、事業者が支払った消費税のうち、どの程度を仕入税額控除できるのかを判断するときに使われます。

暗号資産の貸付けが非課税になると、その取引を行う事業者は課税売上割合への影響についても確認する必要があります。

特に暗号資産関連の取引を大規模に行う事業者では、貸付料に直接消費税がかからなくなる効果だけでなく、仕入税額控除への影響まで含めて検討することが重要です。

所得税や法人税まで非課税になるわけではない

暗号資産の貸付けが消費税の非課税取引になることと、貸付けによる収益そのものに税金がかからなくなることは別です。

個人が暗号資産の貸付けによって収益を得れば、所得税上の所得として取り扱われる可能性があります。

法人が暗号資産の貸付けによって収益を得れば、法人税の所得計算にも影響します。

今回変更されるのは消費税上の取扱いです。

消費税が非課税という言葉を、すべての税金が非課税になるという意味で捉えないことが重要です。

改正前後の取引時期を確認する

税制改正では、いつから新しい取扱いが適用されるのかも重要です。

暗号資産や電子決済手段の貸付けに関する非課税化は、令和8年度税制改正に基づき、政令で定められる施行時期から適用されます。

継続的な貸付契約を結んでいる事業者では、改正前と改正後で消費税の取扱いが変わる可能性があります。

契約期間が長い場合には、どの期間の貸付対価について旧制度と新制度のどちらを適用するのかを確認することが必要です。

デジタル資産を金融取引として整理する流れ

今回の改正を単独で見ると、暗号資産の貸付けを課税から非課税へ変更するだけに見えます。

しかし、令和8年度改正では暗号資産の譲渡についても、消費税上の位置付けが見直されます。

暗号資産を支払手段に近いものとして扱う考え方から、有価証券などに近い金融資産として整理する方向へ変わります。

貸付けの非課税化も、この大きな制度整理の一部として理解すると分かりやすくなります。

結論

暗号資産の譲渡は現在も消費税の非課税取引ですが、暗号資産の貸付けについては課税取引として扱われる場合があります。

令和8年度税制改正では、この取扱いが見直され、暗号資産の貸付けも非課税になります。

電子決済手段の貸付けについても同様に非課税となります。

これによって、暗号資産を売る場合と貸す場合の消費税上の取扱いが整理されます。

ただし、非課税になることで貸付料に消費税がかからなくなる一方、課税売上割合や仕入税額控除へ影響する可能性があります。

また、消費税が非課税になっても、貸付けによる収益について所得税や法人税の問題がなくなるわけではありません。

暗号資産の税務では、売却時に消費税がかかるかだけではなく、貸付け、課税売上割合、仕入税額控除まで含めて制度全体を見ることが重要になっています。

参考

税のしるべ 2026年9月7日 令和8年・役に立つ消費税実務問答集

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