海外への委託研究はなぜ税制優遇が縮小するのか 研究開発拠点を国内に残す政策編

税理士
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企業の研究開発は、国内だけで行われるとは限りません。

海外の研究機関や企業が高度な技術や設備を持っていれば、研究開発の一部を海外へ委託することもあります。

しかし、2026年度税制改正では、国外への委託研究について研究開発税制の対象となる金額を段階的に縮小する方向が示されています。

資料では、国外への委託研究費について、2026年度は70%、2027年度は60%、2028年度は50%を試験研究費に算入する仕組みが示されています。

研究開発税制による支援を、国内で行われる研究開発へより重点的に向けようとする改正です。

海外への委託研究も見直しの対象になる

企業が研究開発を進めるときには、自社だけでは保有していない技術や研究設備を利用するため、外部へ研究を委託することがあります。

その委託先が海外にあるケースも考えられます。

2026年度税制改正では、こうした国外への委託研究費について見直しが行われます。

ポイントは、海外への委託研究そのものを一度にすべて研究開発税制の対象外にする仕組みではないことです。

資料では、対象となる割合を段階的に引き下げる形になっています。

企業に一定の準備期間を設けながら、国内での研究開発をより重視する方向へ制度を変えていくことが分かります。

2026年度は70%が対象になる

資料では、国外への委託研究費について、2026年度は70%を試験研究費に算入するとされています。

例えば、国外への委託研究費が1億円だったとします。

単純化すれば、その全額ではなく7,000万円を研究開発税制上の試験研究費へ算入するという考え方になります。

ここで注意したいのは、7,000万円がそのまま法人税額から控除されるわけではないことです。

試験研究費として算入される金額と、そこから計算される税額控除額は別です。

研究開発税制を検討するときには、まず対象となる試験研究費を確定し、その後に適用される控除率や控除上限を確認する必要があります。

2027年度には60%へ下がる

次の段階では、対象割合がさらに縮小します。

資料では、2027年度について60%とされています。

国外への委託研究費が同じ1億円だったとすれば、単純化した場合の試験研究費への算入額は6,000万円になります。

企業側の研究内容や支出額が変わっていなくても、税制上対象となる金額が小さくなっていくわけです。

海外への研究委託を多く行っている企業では、税制改正による影響を事前に把握しておく必要があります。

2028年度には50%になる

さらに、資料では2028年度の対象割合を50%としています。

国外への委託研究費が1億円なら、単純化した場合には5,000万円が試験研究費へ算入されることになります。

2026年度の70%から、2027年度は60%、2028年度は50%へと段階的に縮小します。

3年間を並べると、制度改正の方向が分かりやすくなります。

国外への委託研究を直ちに研究開発税制から排除するのではなく、対象割合を少しずつ引き下げていく仕組みです。

企業にとっては、単年度だけではなく複数年度にわたる研究開発計画への影響を考える必要があります。

なぜ国内での研究開発が重視されるのか

研究開発税制は、企業の税負担を軽くするだけの制度ではありません。

企業の研究開発投資を促し、イノベーションにつなげるという政策的な役割があります。

今回の資料では、研究開発税制を科学技術やイノベーション政策と結び付けて説明しています。

国外への委託研究費の対象割合を縮小する一方、前回まで見てきた戦略技術領域型では、一定の重要技術について40%、認定研究開発機関との共同研究や委託研究では50%という高い税額控除率を設けています。

これらを合わせて見ると、研究開発投資の量だけでなく、研究開発をどこで行うのかという点も税制上重要になっていることが分かります。

海外研究を全面的に否定する仕組みではない

ただし、今回の見直しを「海外で研究すれば研究開発税制をまったく使えなくなる」と理解するのは適切ではありません。

資料では、国外への委託研究費について段階的な算入割合が明示されています。

2026年度は70%、2027年度は60%、2028年度は50%です。

つまり、資料に示された改正内容では、一定割合について引き続き試験研究費への算入が認められる仕組みです。

海外にしか存在しない技術や研究環境を利用する必要がある企業もあります。

そのため、海外研究の必要性と国内研究を促進する政策との間で、段階的な見直しが行われていると考えることができます。

海外臨床試験には例外が設けられている

今回の改正には重要な例外もあります。

資料では、国内で研究することが適切でない海外臨床試験については、国外への委託研究費に対する制限の対象から除かれることが示されています。

研究内容によっては、海外で実施すること自体に合理的な理由があります。

そのような研究まで一律に国内へ移すことを求める制度ではありません。

したがって、国外で行われた研究だからという理由だけで判断するのではなく、どのような研究なのかを確認することが重要です。

特に海外臨床試験を行う企業では、この例外に該当するのかを含めて制度を確認する必要があります。

研究委託先を決める段階から税制を考える必要がある

この改正は、税務部門だけの問題ではありません。

研究開発部門が海外の研究機関へ研究を委託すると決めた後で、経理部門が研究開発税制を計算するだけでは、税制上の影響を研究計画に反映できないからです。

研究内容は何か。

国内で実施できるのか。

海外へ委託する必要があるのか。

委託費はいくらになるのか。

どの年度に支出するのか。

こうした事項を研究計画の段階から確認することが重要になります。

特に国外への委託研究費の算入割合が年度ごとに変わるのであれば、研究を実施する時期も税制上の効果に関係してきます。

国内研究と海外研究の組み合わせも重要になる

グローバルに事業を展開する企業が、研究開発をすべて国内だけで行うことが合理的とは限りません。

海外市場向けの商品やサービスについては、現地の研究機関との連携が必要になることも考えられます。

一方、研究開発税制では、国内での研究開発をより強く支援する方向が示されています。

企業としては、税制だけを理由に研究拠点を決めるのではなく、研究に必要な技術、人材、設備などを踏まえたうえで、税制上の違いも確認する必要があります。

研究開発税制が、研究費を支出した後の税金計算だけではなく、企業の研究開発拠点や委託先を考える際にも関係するようになっているのです。

結論

2026年度税制改正では、国外への委託研究費について、研究開発税制上の試験研究費に算入できる割合を段階的に縮小する仕組みが示されています。

資料では、2026年度は70%、2027年度は60%、2028年度は50%です。

海外への委託研究を直ちに全面的に対象外とするのではなく、対象割合を段階的に引き下げる仕組みになっています。

一方、国内で研究することが適切でない海外臨床試験については、制限の対象から除かれることも示されています。

研究開発税制では、何を研究するのか、いくら研究費を使うのかだけではなく、どこで研究するのかという点も重要になってきました。

海外への委託研究を行う企業では、研究を実施した後に税額控除を計算するのではなく、研究計画や委託先を決める段階から税制改正の影響を確認することが重要になります。

参考

第33回青山学院大学同窓祭公開講座 2026年9月23日 R&D税制とイノベーションボックス税制 会計プロフェッショナルによるイノベーション・コンサルテーション

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