大胆な投資促進税制ではなぜ建物も対象になるのか 機械だけではない設備投資支援の仕組み編

税理士
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設備投資税制と聞くと、工場に設置する大型の機械や製造装置を思い浮かべる人が多いかもしれません。

しかし、令和8年度税制改正で創設された大胆な投資促進税制では、一定の機械装置だけでなく、建物、建物附属設備、構築物なども対象資産に含まれています。

さらに、工具、器具備品、一定のソフトウエアなども対象になり得ます。

なぜ設備投資を促す税制で建物まで対象になるのでしょうか。

背景には、企業の生産性向上のための投資が、機械を1台導入するだけでは完結しないという事情があります。

設備投資は機械だけでは完結しない

企業が新しい工場や物流拠点などをつくる場合を考えてみます。

必要なのは製造機械だけではありません。

機械を設置する建物が必要です。

電気設備、空調設備、給排水設備なども必要になります。

敷地内の道路や外構設備などが必要になることもあります。

さらに、工場全体を制御するシステムやソフトウエアが一体となって初めて新しい生産拠点が稼働するケースもあります。

つまり、現代の設備投資は複数の資産を組み合わせて行われることが多いのです。

機械だけを税制優遇の対象にすると、企業が実際に負担する投資額の一部分しか支援できない場合があります。

建物も生産活動の重要な基盤になる

建物は単なる機械の入れ物とは限りません。

たとえば半導体や精密機器などの製造では、製造環境そのものが生産能力や品質に大きく影響します。

温度や湿度、清浄度などを厳格に管理するためには、それに対応した建物や設備が必要になります。

物流拠点でも同じです。

自動倉庫や搬送設備を導入するためには、それらを効率的に配置できる建物が必要になります。

データ処理などを行う施設では、電力供給や空調などを含めた施設全体が事業活動を支えます。

このように考えると、生産性向上投資を機械装置だけで捉えることが難しくなっていることが分かります。

建物附属設備とは何か

大胆な投資促進税制では、一定の建物附属設備も対象になります。

建物附属設備とは、建物に取り付けられ、その機能を支える設備です。

代表的なものとして、電気設備、給排水設備、衛生設備、空調設備などがあります。

工場を新設して最新の製造機械を導入しても、必要な電力を安定して供給できなければ機械は動きません。

一定の温度管理が必要な製造工程なら、空調設備も生産活動の重要な一部になります。

したがって、建物本体だけでなく、それを機能させる附属設備も投資全体の中で考える必要があります。

構築物も対象になる

対象資産には一定の構築物も含まれます。

構築物とは、土地の上に設置される建物以外の工作物などを指します。

企業の事業内容によっては、建物や機械だけでなく、こうした設備も事業活動に欠かせません。

大規模な生産拠点を整備する場合には、複数種類の資産が一体となって事業基盤を形成します。

大胆な投資促進税制では、このような投資の実態を踏まえて対象資産が設計されていると考えると分かりやすいでしょう。

機械装置などと建物では税額控除率が違う

対象資産に含まれているからといって、すべての資産が同じ条件になるわけではありません。

大胆な投資促進税制で税額控除を選択した場合、機械装置などについては取得価額の7%相当額が基本となります。

これに対して、建物、建物附属設備、構築物については4%相当額です。

たとえば対象となる機械装置を1億円取得した場合、7%なら700万円が税額控除額の計算の基礎になります。

対象となる建物を1億円取得した場合、4%なら400万円です。

同じ1億円の投資でも資産の種類によって税額控除額は異なります。

大型投資では、設備投資総額だけではなく、その内訳を確認することが重要です。

即時償却という選択肢もある

建物などについても、一定の要件を満たせば税額控除だけではなく特別償却を選択する仕組みがあります。

大胆な投資促進税制では、対象となる特定機械装置等について、取得価額から普通償却限度額を控除した金額に相当する特別償却が認められています。

これにより、実質的な即時償却が可能になります。

建物は一般に長期間使用する資産です。

通常であれば取得価額を長期間にわたって減価償却していくため、投資直後に費用化できる金額は限られます。

そのため、建物について早期に大きな償却が認められることは、投資初期の税負担とキャッシュフローに大きな影響を与える可能性があります。

建物なら何でも対象になるわけではない

ここで注意したいのは、企業が取得した建物ならすべて大胆な投資促進税制の対象になるわけではないことです。

制度では、産業競争力強化法に規定する特定生産性向上設備等に該当することなど、一定の要件が設けられています。

さらに、生産等設備を構成し、法人の事業の用に供されることなども重要になります。

単に会社名義で不動産を取得したというだけでは判断できません。

その建物がどのような事業活動に利用され、生産性向上のための投資として制度要件を満たしているのかを確認する必要があります。

生産等設備という考え方が重要になる

今回の国税庁の通達では、生産等設備の範囲についても考え方が示されています。

生産等設備とは、その法人が行う生産等活動の用に直接供される減価償却資産で構成されているものとされています。

ここで重要なのが直接供されるという点です。

建物であるというだけで対象になるのではなく、法人の生産等活動との関係を確認する必要があります。

この考え方は、建物だけでなく機械装置や器具備品などについても重要になります。

投資全体を資産別に分けて考える

新工場などの大規模投資では、投資総額が100億円だったとしても、税務上は100億円の1つの資産として扱うわけではありません。

建物、建物附属設備、構築物、機械装置、器具備品、ソフトウエアなど、さまざまな資産によって構成されています。

それぞれについて対象資産になるかどうかを確認する必要があります。

税額控除を選択する場合には、資産の種類によって7%と4%という違いもあります。

さらに、取得価額の判定単位も問題になります。

したがって、大規模な投資ほど契約総額だけを見るのではなく、投資内容を資産別に整理することが重要になります。

建物まで対象になることが大型投資を後押しする

新工場や大規模物流施設などでは、建物部分が投資額の大きな割合を占めることがあります。

もし機械装置だけが優遇対象であれば、プロジェクト全体に対する税制支援の効果は限定的になる可能性があります。

建物、建物附属設備、構築物まで一定の範囲で対象とすることで、生産拠点全体への投資を税制面から支援しやすくなります。

大胆な投資促進税制という名称の通り、個別の機械の更新だけではなく、より大きな投資を想定した制度であることが対象資産からも見えてきます。

結論

大胆な投資促進税制では、機械装置だけでなく、建物、建物附属設備、構築物、工具、器具備品、一定のソフトウエアなど幅広い資産が対象になり得ます。

企業の生産性向上投資は、機械を1台導入するだけでは完結しないからです。

新しい工場や物流拠点などでは、建物、電気設備、空調設備、機械装置、システムなどが組み合わさって初めて事業活動が可能になります。

一方、建物であれば自動的に税制優遇を受けられるわけではありません。

特定生産性向上設備等に該当することや、生産等設備として事業に使用されることなど、制度上の要件を確認する必要があります。

また、税額控除を選択する場合、機械装置などの7%に対して、建物、建物附属設備、構築物は4%とされています。

大型設備投資では総投資額だけを見るのではなく、どのような資産によって投資が構成されているのかを分解して考えることが重要です。

大胆な投資促進税制を理解するうえでは、設備投資とは機械を買うことだけではなく、企業の生産活動を支える事業基盤全体への投資であるという視点が重要になります。

参考

税のしるべ 2026年9月14日 8年度法人税関係法令の改正対応で措置法通達、大胆な投資促進税制関係など

国税庁 2026年9月4日 租税特別措置法関係通達 法人税編 の一部改正について

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