ステーブルコインにも元本割れはあるのか 1円連動でも絶対安全とは限らない理由編

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

円建てステーブルコインは、基本的に1コインを1円相当の価値に連動させることを目指します。

そのため100万円を円建てステーブルコインへ交換すれば、100万円相当の価値が維持されるように感じます。

しかし、1円に連動することと、元本が絶対に保証されることは同じではありません。

ステーブルコインの価値を支える裏付け資産に問題が起きたり、円への償還が円滑にできなくなったり、市場で信用不安が広がったりすれば、1コインの価格が1円を下回る可能性があります。

特に海外のステーブルコインでは、過去に基準となる法定通貨から価格が大きく離れた例もあります。

ステーブルという名前だけを見て、安全な預金と同じものだと考えるのは適切ではありません。

ステーブルコインの安全性を考えるには、何が1円の価値を支えているのかを見る必要があります。

1円連動とは何か

例えば1コインを1円相当の価値に維持する円建てステーブルコインを考えます。

利用者が100万円を払い込み、それに対応して100万コインを取得します。

そして100万コインを所定の方法で償還すれば、100万円相当の円へ戻せる仕組みがあれば、利用者は、

1コインは1円相当

と考えやすくなります。

このように特定の法定通貨などの価値へ連動させることをペッグと呼ぶことがあります。

円建てなら円へのペッグです。

ドル建てならドルへのペッグです。

ステーブルコインの安定性は、このペッグを維持できるかどうかにかかっています。

1円連動と元本保証は違う

重要なのは、

1コインを1円に連動させることを目指している

ということと、

どんな状況でも必ず1コインを1円で換金できる

ということは同じではない点です。

例えば100万円分のステーブルコインを持っていても、市場で信用不安が発生すれば、1コインが0.98円などで取引される可能性があります。

100万コインを市場で0.98円で売却すれば98万円です。

2万円の損失になります。

さらに価格が0.9円になれば90万円です。

ステーブルコインでも、市場価格で売却する場合には元本割れする可能性があります。

裏付け資産が1円の価値を支える

ステーブルコインの安全性を考えるうえで最も重要なものの一つが裏付け資産です。

例えば100億円分の円建てステーブルコインが発行されているとします。

その裏側に100億円相当の安全性や流動性の高い資産があり、利用者が償還を求めたときに円へ戻せるのであれば、1コイン1円という信用を維持しやすくなります。

反対に100億円分のステーブルコインが発行されているのに、裏付けとなる資産が80億円しかなければどうでしょうか。

すべての利用者が円への償還を求めた場合、単純計算では20億円不足します。

その事実が知られれば、

本当に1コイン1円で戻せるのか

という不安が広がります。

すると売却する人が増え、市場価格が1円を下回る可能性があります。

裏付け資産の価格変動も考える必要がある

裏付け資産が十分な金額存在していても、その資産の価値が変動する場合があります。

例えば100億円分のステーブルコインに対して、100億円相当の資産を保有しているとします。

その資産の市場価格が下落して95億円になれば、発行されているステーブルコイン100億円分に対して裏付け資産が不足する可能性があります。

そのため、どのような資産を裏付けとして保有するのかが重要です。

価格変動の大きな株式や暗号資産を大量に保有していれば、裏付け資産の価値が短期間で大きく変動する可能性があります。

決済手段として安定性を求めるなら、裏付け資産にも高い安全性が求められます。

国債なら絶対安全なのか

海外のステーブルコインなどでは、裏付け資産として短期国債などが利用されることがあります。

国債は一般に信用力の高い資産と考えられます。

しかし、国債にも価格変動があります。

例えば固定金利の国債を保有しているときに市場金利が上昇すると、既に発行されている低い金利の国債の市場価格は下落するのが基本です。

満期まで保有して額面で償還されれば市場価格の変動が直接損失にならない場合がありますが、途中で現金化する必要があれば問題になる可能性があります。

ステーブルコインでは、利用者がいつ償還を求めるか分かりません。

大量の償還が一度に発生し、保有している国債を途中売却する必要が生じれば、市場価格によっては損失が発生する可能性があります。

そのため国債であれば何でも同じというわけではなく、満期までの期間や流動性なども重要になります。

短期資産が重視される理由

ステーブルコインの裏付けでは、換金しやすい短期資産が重要になります。

例えば利用者から今日100億円の償還請求が来たとします。

裏付けとして100億円相当の不動産を持っていたとしても、その不動産を今日中に100億円で売却できるとは限りません。

帳簿上は十分な資産があっても、現金が足りなくなる可能性があります。

これが流動性の問題です。

一方、預金や満期までの期間が短い国債などは、一般に現金化しやすい資産です。

ステーブルコインでは、裏付け資産の金額だけでなく、

安全性

流動性

満期までの期間

換金のしやすさ

を見る必要があります。

償還リスクとは何か

ステーブルコインには償還リスクもあります。

償還とは、ステーブルコインを円などの法定通貨へ戻すことです。

例えば100万コインを持っている人が、100万円へ戻したいとします。

通常なら所定の手続きによって償還します。

