事業承継では、後継者が自社株の大部分を持っていれば安心だと考えがちです。
しかし、参考記事では、少数の株式を持つ親族や元従業員についても対応策を検討する必要があると指摘しています。
株式を少ししか持っていないからといって、株主ではなくなるわけではないからです。
会社法に基づく株主としての権利を持ち、場合によっては将来的に帳簿閲覧請求を行ったり、株主総会で経営に反対したりする可能性があります。
さらに、その株主に相続が発生すれば、株式が次の世代へ引き継がれ、会社との関係が薄い親族へ広がっていくこともあります。
事業承継では大株主だけを見るのではなく、少数株主を含めた株主構成全体を確認することが重要です。
少数株主とは何か
少数株主とは、会社の株式や議決権のうち比較的小さな割合しか持っていない株主を指します。
中小企業では、創業者やその一族が大部分の株式を所有する一方、親族や元従業員などが少数の株式を持っていることがあります。
たとえば社長が90パーセント、親族が5パーセント、元従業員が5パーセントの株式を持っているようなケースです。
社長が圧倒的多数の株式を持っているため、日常の会社経営では少数株主の存在をほとんど意識しないかもしれません。
しかし、5パーセントしか持っていなくても株主であることに変わりはありません。
参考記事でも、少数の株式を持つ親族や元従業員について、将来の事業承継を考えて対応策を検討する必要性が示されています。
少数株主にも株主としての権利があります
株主の影響力は、単純に保有株式数だけで判断できるものではありません。
参考記事では、少数株主について、将来的に帳簿閲覧請求を行ったり、株主総会で経営に反対したりするリスクを挙げています。
つまり、経営に参加していない人だから関係ないとはいえません。
会社の株式を持っている以上、株主として会社との関係が続きます。
創業者と親しい親族や元従業員であれば、現在は会社経営に協力的かもしれません。
しかし、事業承継によって社長が交代すれば、後継者との関係が同じとは限りません。
先代社長との信頼関係によって問題になっていなかった株主関係が、世代交代をきっかけに変化する可能性があります。
事業承継では、現在問題が起きているかどうかだけではなく、将来どのような問題が起こり得るかという視点が必要になります。
株式が親族へ分散すると問題が大きくなります
少数株主の問題で特に注意したいのが相続です。
株主が亡くなれば、その人が持っていた株式も相続財産になります。
たとえば創業者の弟が自社株を少数持っていたとします。
創業者と弟の関係が良好であれば、その株式が会社経営の障害になることはなかったかもしれません。
しかし弟が亡くなり、その子どもたちへ株式が相続されれば状況は変わります。
さらに次の相続が起これば、株式はより多くの親族へ広がっていく可能性があります。
会社で働いたことがなく、現在の経営者ともほとんど交流がない人が株主になることも考えられます。
最初は数パーセントの株式だったとしても、権利関係が複数の親族へ広がれば、将来の整理は難しくなります。
そのため、現在の株主だけではなく、その株式が将来誰へ引き継がれる可能性があるのかまで考えることが重要です。
元従業員が株主として残っている場合もあります
参考記事では、少数株主の例として親族だけでなく元従業員も挙げています。
長い歴史を持つ会社では、過去の事情によって従業員が自社株を取得し、その後退職しても株式を持ち続けているケースがあります。
会社で働いている間は、会社との関係が深いため問題が表面化しないかもしれません。
しかし退職すれば、会社との関係は変わります。
さらに元従業員が亡くなれば、その株式を家族が相続する可能性があります。
すると会社とは直接関係のなかった人が株主になります。
事業承継を円滑に進めるためには、誰が現在株式を持っているのかを確認し、親族だけでなく元従業員などの株主についても把握しておく必要があります。
株式の譲渡制限を確認する必要があります
少数株主への対応として、参考記事が挙げている重要な確認事項が定款です。
まず自社の定款を確認し、株式を勝手に売買させないための譲渡制限条項が適切に設定されているかを再確認するとしています。
非上場の中小企業にとって、誰が株主になるかは重要な問題です。
少数株主が自分の株式を第三者へ譲渡できる状態になっていれば、会社が想定していない人物が株主になる可能性があります。
そこで事業承継前に、現在の定款がどのような内容になっているのかを確認する必要があります。
会社を設立したときに作った定款を、その後ほとんど確認していない会社もあるでしょう。
しかし株主構成と定款は、後継者の経営権を安定させるための重要な確認項目になります。
会社による自己株式の買取りも検討事項になります
参考記事では、分散株主への対応策として、会社による自己株式の買取りや、後継者個人による買取りに向けたリストアップと資金シミュレーションを挙げています。
つまり少数株主が存在することを確認するだけで終わりではありません。
必要に応じて、その株式をどのように整理するのかを検討するわけです。
たとえば会社自身が株式を取得する方法を検討することがあります。
あるいは後継者が少数株主から株式を取得することも考えられます。
ただし、参考記事では具体的な取得要件や税務上の取扱いまでは説明していません。
ここで重要なのは、株式を整理するためには資金も必要になるという点です。
株価が高い会社ほど、少数の株式であっても買取りに必要な金額が大きくなる可能性があります。
そのため、誰が何株持っているのかを把握し、整理するとすればどの程度の資金が必要なのかを事前にシミュレーションする必要があります。
事業承継前に株主全体を整理します
事業承継では、後継者に何株渡すかだけを考えるのでは十分ではありません。
まず現在の株主を正確に把握します。
名義株が残っていないか。
親族に株式が分散していないか。
元従業員が株式を持っていないか。
譲渡制限条項が適切に設定されているか。
少数株式を整理する場合には、どの程度の資金が必要になるのか。
こうした事項を一つずつ確認する必要があります。
参考記事では、後継者に議決権を確実に集中させ、将来の経営の意思決定が滞るリスクを法的に排除することが大切だとしています。
少数株主の整理は、そのための事前準備の一つなのです。
問題が起きてからでは整理が難しくなります
少数株主への対応は、実際に株主との対立が起きてから始めるものではありません。
事業承継の準備段階で行うことが重要です。
参考記事では、事業承継の実務について、経営権の移行から逆算して3年から5年前から計画的に着手する必要があるとしています。
現在は良好な関係にある少数株主でも、将来は状況が変わる可能性があります。
また、少数株主に相続が発生すれば関係者が増え、株式の整理がさらに難しくなることも考えられます。
会社の株主構成が比較的単純なうちに現状を把握しておくことが、将来の事業承継を円滑にすることにつながります。
結論
少数株主とは、会社の株式や議決権の比較的小さな割合を持つ株主です。
保有割合が少ないからといって、事業承継で無視してよい存在ではありません。
参考記事では、少数の株式を持つ親族や元従業員について、帳簿閲覧請求や株主総会で経営に反対する可能性などを考え、事前に対応策を検討する必要性が示されています。
さらに少数株主に相続が発生すれば、その株式が会社との関係が薄い次世代の親族へ引き継がれる可能性があります。
そこで、現在の株主を把握し、定款の譲渡制限条項を確認します。
必要であれば、会社による自己株式の買取りや後継者による買取りについて、必要資金も含めて検討します。
事業承継で重要なのは、後継者に大部分の株式を渡すことだけではありません。
会社に残っている少数の株式まで含めて株主構成を整理し、将来の経営判断が滞りにくい状態をつくっておくことが重要なのです。
参考
企業実務 2026年9月号 貸付用不動産の評価方法見直しが変える社長の相続・事業承継対策の実務