日本のマンションを所有している海外在住のオーナーから依頼を受け、日本の不動産会社がそのマンションの売却を仲介するケースがあります。
物件は日本にありますが、仲介サービスを受けるオーナーは海外に住んでいます。
この場合、不動産会社が受け取る仲介手数料には日本の消費税がかかるのでしょうか。
従来は一定の要件を満たせば、非居住者に対する役務提供として輸出免税になる場合がありました。
しかし、令和8年度税制改正によって取扱いが変わります。
令和8年10月1日以後は、国内にある不動産の売買や交換、貸付けに関する一定の代理や仲介について、相手が海外に住んでいても原則として輸出免税の対象から除外され、消費税が課税されることになります。
不動産そのものと仲介サービスは分けて考える
最初に整理しておきたいのが、不動産そのものの取引と、不動産会社が提供する仲介サービスは別の取引だということです。
例えば、海外在住者が日本国内のマンションを売却するとします。
マンションそのものの売却については、土地部分と建物部分でも消費税の取扱いが異なります。
一方、不動産会社が売主と買主の間に入り、売買を成立させるために提供する仲介サービスについては、その仲介手数料について別に消費税を判定します。
今回の改正で重要なのは、この仲介サービスに対する消費税です。
非居住者へのサービスには輸出免税がある
日本の事業者が非居住者や外国法人などに一定のサービスを提供する場合、消費税の輸出免税が適用されることがあります。
サービスを受ける相手が国外にいる場合、日本国内での消費とは考えにくい取引があるためです。
そのため、海外在住のオーナーから依頼を受けて日本の不動産会社が仲介業務を行った場合でも、従来は一定の要件を満たせば非居住者に対する役務提供として輸出免税となるケースがありました。
つまり、日本の不動産に関する仕事であっても、サービスの相手が非居住者であることによって仲介手数料が輸出免税になる場合があったわけです。
国内不動産の仲介という点が重視される
令和8年度税制改正では、この取扱いが見直されます。
国内に所在する不動産の売買、交換、貸付けに関する代理や仲介などについては、非居住者に対する役務提供であっても輸出免税の対象から除外されます。
つまり、誰から依頼を受けたのかだけでなく、何について仲介しているのかを重視する仕組みに変わります。
海外在住者から依頼を受けていても、対象が日本国内の不動産であれば、日本の消費税を課税する方向になります。
海外在住だから免税とは限らなくなる
例えば、海外に住む個人が東京都内に投資用マンションを所有しているとします。
このオーナーが日本の不動産会社へマンションの売却仲介を依頼しました。
不動産会社が売買を成立させ、仲介手数料として330万円を受け取るケースを考えます。
改正後は、依頼者が海外在住だからという理由だけで輸出免税にすることはできません。
国内不動産の売買に関する仲介サービスに該当するため、原則として消費税の課税対象になります。
売買だけでなく交換や貸付けも対象になる
今回の改正は、不動産売買の仲介だけを対象にしているわけではありません。
国内不動産の売買に加えて、交換や貸付けに関する一定の代理や仲介も対象になります。
例えば、海外在住のオーナーが日本国内に所有する物件について、日本の不動産会社へ賃貸借の仲介を依頼するケースも考えられます。
相手が非居住者であることだけを理由として輸出免税を判断するのではなく、国内不動産に関する代理や仲介であるかどうかを確認する必要があります。
令和8年10月1日から取扱いが変わる
新しい取扱いは、原則として令和8年10月1日から適用されます。
したがって、不動産会社ではこの日を境に、非居住者から受け取る仲介手数料の消費税判定を見直す必要があります。
特に海外投資家を顧客としている不動産会社や、外国人向け不動産サービスを提供している事業者には影響があります。
これまで輸出免税として処理してきた取引が、改正後は課税売上げになる可能性があるためです。
契約時期による経過措置にも注意する
制度変更では、令和8年10月1日以後に行われる取引がすべて一律に新制度になるとは限りません。
今回の改正には契約時期に関する経過措置があります。
令和8年3月31日までに締結された一定の契約に基づく取引については、従来の取扱いが適用され、要件を満たせば輸出免税となる場合があります。
そのため、実務では仲介サービスを行った日だけを見るのではなく、契約をいつ締結したのかも確認する必要があります。
長期間にわたる不動産取引では特に重要です。
仲介手数料の価格設定にも影響する
これまで輸出免税としていた仲介手数料が課税取引になれば、顧客への請求方法にも影響します。
例えば、これまで300万円の仲介手数料を輸出免税として請求していた取引が、改正後に課税対象となれば、消費税を含めた価格設定を検討する必要があります。
契約書に仲介手数料を税込みで定めているのか、税抜きで定めているのかによっても事業者の実質的な収入が変わる可能性があります。
税務処理だけでなく、契約書や見積書、請求書の表示まで確認することが重要になります。
不動産の所在地を確認することが重要になる
改正後の実務では、顧客がどこに住んでいるかだけでなく、仲介対象となる不動産がどこに所在するかが一段と重要になります。
海外在住者からの依頼だから輸出免税と機械的に判断するのは危険です。
国内にある不動産の売買、交換、貸付けに関する代理や仲介であれば、新しい規定の対象になる可能性があります。
顧客の居住地と不動産の所在地という2つの情報を分けて確認する必要があります。
結論
令和8年度税制改正によって、非居住者に対する国内不動産の仲介サービスの消費税が大きく変わります。
従来は、海外在住のオーナーなど非居住者から依頼を受けた不動産仲介について、一定の要件を満たせば輸出免税となる場合がありました。
しかし、令和8年10月1日以後は、国内に所在する不動産の売買、交換、貸付けに関する一定の代理や仲介について、非居住者向けであっても輸出免税の対象から除外され、原則として消費税が課税されます。
重要なのは、サービスを受ける人が海外にいるかどうかだけで判断しないことです。
誰にサービスを提供したのかに加えて、何についてサービスを提供したのかを見る必要があります。
なお、令和8年3月31日までに締結された一定の契約については経過措置があるため、契約時期の確認も欠かせません。
海外投資家を顧客とする不動産会社では、税務処理だけでなく、契約書、仲介手数料の価格設定、請求書まで含めて令和8年10月からの取扱いを確認する必要があります。
参考
税のしるべ 2026年9月7日 令和8年・役に立つ消費税実務問答集