しかし何らかの理由で償還が停止したらどうでしょうか。

利用者は100万コインを持っていても、100万円の円へ戻せません。

すると市場では、

円へ戻せないステーブルコインを持ちたくない

という人が増える可能性があります。

売りが増えれば、1コイン1円を下回って取引される可能性があります。

つまり裏付け資産が存在していても、償還の仕組みが正常に機能しなければ価格安定性が損なわれることがあります。

一斉に償還が起きる可能性もある

金融商品では、信用不安が信用不安を拡大させることがあります。

例えばSNSなどで、

このステーブルコインは危ないのではないか

という情報が広がったとします。

一部の利用者が円へ戻し始めます。

それを見た別の利用者も、

自分も早く円へ戻したほうがよい

と考えるかもしれません。

すると大量の償還請求が集中します。

発行側が十分な流動性を持っていれば対応できます。

しかし資産の現金化に時間がかかると、償還処理が遅れる可能性があります。

その遅れを見てさらに不安が広がるという連鎖も考えられます。

ステーブルコインでも、信用が非常に重要なのです。

市場価格と償還価格は同じとは限らない

ステーブルコインには、市場で売買される価格と発行者などによる償還価格という二つの価格を考える必要があります。

例えば1コインを1円相当で償還できるステーブルコインが、市場では一時的に0.99円で取引されることがあります。

この場合、市場で急いで売れば0.99円です。

一方、所定の償還手続きを利用できれば1円相当へ戻せる可能性があります。

この価格差があれば裁定取引によって市場価格を1円へ近づける力が働きます。

しかし償還に制限があったり、時間がかかったり、手数料が高かったりすれば、価格差が残ることがあります。

したがって1円連動を見るときには、償還条件まで確認する必要があります。

発行者や管理者のリスクもある

ステーブルコインは技術だけで存在しているわけではありません。

発行や資産管理などに関係する事業者がいます。

そのため、

事業者の経営に問題が起きる

資産管理に問題が起きる

システム障害が起きる

不正アクセスが発生する

といったリスクも考える必要があります。

信託型では信託財産を事業者自身の財産から分離して管理することで、事業者の破綻リスクから利用者の財産を守る仕組みがあります。

これは重要な安全装置です。

しかし、それによってあらゆるリスクがゼロになるわけではありません。

ウォレット管理にもリスクがある

ステーブルコインそのものが1円の価値を維持していても、利用者側の管理に問題が起きれば損失を被る可能性があります。

例えば自分で秘密鍵を管理するウォレットを利用していて、その情報を失ったとします。

資産へアクセスできなくなる可能性があります。

不正アクセスによってステーブルコインを第三者へ送られてしまう可能性もあります。

銀行預金であればパスワードを忘れても本人確認によって再設定できる仕組みがあります。

ステーブルコインでは利用するウォレットの種類によって管理方法や復旧方法が異なります。

資産そのものの信用リスクと、保管方法のリスクは分けて考える必要があります。

預金保険と同じだと考えない

銀行預金との違いも重要です。

日本の銀行預金には預金保険制度があります。

一般預金等については、一定の範囲で預金者を保護する仕組みがあります。

一方、ステーブルコインは銀行預金そのものではありません。

そのため銀行預金と同じ預金保険がそのまま適用されるものではありません。

信託型には信託財産による資産保全の仕組みがありますが、預金保険とは仕組みが異なります。

利用者としては、

1円に連動しているから普通預金と同じ

と考えないことが重要です。

元本保証ではないことを理解する

ステーブルコインのステーブルという言葉は、価格変動を小さくする仕組みを意味しています。

ビットコインのように1日で大きく価格が変動する資産とは性格が異なります。

しかし、

価格変動が小さいこと

元本が保証されていること

は別です。

1円連動の仕組みが正常に機能していれば、価格は1円付近で安定します。

一方、裏付け資産や償還、発行者への信用に問題が生じれば、1円から離れる可能性があります。

つまりステーブルコインの安全性は、名前ではなく仕組みを見る必要があります。

結論

円建てステーブルコインは1コインを1円相当の価値に連動させることを目指します。

しかし、1円連動と元本保証は同じではありません。

ステーブルコインの価値を支える裏付け資産が不足したり、裏付け資産の価格が下落したり、円への償還が円滑に行えなくなったりすれば、市場価格が1円を下回る可能性があります。

国債などを裏付けとして保有している場合でも、金利上昇による市場価格の変動や、大量償還時の現金化という問題があります。

そのため重要なのは、裏付け資産の金額だけではありません。

どのような資産で運用されているのか。

すぐに現金化できるのか。

円へどのような条件で償還できるのか。

利用者の財産はどのように保全されているのか。

こうした点を見る必要があります。

ステーブルコインはビットコインなどと比べて価格を安定させる仕組みを持っていますが、銀行預金と同じ意味で元本が保証された商品ではありません。

1コイン1円という数字を見るだけではなく、その1円を支えている資産と償還の仕組みを見ることが、ステーブルコインのリスクを理解するうえで重要なのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月25日 朝刊 家・車もステーブルコイン

タイトルとURLをコピーしました