企業が新しい技術を生み出す方法は、自社だけで研究開発を行うことに限られません。
大学が持つ専門的な研究成果を活用したり、スタートアップが持つ新しい技術と自社の技術を組み合わせたりすることで、自社だけでは難しい研究開発を進めることができます。
研究開発税制には、こうした外部との共同研究や委託研究を税制面から支援する「オープンイノベーション型」が設けられています。
資料では、オープンイノベーション型について20%、25%、30%という税額控除率が示されています。
通常の一般型とは別枠の控除上限も設けられており、企業が外部の研究機関などと連携して研究開発を行うことを後押しする仕組みになっています。
オープンイノベーションとは何か
企業の研究開発というと、自社の研究所で自社の研究者が研究する姿を思い浮かべるかもしれません。
しかし、研究開発に必要な知識や技術のすべてを1社で持つことは難しくなっています。
そこで、大学やスタートアップなど外部の組織が持つ知識や技術を取り入れながら研究開発を進める考え方が重要になります。
研究開発税制でも、このような外部との共同研究や委託研究について、通常の研究開発とは異なる仕組みが設けられています。
それがオープンイノベーション型です。
一般型とは控除率が違う
資料では、研究開発税制の一般型について、税額控除率が0%から14%と示されています。
これに対してオープンイノベーション型では、20%、25%、30%という控除率が示されています。
外部との一定の共同研究や委託研究について、より高い控除率を設定していることが分かります。
ただし、外部へ研究を委託すればすべて30%の税額控除を受けられるという意味ではありません。
研究相手や研究の内容などによって適用される仕組みが異なるため、対象となる研究開発であることを確認する必要があります。
大学との共同研究を税制面から支援する
資料では、研究開発から知的財産の収益化までの流れを説明するなかで、基礎研究や応用研究の段階における大学などとの共同研究を取り上げています。
企業にとって大学との共同研究は、自社だけでは保有していない知識や研究成果を活用する方法の一つです。
税制面でも、一定の共同研究に高い税額控除率を設けることで、こうした連携を後押しします。
重要なのは、研究が終わってから大学への支払額を集計するだけでは十分ではないことです。
どのような研究を共同で行うのかを研究開始時から明確にしておく必要があります。
スタートアップとの研究も重要になる
資料では、大学だけでなく、スタートアップなどとの共同研究も研究開発のライフサイクルの中で示されています。
企業が自社にない技術を取り入れる方法として、スタートアップとの連携も考えられます。
大企業が持つ研究設備や事業基盤と、スタートアップが持つ技術などを組み合わせて研究開発を進める形です。
研究開発税制では、こうした外部との研究開発について一定の税制優遇を設けることで、企業内部だけに閉じた研究ではなく、外部との連携による研究を支援しています。
外部への支払いなら何でも対象になるわけではない
オープンイノベーション型を考えるうえで注意したいのが、通常の外注費との違いです。
企業はさまざまな業務を外部へ委託しています。
システム開発を外注する場合もあれば、製品の製造工程の一部を外部企業へ任せる場合もあります。
しかし、外部へお金を支払ったという事実だけでオープンイノベーション型の対象になるわけではありません。
その支出が税務上の試験研究に関係するものなのか。
どのような相手との共同研究や委託研究なのか。
制度上の対象となる費用なのか。
こうした点を確認する必要があります。
一般型との重複適用には注意する
同じ研究費について、複数の研究開発税制を重ねて利用できるとは限りません。
資料では、オープンイノベーション型の対象となる試験研究費について、一般型や中小企業技術基盤強化税制と重複して利用できないことが示されています。
例えば、ある共同研究費がオープンイノベーション型の対象になった場合、その同じ費用を一般型の試験研究費にも入れて二重に税額控除するということはできません。
したがって、研究開発費を集計するときには、単純にすべての研究費を一つにまとめるのではなく、どの制度に対応する費用なのかを区分して管理する必要があります。
控除上限も一般型とは別に設けられている
研究開発税制では、控除率だけでなく控除上限も重要です。
資料では、一般型の控除上限は法人税額の25%と示されています。
これに対して、オープンイノベーション型については別枠で法人税額の10%という控除上限が示されています。
つまり、オープンイノベーション型は一般型とは異なる枠組みで税額控除を計算します。
高い控除率だけを見るのではなく、控除上限も含めて実際の税制効果を確認することが重要です。
戦略技術領域型では共同研究をさらに優遇する
2026年度税制改正で創設された戦略技術領域型を見ると、共同研究を重視する方向がさらに明確になります。
資料では、一定の認定研究開発について40%の税額控除率が設定されています。
さらに、認定研究開発機関との共同研究や委託研究については50%です。
つまり、企業が単独で研究する場合だけでなく、一定の研究機関と連携する場合に、さらに高い税額控除率を設定する仕組みが設けられています。
研究開発税制全体を見ると、外部の研究能力を活用することを税制面から後押しする方向が分かります。
共同研究を始める前の設計が重要になる
共同研究では、研究が終わった後に税務部門へ資料を渡せばよいというものではありません。
研究開始時から管理方法を考えておく必要があります。
どのような研究を行うのか。
誰と共同研究するのか。
研究費をどちらが負担するのか。
どの費用が研究に直接関係するのか。
研究成果をどのように取り扱うのか。
こうした情報を整理しておくことで、後から研究開発税制との関係を確認しやすくなります。
特に外部との研究では、契約内容と実際の研究内容を対応させて管理することが重要です。
共同研究の先には知的財産の収益化がある
大学やスタートアップとの共同研究は、研究開発税制を利用することだけが目的ではありません。
研究成果から新しい技術を生み出し、それを知的財産として保護し、最終的には事業として収益化することが重要です。
前回取り上げた4段階管理で考えれば、大学やスタートアップとの共同研究は研究開発の入口に位置します。
その研究から特許などが生まれれば、知的財産として管理します。
さらに一定の知的財産をライセンスして所得を得る段階になれば、イノベーションボックス税制との関係も出てきます。
共同研究を単年度の税額控除だけで見るのではなく、その後の知的財産化や収益化まで考えることが重要です。
結論
研究開発税制には、大学やスタートアップなど外部との共同研究や委託研究を支援するオープンイノベーション型があります。
資料では、一般型の税額控除率が0%から14%であるのに対し、オープンイノベーション型では20%、25%、30%という控除率が示されています。
また、一般型とは別枠で法人税額の10%という控除上限が設けられています。
一方、オープンイノベーション型の対象となる試験研究費を一般型や中小企業技術基盤強化税制と重複して利用することはできません。
さらに2026年度税制改正の戦略技術領域型では、認定研究開発機関との一定の共同研究や委託研究について50%という税額控除率が示されています。
これからの研究開発では、自社だけで研究するか、大学やスタートアップなどと連携するかという研究体制そのものが税制とも関係します。
共同研究を始める段階から、研究内容、相手先、費用、契約、研究成果までを一体として管理することが重要になります。
参考
第33回青山学院大学同窓祭公開講座 2026年9月23日 R&D税制とイノベーションボックス税制 会計プロフェッショナルによるイノベーション・コンサルテーション